第7話 six

 さわやかな笑みを浮かべ、秋月は再び退去を促す。


「あ、ご両親には既に許可を頂いております」


 当然とばかりに一郎が答える。それを聞き、秋月は困り考え込むように天井を見た。


「それでですね。今までは、密かに神様達は代理バトルをこの地球でやっていたそうなのですが、今回からは文明も進んだことだし、一般公開でやろうということになったそうです」


 秋月の様子を気にもせず、一郎は話し続けた。


「ということで、貴女が代理バトルの乙女に選ばれました。どうか、参戦の了承をお願いしますと言いたいところなのですが……」


 一郎は、困ったように言葉を濁し夏月を見た。少し考え込んだ後、一郎はテーブルの上に置かれている箱を手にした。蓋を開け、秋月に向かって差し出す。


「すみません。これに触っていただけますか?」


 言われるままに、秋月は箱の中井の機械に触れる。特に何も無い。次に、すぐ側の床に座り込み、不思議そうに三人の様子を見ている夏月に向かって箱を差し出す。


「これに触っていただけますか?」


 いきなり振られ、夏月は不思議そうに一郎を見つめる。


「お願いします」


 夏月は、一郎の言葉に恐る恐る手の伸ばし、そっと人差し指で触れた。とたん、機械の画面が光り出した。


「やっぱり……」


 深々とため息を吐く一郎を、困ったように夏月が見つめる。


「何の手違いかは分かりませんが、弟さんが乙女として認識されたようです」


 言われている事が理解できず、夏月は小首を傾げた。


「お願いします。乙女になってください」


 一郎はソファーから立ち上がり、少し移動すると夏月に向かって土下座を始めた。


「え? 僕?」


 状況を理解できずに、夏月はキョロキョロと周囲を見渡した。秋月は頭を抱え、ジョンはさわやかな笑顔とサムズアップを夏月に向けている。


「報酬は、こちらで出来る範囲ですが望む物を用意させていただきます。金銭なら、かなりな高額でも可能です。その他でもなるべくご希望に添えるように頑張りますので、どうかお願いします」


 いまいち理解をしていない夏月の両手を取り、一郎はたたみかけるように懇願した。


「え? あ、はい」


 勢いに押され、夏月は思わず了承を口にした。その言葉に、一瞬の間を置き一郎は涙を流し始めた。


「ありがとうございます。ありがとうございます」


 何度も感謝を口にしながら、頭を下げる。


「そんじゃ、ここからは俺の出番っす」


 ジョンは立ち上がり、夏月の側に来て膝をついた。


「かのじょ」

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