第20話 調査隊対策会議

 冒険者ギルドから調査隊が来るまでにはもう少し時間がかかることがわかったのでそれまでにいろいろ準備しなければいけないのが、今後のためにも一つやらないといけないことがある。それは周辺の把握だ。どこに何があるのかを広い範囲で把握する必要がある。ということで現代技術の出番だ。

「あの、それなんですか?」

俺が模倣で生み出したドローンを見てニーナが首をかしげる。

「空から周りの様子を見れる道具かな。」

ちなみにこの世界で空からの視点を手に入れようと思ったらビーストテイマーが鳥と視覚を共有するしか無いらしい。

「じゃあ、ちょっと映像取ってくるわ」

カメラ付きのドローンと映像を表示させる用のタブレットを持って俺は地上に出る。


ドローンを起動するとモーターの回転音がしドローンが空に浮かび上がる。

俺は映像を見ながらドローンを少しずつ上昇させる。まずは最大高度まで上昇させ写真を1枚撮る。

ダンジョンから少し離れたところでエルフや火狐たちが狩りをしている様子が確認できたが向こうは戦闘に必死で気がついていないようだ。


それからしばらく周辺を探索していたらゴブリンの集落の跡地を見つけた。そして、そこから少し離れたところに人間の死体らしき物が転がっていたが何者か(おそらく魔物)に食い荒らされたような形跡があり、無惨なことになっていた。さらにそれからしばらく探索すると小さな村が見つかった。ここが外れにあるという村かな。あとでニーナに確認しよう。それからもしばらく周辺の地形を探索してダンジョンに戻った。



会議室に戻ってメイとニーナと一緒にドローンからの映像や画像を確認したが結論から言えば、村からこのダンジョンまでの道のりはめちゃくちゃ遠かった。どれくらいかというと半日近く歩かないとたどり着かないレベルだ。それならば、調査隊がこのダンジョンを見つけるのは難しいだろう。ただ、調査隊が見つけれてしまうものもある。ゴブリンの集落跡地だ。

「これが見つかったらもっと大規模な調査隊が結成されるかもしれない。」

とメイが指摘する。ゴブリンの集落が見つかる時点で大事件なのにその集落のサイズが大きいこと、その集落が廃墟となっておりゴブリンたちが消えていることが大問題だ。大きな集落を作れるだけのゴブリンの群れを壊滅させられる存在がこの森にいることを証明しているようなもんだ。

「この集落、無かったことにできないかな?」

あまりにも厄介すぎて思わずつぶやいてしまった。

「さすがソータ。その手があった。」

メイが何か妙案を思いついたらしい。いや、何がさすがなのかわからんって。



 夕方になり、大量に成果をあげた火狐たちが帰ってきた。一応、ある程度は想定して荷台付きゴーレムを2体派遣したのだがそれが容量いっぱいになって帰ってきた。付き添いの二人が疲れ切った表情をしているのと対照的にオオカミ2匹はまだまだ狩り足りないといった様子だ。

「こいつら優劣着くまで狩りを続けるって言って連れ帰るのが大変だったコン。」

と火狐が疲れた様子で報告してくれたので精一杯撫で回してやることにした。

「そりゃ、大変だったな。」

途中、上空からカメラで見ていたのでオオカミ2匹がすごい早さで獲物を探し求めていたのを知ってるだけに引率役の気苦労はそうとうなものだっただろう。

「お疲れ様。エルフもご苦労様。」

功労者たちをねぎらって夕食の準備にとりかかる。


夕食が終わるとオオカミ2匹は力尽きたように夢の世界へ飛び込んでいった。小さい子供ってこんな感じだよね。火狐も疲れて船をこいでいるので寝るのは時間の問題だろう。エルフはあとで話があると言ったらポーションを一本飲んで無理矢理体力を回復させていた。

「それでメイ、どうやって集落をなくすんだ?」

エルフにこれまでの経緯を話し、落ち着いたところで話を切り出す。

「ゴブリンが加工した木材とかは火狐に燃やしてもらえばほとんど目につきにくくなると思う。でも、あのスペースはどうしても不自然で違和感を感じてしまったらあそこに集落があったことを隠し通すのは難しい。」

ゴブリンたちは穴を掘ったりしているので注意深く見れば生活の後は完全には消せないのだ。

「だったらスペースを消せばいい。エルフならそれができるはず。」

メイに言われてエルフはなるほどと頷く。

「ハーベストタイムで森を育てれば森の中の一部として認識され、痕跡の発見は不可能に近くなるってことですか。たしかに可能ですね。」

エルフができることを認めた。

「ですが、それでニーナさんたちの死の真相をごまかせるわけではありません。その辺りはどうするおつもりですか?」

根本的にニーナたちのパーティ壊滅の原因になりそうなものが発見されなければ捜査の手からは逃れられない。

「それならたぶん大丈夫。」

そう言ってメイは先ほどのドローンの空撮写真からいくつかを拡大する。

「まずこれ、ギガントイノシシ。たぶん、ニーナたちのパーティを粉砕できる。」

ギガントイノシシは俺の身長くらいのサイズのイノシシでとてつもないパワーを持っているらしい。警戒心が強く縄張りに入りさえしなければおそってくることはないから狩りの対象にはなりづらいらしい。

「こいつが何カ所かにいるのが確認できたから、こいつを見つけてくれれば縄張りに入ってこいつにひき殺されたで納得してくれるはず。」

なるほど。死体を食い荒らしていたのもこいつらしいので筋は通っている。

「確かにそれなら問題無さそうですね。それでは明日のうちに細工を済ませてきますね。」

エルフの同意も得られたし火狐には明日説明するとしてとりあえずの方針は決まった。

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