第6話 five

「いえ、イタズラではありません」


「そっす。イタズラじゃないっす」


 援護するように口を挟んできたジョンのせいで更に怪しさが増し、秋月の笑みは凍ったような冷たい物へと変わる。


「イタズラでなければ、神仏対応省なんて省庁、どこにあるんですか? しかも、世紀末バトル対策課とか、聖乙女対応係とか、どこのマンガの話ですか?」


 冷たい笑みを崩さずに、秋月が一息に尋ねる。


「えっと、その、まだ発足して一年ほどで……、国民への発表はまだ少し先になるので……」


 しどろもどろに答える一郎に向けられる、秋月の冷たい視線は変わらない。どう説明すればよいのか分からず、一郎は地べたに座り込み頭を下げた。


「すみません。お願いします。話を聞いてください」


「おー! じゃぱにーずどげーざ!」


 ジョンが嬉しそうにスマートフォンを取り出し写真を撮り始めた。一郎はそれを気にすること無く、何度もお願いしますと繰り返しながら頭を下げ続けた。


「え? あ、ちょっと……」


 通りすがりの近所の奥様方が興味津々という様子で見ていることに気がつき、一郎に起立を促す。


「あの、ちょっとここでは何なので中に……」


 急いで一郎とジョンを玄関の中に引きずり込み、ドアを閉めた。


「あ、ありがとうございます」


「あざーっす」


 揃って礼を述べる二人に、秋月は頭を抱えた。


「夏月、とりあえずお茶を」


 リビングに二人を案内しながら、そう声をかけた。夏月はすぐに頷き小走りに去っていった。


「おかけください」


 ソファへの着席を促し、秋月も向かいあうように着席し手にしていた箱をテーブルに置いた。


「それで、話とは?」


「あーなんと言えばいいのか……。えーっとですね。神様たちから連絡がありまして……」


 一郎が話し始めたとたん、秋月はがっくりと肩を落とす。ちょうど、夏月がお茶を持ってリビングへやってきた。


「それで、代理でバトルをすることになったんです」


 説明する一郎の横で、夏月がトレーに乗ったお茶を出していく。


「ということで、貴女が代理の乙女に選ばれたのですが……」


 言葉を濁しながら、一郎は夏月へと視線を移した。


「すみません……。やっぱり帰ってくれませんか?」


 これ以上、変な話を聞く余裕など無く、秋月は二人の退去を望んだ。


「え? それは困ります。了解を貰わないと帰れないんです」


 一郎が必死で食い下がる。秋月がため息を吐いた。


「すみません。今、両親が居ないので重要なことは返事できないので、お引き取りください」

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