第3話 two
秋月に言われ、夏月は冷蔵庫へプリンを取りに行こうと、ソファーから立ち上がる。瞬間、来客を告げるチャイムが鳴った。夏月は秋月を見るが、我関せずと言う顔で雑誌を読みふけっている。仕方がないというように軽く頭を振り玄関へと向かった。ドア越しに、誰なのかを尋ねるも、何か分かりにくい長い名前らしく聞き取れなかった。もう一度尋ねてみたが、同じく聞き取れなかった。仕方が無く、ドアのチェーンを確認し、鍵を外しドアを少しだけ開く。空いた隙間から、突然何かを差し出され、驚きで手を離してしまった。ドアは差し出されたものを挟み止まる。同時に、痛みを訴えるようなくぐもったうめき声が聞こえた。慌てて挟まれているものを確認すると、それは何かを手にした人の腕であった。ドアが少し動き、腕が引っ込められた。
「すみません」
ドアの向こうから声が聞こえ、夏月は隙間から外を確認する。すぐ目の前に、メガネにスーツ姿の若い男性の姿を確認した。胸元には、身分証明書と思われる物を下げている。ドアの隙間から覗く夏月の姿を確認し、少し考え込むように首を傾げた後、男は胸元の身分証明書を手に取り差し出してきた。
「すみません。お話があります」
差し出された身分証には、訊いたことない省庁名と役職、姓名が書かれていた。夏月は、身分証に貼られている写真と目の前の人物を見比べた。
「すみません。ドアを開けていただけますか?」
その言葉に少し悩みながら、夏月は男性を再度確認した。丁寧な物言いと物腰、見るからに高そうなスーツから、強盗などではないと判断し頷く。すぐにドアが閉められた。チェーンを外し、あらためてドアを開く。目の前に居るのは、やたら整った顔立ちをした先ほどのメガネにスーツの若い男性。そして、その後ろには金髪碧眼にスーツ姿の、こちらもやたらきれいな顔立ちをした白人男性の二人だった。
「ちーっす」
金髪の男性が手を上げながらさわやかな笑顔でそう言った。見た目の印象との不一致に、夏月は不思議そうに小首を傾げる。
「あ、すみません。私、鈴木一郎と申します」
首から提げている身分証明書を掲げながらメガネの人物、一郎が頭を下げた。
「俺、John Smithっす。よろー」
同じく首から提げている身分証明書を片手に、金髪の人物、ジョンは手を振る。
「あのー。何の用ですか?」
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