第50話 王国軍出撃

 結局、王国軍が出撃するまでには2週間かかった。それでも3000もの兵をかき集めたのだから森1つを潰すにはとんでもない戦力だ。しかし、士気は低いらしく俺たちのダンジョンにたどり着くまでにそれから4日もかかった。

「さて、ここからが俺たちの戦いか。」

今、ダンジョンにいるのは名付けによりネイチャーエルフに進化した『リア』と同じく名付けによって進化してヴァンパイアの真祖至った『ドーラ』、それからノイルとレイナに非戦闘員の俺とメイ。いくらこちらが魔物を増やしたとはいえ3000の兵が相手ならリアやドーラには活躍してもらわないと捌ききれないだろう。と思っていたのだが。

「このダンジョンにたどり着くまでに既に300が離脱か。」

何もする前にすでに1/10がすでに消えていた。うちの魔物たちやレイナが強いだけで普通の人間はレッドタイガーやギガントイノシシの相手は数で対処しないといけないらしい。あまりにも魔物の数が多すぎたせいでこのダンジョンにたどり着く前に事故でケガをする人が大勢出たのだ。

「人間なんてこんなもん。」

隣でメイが冷たくそう言う。とはいえ、うちの戦力も大半が水増しのスケルトンになるのでライフルさえ持たなければ大差無いのだが。

「まあ、ここからが本番だしみんな気を引き締めていくぞ。」

モニターの様子を見ながら会議室で俺たちは気合いを入れた。


今回は単純な物量戦だ。ゴブリンの時もそうだったが圧倒的に数で勝る相手を防衛し続けなければならない。ゴブリン戦の時との大きな違いはゴブリンより人間のほうが遙かに強いこととこちらの武器がアップデートされてアサルトライフルになっていること。そして、ダンジョンが大きくなって戦闘用の階層が3階層になったことだ。

「さあ1回戦の開始だ。」

王国軍がダンジョンに侵入してくる。部屋の数が増えたことで最初の部屋から無理に魔物を配置する必要は無くなった。どうせアサルトライフルで殲滅を狙うなら最初の部屋を空けて長さ10メートルまで伸ばせるようになった廊下を通さないようにした方が守りやすい。横3メートルの通路をスケルトン4体を並べて弾幕を作る。当然のように突っ込んできた兵士たちは蜂の巣にされ足下に転がる。一瞬にして10人以上の兵士を失ったが王国軍は折れない。

「あれは何をやってるんだ?」

今度はガッチガチに防御を固めた重装兵が前に出てくる。

「たぶん盾と防御力で無理矢理進む作戦。でも、アサルトライフル相手にやるのは悪手。」

メイの言うとおりアサルトライフルにこの手の作戦は悪手だ。例え銃弾を防げたとしても長く続ければ体にダメージが残り内臓をやられる可能性が高い。それどころか火薬の威力があるので体に当たっても盾に当たっても威力が大きく前に進むことは難しいのだ。そもそも、例え最初の方はしのげても数さえ当たればしばらくすると弾丸が貫通するようになる。

「やっぱりダメ。」

重装兵はほとんど進むことができず銃弾の集中砲火を浴びて力尽きた。あんなところにあの死体転がってたら邪魔になりそうだな。


俺の予想は間違って無く重装兵の死体はダンジョンを攻略するのの弊害と化していた。ダンジョンの奥に突っ込むためには入り口付近に横たわってる死体は足場を不自由にしていた。素早く突撃しようとすれば邪魔になって足が引っかかるのである。その結果、突撃は勢いを削ぎ廊下の遙か手前で死体が増えていく。王国軍もバカではない。

「撃てぇ。」

ダンジョンの外から魔術師たちが魔法を放つ。スケルトンの防御力は無いに等しいので攻撃を受けたスケルトンは一発でやられてしまう。しかし、後ろから新たなスケルトンが出てくるので王国軍はなかなか進軍できない。

「おう、考えたな。」

今度はマガジン交換のタイミングを狙って新たに出てくるスケルトンを狙って魔法が放たれる。新たに出てきたスケルトンが倒れわずかに時間ができる。その隙を狙って王国軍が突撃してくる。しかし、スケルトンは5体を4セット分以上いるのでたいした隙にもならず突撃した兵たちは蜂の巣にされる。そうなってようやく力押しでは突破できないと悟った王国軍は魔法で遮蔽物を作って少しずつ進む作戦に切り替えた。


「突破するのにずいぶん時間がかかったな。」

アサルトライフルを持ったスケルトンしか配置してなかった第1階層を押し込むのに王国軍は800もの兵を犠牲にしたようだ。しかも、スケルトンたちを押し込んだだけで倒せていないため、スケルトンたちは第2階層に残ったままだ。

「こいつら魔法的な罠は警戒するのに物理的な罠は警戒しないんだよなあ。」

第1階層になだれ込んできた王国軍を見ながら俺はボタンを押す。その瞬間、第1階層各部屋に仕掛けたプラスチック爆弾が爆発する。物凄い爆音とともに王国軍の兵士たちが吹っ飛ぶ。

「知らないものは警戒のしようが無い。」

メイが警戒する方が無理だと言う。そして、その爆発を合図に後退して第2階層まで押し込まれていたスケルトンたちが突撃を開始する。スケルトンにも多くの犠牲が出たもののスケルトンたちの頑張りのおかげで第1階層を取り返し、王国軍は1000以上の被害を出しながら振り出しに戻ったのであった。

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