第23話 レッドタイガー討伐戦

 翌日、ついに調査隊が来る日になりギガントイノシシの数もさらに増えている。いったいどこから増えたのやら。そして、俺たちも大型のイノシシに対応するためメイに作ってもらうゴーレムをアイアンゴーレム1体とガーディアンゴーレム1体に切り替えた。

「昨日1頭しか見つけられなかったジャイアントの方もすでに3頭か。相変わらずイノシシたちはすごい早さで増えてるな。」

ドローンを回しながらつぶやく。まだ村の近くまでたどり着いてないのにすでに50頭以上のイノシシを見つけている。

「これでレッドタイガーも同じ速度で増えてないだけマシですかね。」

隣で新たに増やしたドローンを操作するエルフが頷く。今のところレッドタイガーは昨日の3頭以上の数は確認できていない。

「そんなことになったらどうしようもないな。」

レッドタイガーの危険度はギガントイノシシよりも上位種であるジャイアントイノシシの方が近い。ジャイアントイノシシと同じペースで増えられても困るのだが現在の森の状況ならその可能性も否定できない。そんな会話をしているうちに俺の操作しているドローンが村の近くの一番ギガントイノシシの多かったエリアに入る。

「ソータ、左上にジャイアントイノシシ。」

昨日はいなかったこのエリアにもジャイアントイノシシが確認される。

「右上にはレッドタイガーもいる。」

そして、ギガントイノシシの死体を食い荒らすレッドタイガーの姿も確認できた。こちらも昨日はこの周辺では確認できなかった。レッドタイガーの周りにはいくつかのギガントイノシシの死体が確認できるためレッドタイガーが倒したのだろう。まあ、歩けばギガントイノシシにぶつかるような状況なのでレッドタイガーがこの地域にいる時点でこうなることは避けられなかったわけだが。

「まずいですね。」

俺のタブレットからレッドタイガーの姿をのぞき見たエルフがつぶやく。

「うん、すごくまずい。」

メイもエルフに同意する。

「何がまずいんだ?」

わかってない俺はメイたちに質問する。

「レッドタイガーがギガントイノシシを狩るってことはそれだけレッドタイガー成長するってこと。」

メイが質問に答える。このまま、レッドタイガーが歩くたびにギガントイノシシにぶつかるような状況が続けばレッドタイガーがとんでもない強さになるってことか。そして、レッドタイガーとギガントイノシシの力の差を考えれば連戦になってもそうそうレッドタイガーが負けるような状況にならないし、そのような状況になったらギガントイノシシがジャイアントイノシシに進化してしまうという問題が発生する。

「レッドタイガーも早いうちになんとかしないといけないか。」

村の近くの個体に限らずレッドタイガーが成長する前に叩かないとダンジョンの脅威になることは変わらないのでどこかで処理したい。

「昨日よりもギガントイノシシの包囲網が村に近くなっているか。」

ドローンを回しているとギガントイノシシの行動範囲が昨日より村に近づいたのがわかる。

「たぶん、数が増えて村側に追い出されているんだと思う。」

メイが推測する。こうなれば何もしなくても数日後には村はギガントイノシシに襲われることになる。

「どちらにせよ時間の問題か。」

調査隊のパーティが森に入ればギガントイノシシとぶつかることになり、ギガントイノシシを刺激すれば村に突っ込んでくる可能性もある。そうでなくてもこのままレッドタイガーが成長し続ければいずれ村にたどり着いて村を滅ぼしてしまう。どう転んでも村が存続の危機にあることは間違いない。

「マスター、大変です。火狐さんたちとレッドタイガーの距離が近づいてきています。」

エルフが自分の操作するドローンの映像が映るタブレットを見ながら報告する。

「エルフは火狐たちのフォローに向かってくれ。」

もうすぐ接敵すると判断した俺はエルフにも援護に向かうように指示を出す。

「火狐、すぐ近くにレッドタイガーがいる。エルフを援護に向かわせたから慎重に対処してくれ。」

火狐にも念話で注意するように伝える。火狐からは「了解コン。」と返答があった。


 エルフが援護に向かってからしばらくしてエルフから準備完了の連絡があった。

「火狐、エルフも配置についたらしい。」

そして、俺はそのことを念話で火狐たちにも伝える。既に火狐たちはレッドタイガーを取り囲むように潜伏しており、いつでもいける態勢を整えている。

先制攻撃はエルフの長距離射撃。500メートルほどの距離からレッドタイガーの頭を正確に撃ち抜く。大ダメージを与えることには成功したがこのクラスの魔物はそれだけでは倒せない。

狙撃と同時に影狼がレッドタイガーの背後から飛び出す。隠密の魔法を発動し音を立てずに気配も感じさせず死角から迫る。狙撃によりのけぞりギリギリ倒れずに踏ん張ったレッドタイガーに飛びかかりパラライズファングを発動する。パラライズファングは噛み付いた相手をマヒさせ一時的に動けなくする技だ。

影狼が接近に成功したタイミングで火狐と白狼も茂みから飛び出す。あえて姿を見せ狐火を見せることで意識をこちらに集中させ影狼の存在を隠す。そして、意識が火狐たちに向かった瞬間に影狼のパラライズファングが入り、レッドタイガーマヒして体勢を崩す。そして、体勢が崩れた瞬間に白狼がアイスクローを発動させ一気に距離を詰め切り裂く。かろうじて意識があったレッドタイガーを火狐が催眠術で眠らせたところで勝負あり。あとは落ち着いて2発目のエルフの狙撃を命中させたところでレッドタイガーは力尽きた。

「良くやった。」

レッドタイガーに何もさせずに倒した火狐たちをねぎらう。

「周囲にそちらに向かっていく敵はいない。戦闘終了だ。」

ドローンでしっかり周りを確認し、安全を確認したところで火狐たちは撤収の準備に入る。戦闘自体は一瞬だったがかなり精神的にも張り詰めた戦闘だったので全員を一回休ませることにした。

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