第39話 ギャンブル大国は崩壊寸前ですが何か?

「それじゃあ、願いをひとつ言うぞ?これは絶対のルールだ!いいな?」

「わかっている!好きにするがいい!気に入らなかったら、後でどうにでも変更できる!」

自信満々な賭博神。


「なら、また賭けをしよう。後で変更できたらお前の勝ち、変更できなかったらお前の負け。俺が負けたら、お前の配下になって、大陸全土に賭博神の力を見せつけてやる。どうだ?」

まぁ、そんな事にはならないけどなっ!


「ふん!いいだろう!その言葉!忘れるなよ!」ニヤリ

賭博神は、的な顔で笑う。

よほど自信があるのだろう。


「お前、人のギャンブルに対する執着心を魔力に変えてるだろ?」


ギクッ!


「さ、さぁ…何の事かな?」

「まぁいいけどさ」

これだけ顔に出るやつが、賭博神?

前世では、相当にされてきたんだろうな…ま、同情はしないけど…。


「じゃあ行くぞ!これが俺の願いだ!」

俺の声が、大陸全土に響き渡るように大気を調整する。


大陸全土だと、俺の能力は制御しなくても効果は発揮できるようだ。


(これでチェックメイトだ!)


『これより、現時刻を持って、全大陸に住む人々の中に、現在、元帝国の王妃であるマリナ皇帝に反旗を翻している奴!敵意を持っている奴!敬意を払ってない奴は、すべてに転送される!!』

この言葉に、即反応したのは、当人である王妃本人だ!


『貴方は、私の名を語って、何をしようとしているのですか?!』

これまた、王妃の声は大陸全土に響き渡る。


現在、俺と王妃の会話は、大陸全土に響き渡っている事になる。


『掃除だよ、掃除』

『掃除??』


『お前も、大陸にいる反乱分子は排除したいだろ?』

『いや、まぁ、この大陸に住む人々以外にも、王族に不満を抱いている輩はいるとは思いますが…』

『不穏分子は、サクッと殺した方がいいよ…この際』


『ちょ!私はそんな事、望んでいません!民を何だと思っているのですか!民は国の宝です!ギャンブルに身を染めた人だって、賭博神がいなくなれば、改心してくれるはずです!』

『それはどうかな?俺なら迷わず殺すがな!』

『そんな事をしたら、私が許しません!国の民は私が守ります!』


『うおー!!』

この声は、大陸中の、王妃を慕う国民達の大歓声。

俺が音声調整をしなくても、大陸全土に響き渡っている。


よほど、賭博神のギャンブルによる被害が酷いせいだろう。


そして、おそらくは今の会話で、王妃の性格は全国民に知れ渡ったはず。


(さて、仕上げだな…)


☆☆☆


「お前は何を言っている!俺は神だぞ!神に逆らうのか!」

「いや、お前、転生者だろ?を語る愚かな転生者だ!違うか?」

賭博神は、あくまで自分を神だと、崇めるべき存在だと主張をする。


シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!


そうこうしているうちに、俺が『墓標』だと定めた場所に人が転送されてくる。

神殿長、神官長、賭博神を崇めるギャンブル依存症者、様々な人々が次々と転送されてくる。


そう、俺が墓標と定めた場所は、賭博神が自らの力で大きなクレーターにした場所だ。

いくら人が転送されてきても、大抵の人数は入ってしまうぐらいの…。


シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!


「お、お前達は…」

流石の賭博神も、驚きを隠せない。


「賭博神様!これはいったい…あの者は何者ですか?」

「大した事ではないし、大した奴でもない!すぐに排除して、お前達を解放してやるから安心するが良い!」

クレーターの上から、神々しく光を放ち、集められた信者に威厳を示す賭博神。


ぶっちゃけ、神々しい光は、ただの魔力で作っただ。

何の力もない。

むしろ、魔力を使っている分、賭博神の魔力量は減っている。


「ほう、自分のはそんなに大事か!」

「当たり前だ!お、お前ら!私を崇めよ!ギャンブルに勝ちたくば、俺に力を注ぎこめ!」

「「「「かしこまりました!」」」」


クレーターに転送されてきた信者達は、賭博神に跪き、祈りを捧げる。


「「「大いなる賭博神様!勝負に完勝を!」

「「「勝負に完勝を!」」」

「働いたら負け!」

「「「働いたら負け!」」」

神殿長の言葉に従って、復唱する信者達。


「………」

何、この茶番…。


笑いを通り越して、ドン引きなんだが?

