第41話 インフェルノ大帝国!不完全復活!
賭博神は、自らの手で、自分の信者を抹殺してしまった。
「「「「あーあ!やっちゃったよ!私達は、人間達には手を下していないのにぃ!知ーらない!キャハハハハ!!」」」」
まぁ、正論ではある。
怒りに任せて、クレーター内にいる民衆を抹殺したのは、賭博神自身。
これを持って、この大陸に住む賭博神の信者、並びに、ギャンブルに興じていた依存症者はすべて排除された事になる。
一番の信者であった者は、賭博神自らの手で葬ったのである。
さて、ここからは俺の仕事だ。
「クッ!汚いぞ!」
「いやぁ、怒りに任せて信者を殺したのはお前だし?…ニヤリ」
「そ、それは…」
後悔先に立たず…いくら言い訳をしたところで、やらかした事は元には戻らない。
謝って済む話であるなら、元には戻らなくても、やり直しはきく。
だが、死んだ者は、普通、生き返りはしない。
「ギャンブルをしている奴らは死んでいった!お前の1番近しい信者共は、お前自ら殺してしまった…これで、お前を神として崇めていた者は、すべていなくなったと言っても良い!」
「何が言いたい?」
「気づかないのか?」
「何をだ?」
「悪魔は悪意を…神は信仰と供物を…それを持って、自身の力の糧とする。違うか?」
「だから何だと言うのだ!」
まだ気づいていない。
まだ、自分は神だと…神を名乗るに相応しい人間だと思い込んでいる。
(神を名乗る転生者は、自身の欲望のために、貴重なチート能力を使っている奴らばかりだと思っても良さそうだな…)
最下級であろう賭博神を見ていれば、人間の欲深さが良くわかる。
前世で抑圧されていた感情が、異世界に来て、ハメを外した結果が、『神名乗り』なのだろう。
供物を求めるあたり、碌な奴ではない。
悪魔をどうにかしようとしているわけでもない。
民衆に平和をもたらすわけでもない。
ただひたすらに、自身の欲求を満たすためだけに民衆を拐かし、国民が苦労しようが対偶がどうなろうが、知った事ではない。
これが、この世界の神達…ゲップ
考えれば考えるだけ、胸焼けがしてくる。
そんなのを、あと44人も相手にしなくてはいけないのだ。
はぁぁぁぁー………。
俺は、思いっきりため息をついた。
☆☆☆
「お前、自分の魔力枯渇に気づいてないのか?」
「は?」
「お前…今、地上に降りてるだろ?」
「あ!」
「はぁぁぁぁ…」
やっと気づいたのか…。
「お前は転生者…転生者特典を、ギャンブルに極振りした、賭博ジャンキー…違うか?」
「さ、さぁ?何の事だかわからんな」
賭博神は、あくまでシラを切る。
だが、滝のように流れる汗が、その真相は正しい事だと証明している。
もはや、ポーカーフェイスも、イカサマも出来ないぐらい弱っているのがわかる。
つまり賭博神は、今や、ただのギャンブル好きなにーちゃんに成り下がっているのである。
「こうなったら、すべてを覆して、神に返り咲いてやるわ!最後の勝負だ!」
「………」
「この勝負!受けるか受けないか!答えろ!」
「………」
「俺が勝ったら信者を生き返らせろ!俺が負けたら、命はくれてやる!」
「………」
「勝負内容は、タイマン勝負だ!いいな?」
「………」
賭博神は、自分で盛り上がり、自分でルールを設け、自分で勝負内容まで決めてしまった。
パタッ…。
ギャンブルをした者には死を…。
神がかった能力があった賭博神は、今やただのギャンブル好きにーちゃん。
当然、サオリがかけた呪いの対象となる。
だから俺は、あえて黙ってやり過ごしたのだ。
結果が見えていたから…。
ギャンブルは、ルールに基づいてやる分には、単なる娯楽である。
借金をしてまでギャンブルに興じたり、人の金に手をつけてギャンブルにのめり込んだりするのは娯楽とは言わない。
『過ぎたるは猶及ばざるが如し』
とは良く言ったものだ。
先人の残した教訓は、案外、奥が深い。
何?たまにはいい事を言う?
たまにはは余計だ!バカ!
☆☆☆
(さてと…)
死んだ賭博神を、無造作に掴み、クレーターの中に放り込んだ。
何?もっと面白おかしく倒されるかと思っただと?
それには、激しく同意だ!
正直、守護神達の煽りまでが面白かったように思う。
いや、マジで!
だが!
そんな事は責任者に聞いてくれ!
