第2話 召喚
次は魔物の召喚だ。魔物が存在する世界で俺は戦闘能力を持たない。つまり、自分の身を守ってくれる魔物が必要だ。
触媒を用意するといいんだっけ?なんかいい物無いかなとカバンを漁ってみる。
「辞書はなんかの役に立つかもしれないし初手で失う物じゃ無いだろう。あとはタブレットとモバイルバッテリーと今日持って行くつもりだった上履きに入れっぱなしにしていた電卓か。上履きはともかく電卓って触媒になるんだろうか?」
時間はありそうだし試してみよう。上履きと電卓を目の前に置いて召喚の魔法を発動する。
「召喚」
上履きと電卓が魔方陣に沈み魔方陣が光輝く。体からどっと力が抜けて立てなくなる。
「おっと。」
片膝をついて倒れるのは免れたがこれが魔力を持っていかれるという感覚だろうか。立てないくらい魔力を持っていったのだから強い魔物に来て欲しいがこの世界の基準がわからないのでなんとも言えない。とてつもない疲労感に襲われて立つことも難しいので座って召喚が終わるのを待つ。
やがて、魔方陣は光輝き光が集まって人型を作っていく。
「わたしはドワーフ。物作りに秀でた種族。」
輝きが収束し現れた少女は淡々とそう言った。
「ドワーフって魔物なの?」
ドワーフが召喚されたのを見て俺が最初に感じたのはそんな感想だった。
「失礼な。ドワーフは魔族の中でもとても優秀な部類の種族だよ。」
そんなことも知らないのかというようにドワーフの少女が怒る。
「ライブラリー」
無視されて横でドワーフが群れているが無視する。『上宮創太の書』にドワーフについての記載が無かったので他に本があるんじゃ無いかと思い、書庫を起動する。そうすると本が一冊入っていた。表紙を見ると『魔物図鑑』と書いてある。
『魔族:魔物の中でも人間と同等以上の知能を持ち、言葉を話す種族。』
どうやらこの世界には亜人というくくりは無く、全て魔族としてカウントされるようだ。
『ドワーフ:物作りに優れた魔族。特に鍛冶に関する能力は優秀であり、職人として重宝される
<小人の職人>
ドワーフを支援する能力
Lv1:<鍛冶師>〔火炎耐性〕
<鍛冶師>
鍛冶を支援する能力
Lv1:〔工房作成〕{小槌作成}
〔工房作成〕:溶鉱炉を作成するスキル』
ドワーフが鍛冶の種族って認識は間違ってないようだ。しかし、ボディーガードを求めて召喚したのにドワーフってどれくらい戦闘できるんだ?戦闘スキルほぼ無さそうだけど。
「なあ、ドワーフってどれくらい戦える?」
いきなり話を振られてドワーフが一瞬びくっとする。
「力は強い部類に入る種族なので武器さえあれば普通に戦えますよ。戦闘するなら前衛のほうが得意だね。」
「いや、ダンジョンも今作ったばっかりだし俺もここにきてすぐだから武器も防具もないし味方もいない俺と2人だけだ。ついでにいえば俺はロクな戦闘スキルを持たない」
なんか仲間がいる前提で話しているのでそちらの勘違いも正しておく。
「は?最初に召喚した魔物がドワーフってこと?」
ドワーフが信じられないことを聞いたような表情をしている。
「ドワーフとは武器や防具を触媒にしてそれでも召喚できる確率が低い種族のはずだよ。武器や防具は一通り装備してさらに余剰分を触媒にするのがセオリーだし、武器も防具も無いなんてそれでどうしてわたしが召喚できてしまうの?」
ドワーフがだいぶ困惑している。
「上履きと電卓で召喚できちゃったからなぁ。」
どうしてできたと言われても何故かできてしまったからそう言うしかない。
「うわ...でん...なんなのそれ?」
「あー、ちょっと変わった靴と計算機。異世界のアイテムだ」
なんて言えばいいか一瞬考えたが本当のことを伝える。
「計算機の価値を理解できるのは魔族のみだし、その中で興味を示すとなると知識欲が旺盛な一部の物好きと道具には弱いドワーフだけだしどんな知識欲があっても他の魔族は靴では召喚できないか。」
なんか1人で納得したらしい。
「質問に答える。一応、わたしは小槌を作れるけど戦闘では素手よりマシくらいと思う。しばらく時間をくれれば溶鉱炉を作るから鉄さえあれば武器が作れるようになるけど、炉を作っても鉄を用意するのすら難しいよね?」
即答で頷く。
「そうすると追加で魔物を呼んでもらわないとわたしではあなたを守り切れない可能性が高い。」
まあ、そんな気はしてたよ。
「俺さっきの召喚で魔力ほとんど使い切ったっぽいんだけどどれくらいで回復するかな?」
「1日寝れば朝までには回復してると思うからそしたら何か呼び出しましょう。」
まあそれが妥当だよね。困った俺はなんとなく『上宮創太の書』を読み返す。
『ダンジョンマスター:実積を解除することでダンジョン内でできることが増える
解除した実積:魔族の召喚(報酬:部屋上限+1,エリア追加〔鉱山、牢獄〕)』
なんかエリアの種類増えてるんだけど。俺は急いでダンジョンコアを操作して入口の隣に鉱山を設置する。
「なんか鉱山作れたわ。」
轟音がする中ドワーフに報告したら驚いた顔をしている。
「鉄が取れればいいんですけどできたばかりのダンジョンの鉱山って埋蔵量もたいしたことないから期待しない方がいいよ。」
口ではこう言っているが目が輝いているので掘る気満々だ。
「小槌一個くれない?」
すぐに素手じゃ掘れないことに気がついた俺はドワーフに小槌を要求。ドワーフはこちらを振り返ること無く生成してこちらに放ってきた。扱い雑すぎない?
結局、鉱山からはほとんど何も出てこなかった。火打ち石が少し手に入ったくらいだ。まあできたばかりのダンジョンから取れるものなんてたかが知れてるよね。まあ、トンカチで当てもなく適当に叩いて何か出てきたんだからマシな方だろう。
「腹減ったな。」
雨がやんで暗くなってきたころそんなことを思った。
「食べ物あるの?」
ドワーフが聞いてくる。あれ?これやばくね。一応カバンの中に小腹が減った時用にバランス栄養食が入っているが食べ物はそれだけだ。飲み物も水筒にお茶が入っているがそれがなくなったら終わりだ。
「これしかないな。」
バランス栄養食の箱をカバンから取り出してドワーフと分け合う。
「明日から食料も調達しないと。」
「ですね。」
とりあえず危機意識は共有できた。
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