第38話 封印の館

 日が暮れ、夜の部隊の時間になる。テンカたちは就寝に向かうイノシシたちを容赦なく打ちのめして狩っていく。そして、襲撃の時間になる。

 今日の敵の数はスケルトン12のゾンビ6。それをアイアンゴーレム3体とストーンゴーレム2体で殲滅する。

 それと同時にテンカがスクロールを使ってサーチする。そうすると昨日と同じ位置にリザードマンが隠れていたようだ。潜伏がバレたリザードマンは慌てて逃げようとする。

「逃がさないコン。」

 リザードマンは森を障害物にして振り切ろうとする。やがて、その距離は開いていき、ついには完全に振り切る。リザードマンは追跡を撒いたのを確認して足早に主君の元へ急いだ。



 翌朝、俺はテンカたちから報告を受ける。どうやら作戦はうまくいったようだ。

「やっぱり封印の館か。」

 テンカの追跡はおとりだった。本命は影狼。テンカの追跡を撒いたことで追っ手は完全に振り切ったと思った敵はそのままアジトに向かうはず。そして、影狼には場所がわかればそれでいい。絶対に無理はするなと指示して送り出していた。これで封印の館の封印が解けていることはほぼ確実になったわけか。

「近いうちにあそこを攻めるぞ。」

 こうして館襲撃作戦の準備が始まった。



 それから2日間かけて準備した。その間、監視がバレたことが影響してかアンデッドの襲撃はなくなった。そして、準備を終えた異世界生活24日目。俺たちはついに封印の館を襲撃することになった。

「さて、準備はこれでいいか。」

 今回の準備に関して言えばマジックポーションを飲みまくってだいぶ無理をした。その分、ラインナップはとんでもないことになったが。

「メイ、運転大丈夫そうか?」

 今回の作戦でネックになるのは道中の魔物たちだ。いちいち戦闘してたらキリがない。ということで魔物に遭遇しないうちにさっさと封印の館にたどり着けるようにオフロード用の輸送車両を用意した。運転は{解析}のスキルのおかげで車についても熟知したメイに任せる。俺とレイナも動かせるとは思うけど免許持ってないし。

「大丈夫。無事にみんなを送り届ける。」

 メイが窓から顔を出す。

「任せたぞ。さあ、みんな出発だ。乗り込んでくれ。」

 助手席にレイナが座り、荷台部分に残りが乗り込んでいく。今回の遠征メンバーはレイナ、テンカ、ヴァンパイアとヴァンパイアが作成できるようになったスケルトン20体。これに輸送係のメイが加わる。スケルトンは作成コストが格安な上ヴァンパイアの魔力量がメイ以上だった結果これだけ作成できた。

「それじゃあ、行ってくる。」

 メイがそう言って車は発進していった。


 メイたちを見送った俺は会議室に戻る。会議室ではニーナがメイにルートをナビゲートしている。

「これで勝てるといいんだけどね。」

 その様子を見ながら俺はつぶやく。

「大丈夫ですよ。ここはみんなを信じましょう。」

 今回居残り組のエルフが励ましてくれる。

「ソウタさん。まもなく館に到着します。」

 ニーナが報告してくれる。さあ、作戦開始だ。


 車が停車するとテンカが先陣を切るように最初に飛び降りる。そして、レイナも助手席から降りて扉に近寄り、中の様子をうかがう。レイナがサーチを使い、中の様子を確認する。入り口付近の敵を確認したレイナは扉を破壊しスケルトン部隊を突撃させる。レイナはスケルトンとともに突撃しテンカは裏に回る。ヴァンパイアは一番最後に降りてきてそのままスケルトンたちに続くように館に入っていく。


 家主のヴァンパイアは扉の蹴破られる音を聞いて眉をひそめる。そして、敵襲という声とともに『ズバババ、ズバババ』という轟音と悲鳴が聞こえてくる。しばらくして音がやむ。

「失礼します。」

 こちらの返事を聞くよりも早くリザードマンが部屋に飛び込んでくる。

「何があった?」

 血相を変えたその表情にただ事ではないと直感する。

「得体の知れない武器を持ったスケルトンの軍勢がこの屋敷をすごい早さで制圧しています。」

 部下のリザードマンの報告を聞いてヴァンパイアは考える。

「スケルトンごときに我が屋敷の魔物たちがやられるだと?」

 スケルトンは難しい武器は扱えないはずだ。剣も振り回すことしかできない。それはスケルトンを召喚できる自分が一番よくわかっている。だが、この男の言っていることが嘘だとも思えない。

「リザードマンよ、撤退せよ。おぬしが見た情報を我が主に伝えるのだ。」

 わしを封印から解き放ってくれた主のためにここは情報を持ち帰らないといけない。この屋敷を守っているのはオークの精鋭だ。本来ならスケルトンごときに負けていい相手じゃない。だが、それが起こったということはその武器が規格外であるということだ。部下たちでは対応できん。主からもらった部下を何もできずに失ったのは残念だがこの情報には価値がある。

「おじさま、消極的すぎじゃありませんか?」

 横に控えていたサキュバスの部下が言う。

「すでにここでの目的は終えている。貴様らも早く逃げろ。ここはわしが引き受ける。主の元で会おう。」

 そう言って年寄りのヴァンパイアは戦場に向かう。

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