第6話 ダンジョン強化

「んっ。」


 目が覚めるとまた、周りに誰もいない状態だった。鉱山のほうからカンカン、と採掘する音が聞こえる。あれ?こんな言い音したっけ。というか採掘する音がたくさん聞こえる。なんか数多くねえか?


 鉱山を覗きに行く。なにやらメイが指示を出してクレイゴーレムたちが採掘していた。そういえばメイは鉱物探知の魔法を覚えたんだっけ。でも、俺はそのことを伝えた記憶が無い。そして、クレイゴーレムはいっぱいいた。その数なんと8体。いつの間にそんな増えたんだ?俺が知ってるの2体なんだけど。


「マスター、目覚めてくれて良かった。すごい心配した。」


 俺を見つけて駆け寄ってきたメイは開口一番そう言った。そういや、俺は昨日名付けをしてそのまま気絶したのか。


「心配かけて悪かったな。」


 ごめんな、と頭を撫でる。名付けをして成長したのかメイの見た目が12歳くらいから15歳くらいまで成長している。背も少し伸びたようだ。あとでステータスも確認しよう。


「マスターが死んだらわたしたちはどうすればいいかわからなくなる。だから、絶対に無理はしないで。」


 メイにそう言われてしまっては、俺は頷くしかない。どうやら、名付けにはリミッターが働かないらしい。あれは注意して使わないといけないな。


「それで今は何をやってるんだ?」


 話をそらすように俺は現状を聞く。


「昨日、火狐がわたしに鉱物探知の魔法が使えるって教えてくれたから、ゴーレムたちに指示を出して鉄と石炭を掘り出してる。」


 確かに火狐はスキャンが使えるからメイの能力もわかるようになっているはずだけどもしかして魔物同士って言葉が通じたりするのか?


「火狐が伝えてくれたのか。でも、どうやってコミュニケーション取ったんだ?」


 疑問に思ったので聞いてみることにした。


「昨日になってレベルアップしたみたい。火狐はテレパシーを使えるようになった。それで鉱物探知が使えるって教えてくれた。」


 ん?昨日レベルアップしてテレパシーを使えるようになった?もしかして、俺一日以上寝てたってことか。


「なあメイ、俺ってどれくらい寝てた?」


「丸二日寝てて、今日で三日目。その間にわたしはゴーレムマスターのジョブと設計図作成の能力を手に入れた。」


 どうやら俺が寝ている間にいろいろ変わったらしい。あとでいろいろ確認しないと。


「その火狐はどうしたんだ?」


「ストーンゴーレムを2体連れて外に狩りに出かけた。少し遠くまで足を伸ばしてるみたい。」


 それ以外もメイにここ二日間の情報をもらう。ゴーレムマスターのジョブのおかげでアイアンゴーレムを作れるようになったこと。倒した獲物の数や食べ物の備蓄などだ。


「今いる戦力はがメイと火狐とアイアンゴーレムが2体、ストーンゴーレムが6体、クレイゴーレムが8体か。メイにはいろいろ作ってもらいたいから戦闘に出せないって考えると火狐とゴーレムが16体か。後衛が圧倒的に不足してるな。」


 火狐は正面切って戦うのが得意なわけではないが催眠術の射程が狭いこともあり、後衛とは言いづらい。狐火には一応ダメージがあるが本質は幻惑魔法なためダメージが小さく何より速度が遅いため簡単に躱せてしまいほぼゼロ距離からしか当てられない。つまり有用な中長距離の攻撃手段が今のところないのだ。


「そうだね。次に召喚するなら後衛で戦える魔物が欲しい。」


 まあ、それも選択肢なんだが異世界から銃を持ち込むって手段もある。弾薬の問題があるので燃費は良くないけど。こっちで弾が作れるようになれば話は変わるけど。とはいえ遠距離系の魔物が欲しいのは事実か。


「メイ、俺の世界の武器なんだがこれの弾を作るのは可能か?」


 そう言って俺は模倣でアサルトライフル生成する。メイは解析の能力を使ってアサルトライフルを調べる。


「すごい武器。ただ、残念ながら現状だと弾薬の製造はできないしできるようになるのにだいぶ時間がかかると思う。」


 やっぱり難しいみたいだ。非常時のために俺とメイの二丁と弾薬だけは少しずつ蓄えておくか。


「じゃあ、やっぱり遠距離攻撃ができる魔物が必要か。」


 結局この結論になるのはしょうがないだろう。


「うん。だけど遠距離魔法が使える魔物は結構少ない。火狐には使える子もいるみたいだからそのうち使えるようになるかもしれないけど。召喚できる確率は結構低いはずだよ。」


