第24話 調査隊たちの戦い

 レッドタイガーの討伐後、いちいち外に出てドローンを操作するのが面倒になった俺は中継器を用意して会議室からドローンを操作することにした。ドローンを一つはダンジョンの周辺にもう一つは調査隊が来るであろう村の近くに配置して監視を行う。ちなみにもう一つのドローンはニーナが動かしている。本人たっての希望だったので任せてみることにした。

「ようやく来たか。」

しばらくして、もうすぐお昼にさしかかる頃になってようやく調査隊が乗った行商人の馬車が村に着いた。ニーナ曰く、近くまで行く馬車にお金を払って連れて行ってもらうのがこの世界の常識らしい。

やってきた冒険者は6人。一人だけ深くローブを被っているためわからないが残りは男4人と女性が1人という構成のようだ。ローブを被った1人は他の冒険者と溝があるように見えるためこの人が監督役だろうか。

 残りの冒険者のうち女性がパーティのリーダーのようでテキパキ指示を出している。いかにも姉御肌というような見た目のとおり、パーティからも信頼されている様子がよくわかる。

女性が村の人と一通り話した後、冒険者たちは森に入っていく。そして、それからまもなくしてギガントイノシシとの戦闘に入ることになった。


ギガントイノシシを前にして女性冒険者ステフは仲間たちに気合いを入れる。

「おまえら、こいつは行方不明になったパーティを壊滅させたやつかもしれないんだ。気を抜くなよ。」

森に入ってすぐにギガントイノシシという大物に当たるとは思っていなかった。ゴブリンのクエストに向かったFランクの冒険者がいきなりこんなのに遭遇したら壊滅してもしょうがないと思う。もしかしたらゴブリンたちはこいつから逃れるために村の近くまできて目撃されたのかもしれない。そのような推測を立てながらステフは慣れた仲間たちとギガントイノシシと対峙する。

パーティのいつもの作戦通り前衛にアンドレのじいさんと新人のルーニーが接敵する。自分とアレクが隙を見て横や後ろに回り込んで倒す、または後衛のレイモンドが魔法で仕留めるのがこのパーティの戦術だ。

今回もアンドレのじいさんがギガントイノシシの突進を受け止める。このじいさんは普段は酒好きの酔っ払いじいさんだが戦闘になれば本当に頼りになる。盾持ちのじいさんが攻撃を受け止め、同じく盾持ちのルーニーがチャージしてギガントイノシシの体勢を崩す。

「行くわよ。」

そこにわたしとアレクが外を回り込み横っ腹に左右から一閃する。ギガントイノシシがうめき声を上げたところでアンドレがファイアーボールの魔法を放ちギガントイノシシの命を刈り取る。

「毎度見て思うけど、じいさんよくあの突進を受け止められるわね。」

このパーティが簡単にギガントイノシシを狩れたのはアンドレが突進を受けきれてることが大きい。ここが吹き飛ばされてしまっていたら展開は変わってくるだろうし、受け止められるのはアンドレだからだ。

「これも経験じゃよ。」

じいさんはこう言うがこの技術を身につけるのにどれだけの時間がかかるのか。少なくともルーニーには目の前にお手本があってもなかなかここまでうまくは受けきれない。

「皆さんもう1匹来ます。」

ギガントイノシシを倒して談笑ムードの中、周囲を警戒していたルーニーが警告する。

「もう1匹いるの?これじゃあ、新人さんには厳しかったかもね。」

ステフがパーティ壊滅の原因をギガントイノシシだと決めつけて言う。

「みんな、もう一戦行くわよ。」

改めて気合いを入れ直して次のギガントイノシシに立ち向かう。


 2匹目も同じ要領で倒すが今度は左右から2匹のギガントイノシシが顔を出す。

「何匹いるのよ、この森。」

ステフが悪態をつく。

「封印の森の噂は事実だったってことか。どちらにせよやるしかない。」

アレクが叫ぶ。監督役でついてきた冒険者はまだ腕組みしたまま動かない。これが続くようなら彼女にも対処してもらわないと。ステフはそう考えながら2体のギガントイノシシに立ち向かう。

「さすがに2匹同時は少しきついわね。」

攻撃が分散する分、倒すまでに時間がかかる。特にルーニーが受け持った方は攻撃を受けきれず状況が悪くなっている。ステフとアレクがフォローに入り、もう片方をアンドレとレイモンドに任せることになる。

そうこうしてるうちにさらにもう1匹ギガントイノシシが顔を出す。さすがに今の状態で3匹目は受けきれない。監督役の冒険者に助けを求めようと思ったがそれより早く風が横切った。

「嘘でしょ。」

ステフたちが受けきるのが難しいと判断したその冒険者は3匹目のギガントイノシシにすぐに距離を詰めて一閃。一撃で沈めて見せたのだ。そして、ステフたちが苦戦していた2匹を次々に倒す。

「まだ次が来るわよ。立て直して。」

監督役の少女は倒した魔物には目もくれず、辺りを見ながらそう言った。そして、少女の言葉通り2匹のギガントイノシシが茂みから顔を出す。

「左は任せた。」

少女はそう言うと右側のギガントイノシシに向かってかけていく。

「わかった。」

ステフは仲間とともにもう1匹に立ち向かう。


そうこうして、合計10体ものギガントイノシシの死体を作り出したところで今度はジャイアントイノシシが顔を出す。

「ここはわたしが引き受ける。あなたたちは村に戻って村を守って。あと、村人にギルドまで緊急支援要請を出させて。早く。」

 少女がしんがりを名乗り出てわたしたちは撤退する。自分より年下の少女に一番厳しいところを押しつけてしまうのは心苦しいが自分たちではあいつの相手が厳しいこともわかっている。

「どうかご無事で。」

少女の背中に声をかけてわたしたちは村に戻った。

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