今頃、その責任者も、『あれ?こんなはずじゃ…』と、目を丸くしている事だろう。
こんなにアッサリと、何の見どころもなく賭博神を殺すとか、やる気あんのか!ってなる。
まぁ、責任者自身も『何故こうなった!』と驚いている事だろう。
まぁ、過ぎてしまった事は仕方がない。
この国で、やるべき事はまだあるのだ。
それを優先させるのが、俺の役目。
悪魔は排除した。
神を名乗る転生者は葬った。
信仰対象は、龍神および、その巫女たる王妃に変更されている。
不穏分子も、賭博神が自ら葬ってしまった。
ここまでくれば、あとひと仕事で『ギャンブル大国エキサイト』という国名は消えてなくなるはずだ。
その、あとひと仕事とは…それは、国民をあるべき職業に戻してやる事だ。
だが、そのまま職業を戻すだけでいいのだろうか…答えは否だ!
何故なら、ジョブチェンジをした事で、新たに発見できた人材もいたからだ。
農民→王族、貴族
↓
農地改革が進められた。
商人→農業
↓
売れ筋の顧客を獲得した
科学者→商業
↓
売れる物を開発した
冒険者→研究
↓
生体調査に尽力した
王族、貴族→冒険者、ギルド管理
↓
王妃、王女達は、帝国騎士団を駆使して、国民の安全と、食料を確保した。
腐っても本職、いくら職業を変えたとしても、やるべき事はやっていた…という事だ。
そんな人材を、眠らせておくのはもったいない。
将来、必ず国の発展に役立つ。
ちなみに、解体をしていた王子は、そのままにする予定だ。
死ぬまで解体に準じてもらおう。
それなら、魔物を買い取るだけで、解体込み、素材込みの料金を払う必要もなくなる。
役に立っていた人材は、神託と称して、王妃から指名してもらうとして、とりあえずは正規の職業に戻ってもらおう!
俺は、天に向かって両手をかざし、簡易詠唱を行う。
「あるべき姿に戻れ!!ジョブ変換!!」
あとは…。
「神託作成!龍神より!!…よし!!神託転送完了!ふぅ…」
「あのぉ…ご主人様?」
「ん?これで、この国は正常になったと思うが?」
「そこはお見事でした。しかし、問題は、龍神様の名を勝手に使ったのは不味かったのでは?と愚考いたします」
「あ!」
サオリの言葉に、ある事を思い出した。
『ニャンニャンカウンター』の存在だ!
「ヤバいな…」
嫌な予感がして、そっとカウンターを覗き込む。
【ニャンニャンカウンター】
貢献度指数
水神 50
炎神 100
龍神 3000
【龍神】計3150
雷神 100
【獣神】計100
土神 1500
【樹神】計1500
闇神 2500
光神 100
風神 1000
【精霊神】計3600
特別枠 1000
【総合計】9350
嫌な予感はあたり、龍神本人の貢献度まで追加されていて、総合計がどえらい数字になっている。
9000超えって…これ、ハーレム展開じゃないよね?
拷問だよね?エグくね??
つーか、俺はまた、やらかして、自爆してしまったようだ。
まぁ、何にせよ、この国は救われた。
ジョブチェンジにより、各職業に新しい風も取り入れる事もできた。
王妃も王女も、これからは国を盛り立てて行ってくれるだろう。
これでヨシとしよう…。
『よくやった!では、恒例の精算といこうではないか』
出ました!唯一神からのいきなり念話!
「……はいはい」
『何じゃ?せっかくチュートリアルをクリアしたのに、テンションが低いのう』
「え?ちょ!チュートリアル『転移!』って…」
出たよ!人の言葉を最後まで聞かないでやりたいようにやる性格!
聞きたい事もあるし、王妃に挨拶ぐらいはして起きたかった。
インフェルノという家名だって気になる!
それをすべて反故にし、俺は唯一神に強制的に転移させられ、インフェルノ大帝国を後にした。
笑顔で見送る守護神達のニヤけた顔が印象的だった。
☆☆☆
「きゃー!なんで私の石像が立ってるの?何で龍神様じゃないの?」
by王妃
「神殿には、龍神様が祀られております」
by第一王女
「神殿以外の石像が私になってるのは?」
by王妃
「お母様が、龍神の巫女だからではないでしょうか?今まで、辛い立場でありながら、国を支えてきたのはお母様です。自信を持って、みんなから祀られましょう…ね?」
by第二王女
「でも…でも…何で、ジャージ姿なのよぉーー!!」
王妃の叫びは、天空に虚しく響くのだった。
いや…俺、王妃のジャージ姿しか見た事なかったし…てへ☆
チャートリアル編 完
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