 火狐にはその可能性もあるのか。じゃあ、遠距離じゃ無くてもいいか。


「火狐が遠距離魔法使えるようになればそれでもいいか。」


「可能性があるだけだから絶対じゃ無いけど。でも、ゴーレムを前衛で使い続ける方針ならやっぱり後衛の長距離砲は欲しい。それ以外だと索敵能力のある魔物も欲しい。わたしも火狐も索敵は得意じゃないから。」


 なるほど索敵能力を持った魔物か。そういやさっき見たらサーチの魔法が使えるようになってたな。あれをスクロールか魔導書にして触媒にするか。


「なあ、スクロールと魔導書って触媒にする時に召喚できる魔物が変わったりするのか?」


 ふと気になったので聞いてみる。


「基本的に魔導書のほうがレアな魔物を引きやすいって言われてる。」


 まあ制作コスト違うしね。レアなものが出てくれないと困る。とはいえ、サーチ自体は魔力消費の軽い魔法なので誤差の範囲かも知れないが。


「じゃあ、サーチの魔導書は確定としてもう一つの触媒をどうするかだよなぁ。」


 俺はサーチの魔導書を作成しながら触媒を考える。そういえば、前にメイを召喚した時に電卓の価値を理解できるのは魔族だけとか言ってたような気がするな。


「なあメイ。前に電卓の価値が理解できるのが魔族だけって言ってたけど知能が高くないと理解できないものなら確定で魔族が召喚できるの?」


 魔族確定召喚とかできたら強くね、っと考えて聞いてみる。


「そんな者が触媒としてホイホイ出せるなら可能だけどそんな簡単に用意できない。いや、もしかして模倣で用意し放題。」


 メイが俺の狙いに気付いて驚いている。


「確かに可能。でも、さっきのアサルトライフルだとまたドワーフが出てくることが濃厚。何の解決にもならない。」


 確かにアサルトライフルではサーチができるドワーフとかになりそうだ。現状、メイがいればドワーフには困らないだろう。できれば別の魔物が欲しい。


「例えば知識を詰め込んだ本なんてどうだ?本が読めない魔物は全部はじかれると思うんだけど。」


 俺が辞書を模倣しながら聞く。


「これなら少なくとも知識の探求のために引きこもるエルフは呼び出せそう。他の魔族はわからないけど少なくとも本が読めない魔物は出てこない。」


 辞書を調べたメイが断言する。これは魔族確定召喚のアイテムで間違いないらしい。


「ちなみにエルフって索敵できるの?」


 エルフと言えば遠距離射撃のイメージがあるし索敵できれば完璧だと思って聞く。


「エルフは森への侵入者に敏感だから侵入者を把握する能力は持ってる。」


 これで触媒も決まったな。


「マスター、召喚は明日。今日は安静にしてないとダメ。」


 病み上がりだからね。さすがに無理はできない。


「わかってる。とりあえずダンジョンを増築して今日は休むよ。」


 せっかく2階層を作れるようになったのに倒れてて増築できて無かったのだ。しかも、倒れてる間にできることも増えてたしダンジョン強化は今日中にやっておきたい。


「マスター、マスターが起きるまでは鉱山を掘るためのピッケルしか作ってなかったけどこれからどうする。」


 鍛冶の方針も決めないといけないか。鉄を取るための効率を優先してピッケルは作ったけど他は俺が起きるまで貯めておいてくれたのだろう。俺作りたいものを作るために。


「火狐は武器を持てないからゴーレムに武器を持たせるのがダンジョンの防衛力向上には必要だな。」


 俺の考えにメイがうなずく。


「それなら打撃系の武器を作る。ゴーレムは力一杯武器を振り回してる方が強い。」


 メイの言葉は正しいだろう。小回りが効かないゴーレムには細かく狙いを定めることが必要な刃物よりも単純に当たりさえすればいい棍棒などの打撃武器のほうが期待値が高いだろう。


「それ、どれくらい作れる?」


 貯蔵量がわからないのでメイに尋ねる。


「石なら腐るほどあるけど鉄だと2、3個くらいかな。」


 メイが貯蔵量を思い出しながら答える。採掘すれば増えるけどと補足があったけど。


「じゃあ、鉄の分はアイアンゴーレムに回してストーンゴーレムの分は石を加工して作って。できればクレイゴーレムの分までできれば欲しい。」


「頑張る。」


 頷いたメイは鉱山に戻り採掘の量を確認しにいった。

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