なんだが?


☆☆☆


「そうだ!私を崇めよ!その願いがお主らの勝率を上げるだろう!!」

ウソつけ!とツッコミたかったが、しばらくは、この茶番を見守るしかない。


クレーターに集められた信者のギャグにしか聞こえない言葉に、力が込められていたからだ。


間違いない!崇められる事で、信仰心を魔力に変換し、自分の力にしている。


これが、天界に巣食う神を名乗る転生者達の力の源であるなら、少し面倒になるかもしれない。


こいつは、魔王、勇者同様、45番目、おそらくは、最下位の神。


魔王にしろ勇者にしろ神にしろ、上位になるほど頭も良くなり、力も強くなっていくだろう。


単純に考えて、あと44人。

今後俺は、こんなアホらしい設定に付き合わなければならないのだ。

魔王44人、勇者44人、神44人…。


しかも、各総勢が最大45という確証もない。

王妃曰く、世界各地の国に、それぞれ魔王と勇者がいるという。


賭博神、こいつは45云々とは、まだ言っていない。

だが、この大陸…ひとつの国にいたのだ。

エセ神も45人いてもおかしくはない。


そえなると、魔王、勇者、神総勢135人。


(ってなるんかい!だっるうーー!!)


☆☆☆


ただ今、賭博神は信者から力を吸っている最中。

賭博神の魔力が上がっていく。

だが、膨大な魔力ではない。

クレーターに集められた、数十人からしか魔力を吸えていないからだ。


「何故だ!お前達!信仰心が足りないのではないか?そんなんでは、勝率は上がりはせぬぞ!」

焦る賭博神!


「信者はお前達だけではあるまい!神殿、私を祀る石像、金運を上げるツボ、金運を上げる数珠!すべてに思いを込めれば、金運は上がり、そのギャンブルに興じる思いが…獲得した金、商品の8割が私への供物となるのだ!奴らは何をしておる!」

いやぁ、熱く語るねー!

必死だねー!

ってか、8割もぶんどってんの?


クズだな…こいつ!


ギャンブルへの思いや、勝った対象の8割が供物になるなら、ギャンブルに依存してないと天罰…負けが混むように操作しているって事だ。

8割を供物にしてるなら、相当、のめり込まないと、自分はウハウハになれない。


だから、みんなはギャンブルにのめり込む。

ギャンブル廃人に成り果てた人間の思考こそ、賭博神の力の源。


(クズすぎる)


そこで、神殿長(重度のギャンブル依存症)が、一歩前へ出て、平伏しながら賭博神に進言をする。


「実は、賭博神様がこちらに向かわれてから、大陸にある賭博神殿、賭博神様の石像が、すり替えられているのです!」

「な、なんだと?何にすり替えられているんだ!!」

「賭博神殿は龍神殿に、石像はマリナ王妃にすり替えられています!」

「誰だ!そんな事をする奴は!相当な数の神殿と石像があったはずだが?」


(すり替えたんじゃねー!作り直したんだ!)


ザワザワザワザワ…。


「しかも、あらゆる場所で、謎の死を遂げている者も続出しており…」

「どんな奴らだ?」

「賭け事をしている者、すべてにございます」

「は?」

目を丸くする賭博神。


「私、聞きました!耳元で囁く悪魔の囁きを!」

「悪魔の囁きだと?」

「はい!内容はこんな感じです」


『今から10年…ギャンブル、賭け事をした者には死を…』

これは、俺がサオリに頼んでおいた呪い。


進言したのは、神殿には仕えていないが、相当なギャンブル好きの国民。

思いっきりビビっている。


つか、サオリ、悪魔にされちゃってるけど、いいの?

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