ベビルの案内でそこに着くと、近くで渓流の音が聞こえた。

通ってきた道に比べて、明らかに土が湿っている。早速、足元に茶色いキノコを見つけた。


「あの、“純潔の天使”という白いキノコを探しているんだ。あなた達は知らないか?」


話しかけても返事はない。

辺りには他にも違う種類のキノコがいる。耳を澄ませると、確かに呼吸する音は聞こえるのに、ヨスガの問いかけに呼応するものはなかった。


肩を落としていると、ベビルがヨスガの足に鼻を押し付けてきた。


「ヨスガ、あれ見ろ。リスがいるぞ」


「本当だ。シマリスだ」


「リスはキノコを食べるんだ。あいつらなら何か知ってるかもしれない」


それを聞いたヨスガは、すぐにシマリスに声を投げた。


「そこのシマリスさん!“純潔の天使”という白いキノコを知らないか?」


「…お前、誰だ」


枝の上で木の実を頬張っていたシマリスは、口をモゴモゴしながら上からヨスガを見下ろした。


「私はヨスガ。この森の端に住んでいる。どんな病気も治すという、輝く真っ白いキノコを探しているんだ」


すると、木の実を咥えながら、シマリスはしばらく黙って考えるそぶりを見せた。


「…お前、人間だよな。輝く真っ白いキノコ…知ってるよ」


「本当か!?そのキノコはどこにある!?」


「こっちだ。付いてきな。白いキノコだけが集まる場所があるんだ」


シマリスは、小さな体を滑らせるようにして枝から枝へ伝いながら奥の方へ進んで行った。

見上げながら、ヨスガとベビルは必死にシマリスを追う。


しばらく走ると、少し離れた所でシマリスが止まった。

ようやく近くまで辿り着いた時、ヨスガは思わず感嘆の声を漏らした。


「……うわあ…」


目の前には、一面真っ白な大地があった。

木々がそこだけ避けるようにして周りを囲んでいるので、その空間だけぽっかりと光って浮かび上がって見える。


大地を覆う白い何かは、花でもなく、雪でもなく、まさに、キノコだった。

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