第13話 創刊号は特別価格

 週明けの月曜日。

 年洋が教室に行くと、早速天瑠ヤツがやってきた。

「トシ、週刊お姉さんの時間だ」

「お姉さんはデアゴスティ●ニかなんかなのか?」

 日花さんが作れるのなら、毎号欠かさず買いたいのだが。

「DVDコレクションかもよ」

 それなら現実味が有る。毎週日花さんの映像が見れるのなら、間違いなく定期購読するだろう。

「で、お姉さんとはどうだったんだ?」

「あー……」

 どこまで言っていいのやら。

「その反応は、何かあったな? あったんだな?」

 両肩をガッシリと掴まれた。

 もう逃げられない。

「その……お姉さんに抱きつかれた」

「なぁぁぁぁにぃ!? ヤったのか? ヤっちまったんだな? チックショー!!」

「ヤってない! ただ抱きつかれただけだから」

「それでもうらやましいよ。トシ、お前が光の彼方へ行ってしまいそうだ」

「大袈裟すぎんだろ」

 てか、光の彼方ってどこだよ。

「で、どうだった? お姉さんは」

「いやぁ……女の人って、あんなに柔らかいんだなぁって」

 まだ感触が残っているの様な気がする。

「トシ、抱かせろ! そうすれば間接抱きになる!」

「バカか! それやったら、そのケが有る二人にしか見えないだろ!」

 一部女子が大喜びだ。

「ダメか、クッソー……また来週聞かせてくれ」

「それでも聞きたいのか?」

「週刊だからな」

 天瑠が何を考えてるのか分からないが、面白がっているような感じはした。


 学校では話さない佐里さんとは、行き帰り同じになるので話す。学校で一緒にいると一部の男子(特に天瑠)が嫉妬しそうだし、うっかり名前で呼ぼうものなら、噂になるだろう。

(そんな事になったら佐里さんが可哀想だ)

 と、年洋は思っている。なので、学校では一定の距離を保っている。

 試験前で部活も休みという事もあり、亜優ちゃんともよく話すようになった。

「もう明日から中間試験だね」

「もうすぐと思っていたら、すぐでしたね」

「引越ししてきてから、初めての試験だね」

「先輩、試験は大丈夫なんですか?」

「うん。それ、亜優ちゃんが言えるような立場じゃないよね?」

「えへへ……」

 亜優ちゃんは笑ってごまかす。

「でも、今回は先輩に色々教えてもらったので、頑張れそうな気がします!」

「俺も、佐里さんに色々教えて貰ったので、いつもより点数が上がりそうな気がします」

「私も、年洋くんに教えて貰ったから、この学校で初めての試験も乗り越えられそうな気がするの。ありがとう、年洋くん」

「いやぁ、教えられる範囲でしか教えてないですよ」

「これから、最後の確認しない? 一昨日みたいなおやつは用意出来ないけど」

「無くても行きますよ!」

 当然だ。佐里さんが困っているのだから、ほっとける訳がない。

「わーい! 先輩が家に来るぅー!」

 亜優ちゃんは全身で喜びを表現していた。そんなに嬉しかったのか?

 と思うと、今度は年洋の左腕に抱きついてきた。

「それじゃあ行きましょ、先輩!」

 と、抱きついた年洋の腕を引っ張っていく。

 亜優ちゃんにはすごく懐かれている気がする。日花さんといい、距離が近すぎないだろうか。きっと二人は似ているのだろう。


 日花さんに見た目が似ている佐里さん。

 日花さんに性格が似ている亜優ちゃん。


(やはり本当に血の繋がった母娘おやこなのか……?)


 佐里さんや亜優ちゃんには聞けない。

 日花さんには逢えて気に入られたようだが、年洋の疑問が深まっただけだった。

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