第3話 戦闘要員を求めて

 翌日、外に出るにも護衛が必要なので魔物を召喚しないといけないのだが触媒をどうしようか。俺が元いた世界のアイテムはまたドワーフを呼びかねないし。


「1つは決まってるんだよなぁ。」


 昨日寝る前に準備したスキャンのスクロールを今回は素材にしてみようと思う。


「スキャンのスクロールって召喚素材としての価値ってどれくらい?」


 一応、ドワーフに確認してみる。


「スキャンの魔法は感覚に優れている魔物に適性が多い魔法だから結構優秀な魔物が呼べると思う。」


 ドワーフのお墨付きももらえたから1つはこれでいいかな。もう一つは昨日ゲットした火打ち石にでもしてみるか。


「もう一つは昨日採掘した火打ち石にしようと思う。」


「火打ち石なら火炎属性の魔物が呼べると思う。戦闘力が欲しいわたしたちには理にかなった選択だと思う。」


 これもドワーフのお墨付きがもらえたのでこの2つで決まりだな。


「召喚」


 火打ち石とスキャンのスクロールを目の前に並べて召喚の魔法を発動する。昨日と同じように魔方陣に触媒にした素材が飲み込まれていく。


「あれ、昨日ほど魔力を持っていかれた感じがしないな。


 昨日はこの辺で立っていられなくなったが今日は大丈夫そうだ。


「それは昨日召喚したのがわたしだったから。ドワーフはコストも大きい。」


 ドワーフが淡々と胸をはる。今回はドワーフほどの魔物じゃ無いってことか。


「コン。」


 魔方陣から光が消えて現れたのは小さなキツネだった


「結構当たり。火狐は珍しい。」


 ドワーフも満足の召喚だったようだ。俺はすぐにライブラリーから『魔物図鑑』を取り出しチェックする。


『火狐:炎を吐くキツネ。人に化けたりすることもある。


 <火狐>


 Lv1:{狐火}〔夜目〕


{狐火}:対象の視界に狐火を出して誘導する。』


 火を吐くキツネか。字面だけ見たら物騒だがこの子はどう見てもまだ子供だ。ぬいぐるみみたいでかわいい。とりあえず撫でてみたら、手に頭をこすりつけてきた。何これめちゃくちゃかわいい。1日愛でていれそうだ。


「かわいいですね。」


 なんかドワーフもかわいさの虜になっている。なんで動物の子供ってこんなに愛らしいのかね。この子魔物だけど。


 しばらく愛でたあと名残惜しいがこの子のためにもごはんにありつかないといけないのでドワーフとやることを話し合う。


「とりあえず食べ物の確保は必須だよね。」


「はい、あとは飲み水もですね。汲んでこれなくても場所だけは把握しとかないと。」


 ドワーフの言葉にうなずく。


「他にいるものはあるか?」


 俺の質問にドワーフは火狐を撫でながら少し考えて


「一瞬火を使うだけならこの子でなんとかなりますけど肉とか焼いたりするならやはり薪は必要だと思う。あと、鉱山を掘るためにも加工できるくらいのサイズの木があるといいかも。」


 と答えた。


「じゃあ、今日の目標はそれだね。」


 目標が決まれば話は早い。


「じゃあ、最初はわたしとこの子で辺りを少し索敵するから大丈夫そうならマスターも出てきて。」


 主である俺の安全は最優先だけど今は少しでも人手が欲しいということで2人が先に出て魔物を見つけたら始末しクリアリングが終わったエリアで俺が薪などを集めることになった。


「わたしたちも戦闘スキルはほとんど無いから不意打ちでしか倒せないけど狐火をうまく使えば野生の魔物くらいなんとかなるはず。」


 とドワーフが言っていたので俺はそれを信じることにした。








 ダンジョンの入り口から辺りを見渡したドワーフたちは火狐が先に移動して何もいなければドワーフも進むという作業を繰り返している。そして、ダンジョンの入り口から見える範囲に敵がいないことを確認して俺も外に出ることになった。


 俺はとりあえず入り口の近くからたくさん落ちている木の枝を回収していく。俺は戦闘に参加しても足手まといにしかならないらしいので戦闘は任せることにした。なるべく太いやつを中心に集め、ある程度溜まったらダンジョンに戻るということを繰り返す。ドワーフたちを探すとだいぶ遠くで何かやっている。どうやら得物を見つけたようだ。


「ただいま。」


 それからしばらくして、黒焦げになったイノシシを持ってドワーフたちが帰ってきた。ドワーフたちは泥だらけでとても疲れた表情をしている。


「イノシシを狩ったのか。お疲れ様。朝から何も食べてないしとりあえず飯にしようか。」


 ついでに泥だらけの理由を聞こう。




「想定外。火狐の炎じゃイノシシを倒すのに時間がかかる。小槌で叩いた方が速いレベル。」


 食事をしながら聞いたらドワーフからそんな言葉が返ってきた。『狐火』は幻惑魔法なのでダメージは期待できないし、火狐が能力無しで吐ける炎は1秒にも満たない時間しか吐き続けられないので大きなダメージソースにならないようだ。それでもいないよりはよっぽど効率よくダメージが与えられるらしいが。


「俺も手伝った方がいいか?」


「ダメ。今のわたしたちじゃマスターを守れない。」


 どうやらドワーフと火狐にとって俺は護衛対象らしいので戦闘に参加されると戦闘に集中できないようだ。結局、火狐が狐火で注意を引いてる間にそっと近づいてボコるという戦術でもう少し頑張ってもらうことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る