第10話 防衛準備

 メイは翌朝までにきっちり盾を作ってくれた。朝になってストーンゴーレムを4体作ってから仮眠に向かった。全てストーンゴーレムにしたのはアイアンゴーレムだと防衛時にエルフの射線を遮ってしまう可能性が高いと判断したからである。


「ゴブリンの痕跡は確認できたか?」


 明るくなって周囲に何もいないのを確認してから周辺にゴブリンの痕跡を探しにいっていたエルフと火狐が帰ってきたので確認する。


「はい、すぐ近くまで足跡が来てたので今夜辺りに襲撃が来そうですね。」


 エルフが答える。そうなると今日は防衛の準備に専念した方がいいだろう。メイはまだゆっくり休ませたいので活動できるのは俺ら3人とゴーレムたちだけだ。


「暗くなると近くまでゴブリンたちが近づいてもわかりづらいよな。」


 ゴブリンは夜目が利くらしく襲撃は日が落ちてから行われることが多いらしい。となると今晩が濃厚。うちの最大戦力で門番でもあるゴーレムたちは夜目が利かないので日が落ちると襲撃を察知しづらくなる。


「エルフと火狐でゴブリンたちが近づいたら絶対に通る場所を数カ所見繕ってくれないか?」


 こちらが門番を立てる以上、ゴブリンたちは絶対に周囲を包囲してから一斉に奇襲をしかけてくるだろう。なら、絶対に隠れるであろう茂みにトラップを仕掛ければ包囲を察知できる。


「わかりました。」「りょうかいコン。」


 エルフと火狐が頷いて場所を見繕い始める。俺は二人を見守りながらトラップの準備をする。ダンジョンの中にいても敵の侵入が察知できて効果的に使えるトラップと言えば『地雷』しかないだろう。そのうちダンジョンの周りに監視カメラをつけたいが電力の供給ができないため難しそうだ。


 エルフと火狐がポイントを決めたようなのでゴーレムたちにそのポイントに地雷を埋める用の穴を掘らせる。地雷の設置は思っていたより早く終わったので仲間たちにここは絶対通るなと指示を出しておく。


 次はダンジョン内の俺たちの配置だ。ダンジョン内の魔物の数が30を超えたため設置できる部屋が一つ増えたので地上階の部屋が一つ増えた。ついでに隠し部屋も設置できるようになったのでこれをどう使うかは腕の見せ所だ。


「さて、どう配置するか。」


 部屋の配置と魔物の配置をセットで考える。地下のスペースはなるべく動かしたくないため基本的に使えるのは地上の三部屋+通路と隠し部屋だ。エルフの狙撃を考えれば直線上に部屋と通路を並べるのは確定で問題は隠し部屋をどこに設置するのか。俺の持っている戦力はウェルダードワーフのメイと火狐にエルフ、それからゴーレムたちがアイアンが4体、ストーンが15体にクレイ9体と合計31。俺とメイはほぼ非戦闘員なので実質29。


「アイアンゴーレムをどう配置するかだな。」


 そもそも一部屋が教室くらいのサイズしかないのでゴーレムを詰め込みすぎるとお互いの動きを阻害してしまう可能性がある。それがさらに巨体のアイアンゴーレムだと一部屋あたりに配置できるか数はもっと少なくなるだろう。そして、アイアンゴーレムには身長が通路をギリギリ通れるくらいのサイズがあるせいでエルフの狙撃の邪魔になりやすいデメリットもある。その結果必然的に配置できる部屋は限定されてしまう。


「配置が確定しているところから考えていくか。」


 地下階への通路、入り口から一番遠くかつ射線がギリギリ通る位置にエルフを配置することは確定。そして、その護衛に盾持ちのストーンゴーレム2体で通路を塞ぐことは確定だ。ここを抜かれたら負けなので絶対防衛ラインだ。これを突破されそうになったらアサルトライフルで銃弾の雨を降らせることになるだろう。


 次にその前にある地上階の一番奥の部屋には火狐とその護衛として残りの盾持ちのストーンゴーレム3体を配置する。これは火狐が相手の死角から攻撃しやすくするためだ。そして、普通のストーンゴーレムも2体ここに配置する。ここまで攻めてきたゴブリンはストーンゴーレム5体で15匹まで足止め可能なはずなので止めてる間に火狐の催眠術で眠らせて倒す作戦だ。これが確定ラインで、残りがアイアン4,ストーン8,クレイ9。


 真ん中の部屋にアイアンゴーレムを置いても邪魔になりそうなのでここにもアイアンゴーレムは置けない。必然的にこの部屋もストーゴーレム中心に配置することになる。残りのストーンゴーレムのうち半分の4体は確定。それからクレイゴーレムを3体配置して合計7体がこの部屋のサイズでギリギリお互いを阻害しない最大配置数だろう。これで残りがアイアン4,ストーン4,クレイ6。部屋は入り口の部屋とどこかに設置する隠し部屋のみ。


 こうなると必然的にアイアンゴーレムは入り口の部屋に2体以上は置かないといけなくなるが3体目を置くと他のゴーレムを配置するには狭くなってしまう。結果、アイアン2体とストーン1体、そしてクレイを2体にすることになった。この部屋の目的はアイアンゴーレム2体で暴れて奥に進む敵の数を大きく削ぐことにある。そして、上位種をここに足止めして奥に進ませないことも大事だ。


「となると隠し部屋の場所と使い方も決まりか。」


 一番戦力の消耗が激しいのは当然のように入り口の部屋。つまり、戦力の補充が一番必要なのもここになる。なので隠し部屋は入り口の部屋につけてアイアン1体、ストーン3体、クレイ2体を収納。入り口の部屋が消耗したらここから出陣するようにして奥に行く戦力を減らすようにする。残りのアイアンゴーレム1体とクレイゴーレム2体は門番としてダンジョンの外に配置することになった。ダンジョンの外に見張りがいたら周囲を包囲して地雷を踏む確率もあがるしね。

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