第12話 ゴブリン攻防戦

「マスター、さすがですね。」


 地上階、最奥に待機するエルフはそうつぶやく。サーチが使えるエルフは最初の地雷の爆発の直後、その後の爆弾による爆発の直後の2回にわけて相手の戦力を分析していた。


「敵の数、50まで減少しました。」


最新の状況をマスターたちに報告する。最初は70以上いたゴブリンたちは2種類の爆発で一気に追い込まれた。エルフからは敵の弓部隊が爆発に飲まれて動けなくなったり、弓が折れて使い物にならなくなったりといった状況が確認できた。


「来ましたか。」


それでも攻め込んでくるゴブリンたちがようやくダンジョンの入り口に姿を現す。中央を空けさせたゴーレムたちの配置の真ん中をエルフの銃弾が通過する。


ダンジョンに侵入した先頭のゴブリンの頭を一発で撃ち抜くがその後ろを走っていた残りのゴブリンたちが入り口の部屋の侵入に成功する。


「ゴブリンたちの先頭部隊、ダンジョンに侵入しゴーレムたちと戦闘を開始しました。」


無線で状況を報告する。そして、淡々と狙えそうなゴブリンを狙撃していく。徐々にダンジョンまでたどり着くゴブリンは増えていき入り口の部屋は10匹ほどのゴブリンが戦闘をしている。


「思っていたよりも狙いづらいですね。」


最初の数匹は苦労なく仕留められたが途中から狙われていることがバレたらしくゴブリンたちがダンジョンに侵入してすぐにエルフから死角になる位置に移動するようになった。


「もっと早く狙いをつけないといけないですね。」


エルフが集中力を高め狙撃の精度をあげていく。それでもエントリーをとらえられない個体があった。動きが速く体も大きい。


「マスター、すみません。上位種の侵入を許しました。ゴブリンウォリアーだと思われます。」先に1体ゴブリンを進ませてそれを撃った瞬間に上位種は飛び出してきた。明らかにこちらのタイミングを計った侵入だ。


上位種の侵入が成功するとそれからなだれ込むようにゴブリンが突っ込んでくる。既に外のゴーレムたちは限界なのだろう。


エルフの援護があるとはいえ20匹ほどの侵入を許した時点でアイアンゴーレム1匹を残して入り口の部屋のゴーレムたちがやられていく。ゴブリンたちも侵入できた戦力のうち残りは上位種を含む5匹程度と満身創痍だ。


「マスター、入り口の部隊がアイアンゴーレム1体になりました。ゴーレムたちの補充をお願いします。」




「おまえら、あとはこいつ1体だ踏ん張れよ。」


満身創痍になりながらゴブリンウォリアーは仲間のゴブリンたちを鼓舞する。ここさえ制圧すれば一息つく余裕もできるしゴブリンリーダーたちと合流できる。何よりゴブリンメイジが目を覚ますまでの時間が稼げる。そう考えていると『ゴゴゴ』と音がして壁の一部が開き始める。そして、そこからゴーレムたちが顔を出す。


「マジかよ。簡単には休ませないってか。」


ゴブリンウォリアーは悪態をつく。さらにもう1体のアイアンゴーレムだけでも厳しいのに取り巻きが5体もいる。


「リーダー、そろそろ外片付けてきてくれないときついぜ。」


ダンジョンの外がだいぶ有利に傾いているのはなんとなく感じ取っている。それでも、決め手にかけるようでまだ外のアイアンゴーレムは倒せていない。


「アニキ、あれはさすがに無理でっせ。」


若いゴブリンが新たに出てきたゴーレムたちを見て弱音を吐く。


「もう少し我慢しろ。粘ってれば外の奴らが助けに来てくれる。」


厳しいのはわかっているがここで踏ん張らなければ全て無意味になってしまう。覚悟を決めて飛びかかろうかというタイミングで外から魔法が飛んでくる。魔法はストーンゴーレムに命中しよろめかせる。


「あの魔法は...」


見覚えのある魔法にウォリアーはほほえむ。


「おせぇよ。」


あれはゴブリンメイジの魔法。つまり意識を失っていたゴブリンメイジが目を覚ましたということだ。それから外にいたゴブリンたちがなだれ込んでくる。何体かは奥からの攻撃でやられたが十分に勝算のある数がそろった。何より


「遅くなった。ウォリアー、このまま押し切るぞ。」


頼れる指揮官ゴブリンリーダーと


「やられた分はやり返す。」


ゴブリンメイジが来てくれたことが心強い。まだ、上位種3体が残っているのだからいくらでもやってやれる。


「ああ、俺たちがそろってんだ。全部倒して地獄を見せてやる。」


ここに来てようやく自分たちのペースを取り戻せた気がした。




「流れが向こうに傾いたな。」


報告を聞いた俺はそうつぶやいた。敵の総数は25匹ほど。しかも、上位種がまだ全て健在なので入り口の部屋はすべて片付けられる可能性は高いだろう。


「エルフ、ゴーレムが3体やられたら教えてくれ。こっちからも打って出よう。」


敵の戦力はダンジョンに入ったので全部だ。相手を殲滅するための策を練る。主役は火狐だ。ここまで火狐はほとんど待機だったからね。最後に暴れてもらおう。


火狐たちに指示を出しながらエルフと戦況を確認する。


「マスター、クレイゴーレム2体とストーンゴーレム1体がやられました。敵戦力は21匹です。」


十分、間に合ったようだ。


「了解。火狐たち、暴れてこい。」


火狐たちを送り出す。さあ、これが最終決戦だ。


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