「さっき、私のこと、純白の美少女って言わなかった?」


ヨスガは黙って頷いた。


「それって具体的にどんな姿なの?」


殺しの天使にそう言われて、先ほど感じた、見たままを伝えた。


「ふうん。あなたには、そう見えるの。…おもしろいわね」


心底可笑しいというように、殺しの天使はくすくすと笑った。

今の時点で、少なくとも悪意は感じられない。

“純潔の天使”のことを尋ねてみるくらいは大丈夫なのではないか。

ヨスガが様子を窺っていると、殺しの天使が再び口を開いた。


「気づいてると思うけど、私はドクツルタケ。人間には猛毒よ。その種族の頭なの。頭のことは知ってるかしら」


ヨスガは、知っている、と頷いた。

というより、勘づいていた。この森に住む全ての種族にそういう存在がいることを。

なぜなら、何度か出会ったことがあるから。頭は同じ種族の他の動物とは明らかに違うオーラを放っていたし、ヨスガの目には本体の横に擬人化した姿が見える。

人ではないと明らかに分かるのは、いつも耳だ。イノシシならイノシシの耳、鳥なら羽毛、そして目の前のキノコはヒラヒラとしたツバが耳の代わりに付いている。


「それなら話は早いわ。種族の頭は、見た者のイメージした姿に見えるの。大抵は自分と同じ種族に見えるみたいね。そして、私たち頭は他の種族とも言葉が通じる。ね?」


殺しの天使は、横にいるベビルにウィンクをした。


「おう、お前の言葉は分かるぜ!さっきはありがとな!」


殺しの天使は、いいえ、と天使の名に恥じない微笑みを返した。


「…ドクツルタケの頭なら、知らないか?“純潔の天使”というキノコを」


ヨスガがそう尋ねると、綺麗な白銀の瞳をゆっくりとこちらに向ける。


「ふふ。よく知ってるわ」


殺しの天使は再び微笑んだ。悪魔のように。

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