第2話
私がこんな山奥までのこのこやってきたのは、旧くからの友人、アレクス・ランドールからの手紙が原因だった。
それがバンクーバーの私のオフィスへ届けられたのがおよそ2週間前。
彼がこの宿を引き払った時期と一致する。
懐かしい筆跡で記されたその手紙は、私への仕事の依頼状だった。
3千ドルの小切手と、航空券が同封されていた。
それによると、フリーの鉱山技術者であるアレクスは、さる大手鉱山会社の依頼でB市へ来ていたらしい。
R山附近の地形を調査した結果、大規模な錫鉱脈が存在するらしいとわかったからだ。
が、数ヶ月の調査の末、彼はある重大な事実に突き当たった。
錫などより遥かに価値のある鉱脈の存在が判明したのである。
その鉱脈とはつまり、およそ1億ドルに相当するプラチナ鉱脈であった。
金属の価値は、主に二つの要素で決定される。
一つはその金属の先端技術に対する有用性、もう一つが稀少価値である。
プラチナはその両者を兼ね備えた金属であり、しかも、産出地域が限られている。
南アフリカ、カナダ、ロシアの三ヶ所だ。
となれば、文字通り宝の山というわけだ。
どうもそれが原因で厄介事に巻き込まれそうなので、私の助けが必要になったらしい。
今いる場所もいつ危険になるかわからないので、早く来て欲しいとの切迫した文面だった。
私はすぐその鉱山会社へ出向き、アレクスについて確認をとった。
その結果、会社の方でも彼を捜していることがわかった。
鉱脈に関する最終的な報告書を送る段になって行方を絶ったらしい。
シャワーを浴び、やっと生き返った気分になった。
長旅で埃まみれになった服を着替え、私はベッドの上で荷物の整理を始めた。
20分ほどで中身を確かめ、最後にバッグの底からホルスターを引っ張り出した。
38口径のS&Wが入っている。
ありふれた拳銃だけに信頼がおけるし、弾丸や部品も手に入りやすい利点があった。
今度の仕事でも、多分こいつの世話になるのだろう。
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