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村に入ると、冷たい視線が自分に降り注ぐのを感じて、ヨスガは誰にも声を掛けられずにいた。
「あれ、そのイノシシ… いつもミリばあちゃんが連れている…そうだ、確かベビル」
「今、あのおっさん、ベビルって言ったか?…誰だっけ」
その言葉で、ヨスガは今通りすがった男の方へ振り向いた。
「ってことは…もしかして、君がヨスガか?」
この男は、自分のことをダンと名乗った。
「ミリばあちゃんを知ってるのか?ばあちゃん、倒れたんだ!ひどい熱で、それで、それで…薬が欲しくて」
「熱って…まさか……身体に黒い痣のような斑点が広がっていないか?」
「え…何でそれを」
「…この村でも数日前から同じ症状で何人も寝込んでる。一番近くの大きな街から医者を呼んだが原因は分からないままだ。解熱薬でなんとか今は症状が落ち着いているが、いつまで持ち堪えられるかどうか」
「そんな…じゃあ…どうしたら。何か、方法はないのか!?」
「すまない、俺たちにも分からないんだ。…ただ……」
「ただ、何だ?何でも良い!教えてくれ!」
「いや…うん、これは村の長老が聞かせてくれた古い言い伝えなんだ。確証はない。ただの噂かもしれない」
そう前置きして、ダンが話してくれたのは、どんな病も治るとされるキノコの存在だった。
それは、“純潔の天使”と呼ばれ、この世の物とは思えないほど眩く光り輝く真っ白なキノコ。
しかし、それがどこに生えているのかは誰も知らず、実在するのかすら定かではないらしい。
「光り輝く真っ白なキノコ…」
ヨスガは、キノコなら森にたくさん生えている、と思った。
「そんなキノコ、俺、見たことねーぞ」
ベビルが横槍を入れる。
けれど、ミリを救う手立てはそれしかない。
気休めにとダンがくれた解熱薬を手に、ヨスガは一度、ミリの待つ家に帰ることにした。
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