第38話 賭博神は案外チョロかったの巻

「茶番は終わりだ!俺に喧嘩を売った愚かさを思い知らせてやる!」

お?お笑いモードから抜け出したな…面白くない(本音)


「で?『控えおろう神』は何をしたいんだ?」

「誰が『控えおろう神』だっ!俺は「控えおろう神…プッ」だ!…じゃねー!人の話に割り込んで来るんじゃねーよ!!」

「なんだよ?せっかく代弁してやったのにぃ」

「そんなもんいらぬわ!」

「つーかよー!そろそろ地上に降りてこいよ!俺に失礼だろ?」

ここでダメ押し、『俺はお前より偉い』アピールをしてみる。


「フッフッフ!たかだか人間と同じ土俵に降りるつもりはないな!」

「お前も人間じゃん!転生者だろ?税金パラサイト系の!」

「何が言いたい?」

「働いたら負け…」ボソッ…。


ギクッ!


「からのー」

「??」

「鑑定!」

「お前は鑑定持ちか!」

ん?何を驚いている?


「あぁ、通常の鑑定とは違うけどな…」

「鑑定に通常も異常もあるか!やはり、俺を舐めてんのか?」

「そんな事ないぜ?鈴木太郎君?」


ギクッ!


「な、何故それを!」

「いやぁ、能力を解放すると、鑑定もバグるんだよ…注意しろと、忠告もされている」

「な!まさか!」

「おぅ!今のステータスを飛び越えて、前世のステータスも読めてたりする…読み上げようか?」ニヤリ

賭博神から、ものすごい汗が溢れて来る。


ふむ。

まぁ、前世が、隠したくなるのも、今世で、こんなを繰り返しているのも、すべてはだ。


「とりあえずよぉー!降りてこい!」


クイッ!

俺は、賭博神に指を指し、指を地面に向ける。


グィン!

「うお!」


グシャッ!!


ようやく、賭博神は地上に降りてきた。

いや、落ちてきた。

ギャグ漫画に良くある、地面に埋め込まれた感じのシチュエーションだ。


ウケる!


☆☆☆


だが、俺の攻撃は止まらない。


「土魔法!盛り土生成!」


お尻ぺんぺん!お尻ぺんぺん!お尻ぺんぺん!お尻ぺんぺん!


俺の詠唱と共に、賭博神が落ちて開いた穴に、土で作られたが入っていき、盛り土をする。


ぺんぺん。

これは、俺が盛り土を叩いて慣らしている音だ。


ややこしくて悪いな!プッ!


ステータスから得た情報で、賭博神の勝率は100%。

イカサマバレ率0%。


とんだ転生者特典のチート能力だ!

ギャンブル依存症には、何のというのを除けば…だ。


イカサマというキーワードから、まともに転生人生を送るつもりがないというのがよく分かる。


勝率が100%で、イカサマもバレない。

つまり、勝つか負けるかの勝負を、元々やる気がないのだ。


では、何故『賭博神』を名乗るのか…。

答えは簡単だ。


勝ち続ける事でを味わいたいだけ。

を味わうのは民衆、もしくは、賭博神に挑戦した奴だけ。


そして、自分は勝ち、相手が負ける。


どんな賭けの対象でさえも、自由にできる。

もちろん、負けた側は、それに応じなければならない。

一応、相手は勝負をして負けたのだから。


はっきり言ってクソである。


これは予想だが、そうして地位を築き、信者を集めて『こうすれば勝ちますよ』とかなんとか言って、民衆を煽る。


民衆は、ギャンブルにのめり込み、すべてをギャンブルで決める流れとなって国は破綻する。

それが、今のギャンブル大国エキサイトの現状である。


これはあくまで俺の予想の範疇なのだが、当たらずも遠からず…って気がしないでもない。


なんせ、今の現状は、龍神の巫女である王妃が負けたという事の証明でもあるからだ。


そんな事を考えながら、その辺に落ちている板っきれを拾い、『控えおろう神、安らかに眠れ』と書いて、に立ててやった。


俺ってば、やさしー!!


☆☆☆


それから俺は、魔法を大陸全土に向けて発動した。

主に、土魔法だ。


そして、全国民には、サオリの能力を使い、呪いをかける。

全国民の耳に囁くような

これは、サオリが直接、手を下して行使したらしい。


呪いは闇属性…最凶感が半端ねー!!

サオリの性格も含めて…おっと、これは内緒だ。


サオリ…絶対に敵に回してはならない神だ…これ。


「さてと…は整った」

俺は、賭博神の『墓標(草)』に手をかざし、軽く圧力をかける。


イメージは、重力操作だ。

おおよそ、10トンほどの重い物を乗せた感じだと思ってもらえればいい。


何故、回りくどく、こんな事をしているかというと…それはもちろん!






嫌がらせである!

なんてな!


うそうそw


こっちがほんと

俺の想像が正しければ、賭博神は、この状況からでも這い上がってくるだけの力がある。


仮にも、神を名乗っているのだ。

流石に勝率100%、イカサマバレ率0%だけでは、神は名乗れまい。


ギャンブルで、職業をシャッフルするなんて芸当もできるはずがない。


ならば、その力はどこから来ているのか…答えは簡単だ。

エセ神の力は信仰心。

信じるものは救われる…的な謳い文句のだ。


ゴゴゴゴゴゴォォォォ…。


『ウォォォーー!!』


ほらね。

墓標の下から、地鳴りと共に、賭博神、鈴木太郎君の声が聞こえてくる。


バッゴォォーーン!!


天にも届くかのような、ものすごいオーラと共に、地面は抉れ、怒り心頭の賭博神が姿を現す。


「おのれぇ…!貴様だけは許さん!!」

ゴゴゴゴゴゴォォォォ…。


さしずめ、地獄の底から這い上がってきた巨大な生物のような光景である。


相当な魔力がなければ、こうはならない。


勇者が閉じ込められている鉱山以外の周辺に、大きなクレーターができている。


うんうん。

予定通り!


☆☆☆


「お前は、この大陸のことわりを汚した!この大陸は、すべてギャンブルで成り立っているのだ!」

「知ってるよ。だから、みんなの職業がおかしな事になっているんだろ?」

「そうだ!お前は、ギャンブルをしないで俺を地面に叩きつけた!この大陸で、そんな蛮行が許されるはずはない!!」


まぁ?確かに?

それが大陸の、ルールなんだから仕方がないんだけどな…。


「お前、俺と勝負して負けたのが、そんなに悔しいのか?」

「勝負だと?俺がいつ?出まかせを言うな!」

「いやいや、思い出せよ」

俺は、懇切丁寧に説明をしてやった。


降りてこい by俺

降りない by賭博神

降ろせたら俺の勝ち、降りてこなかったら賭博神の勝ちという勝負が成立

賭博神は降りてきた

(正確には落ちてきた)

勝負は俺の勝ち


「な?」

「そ、そんなもの無効だ!!」

「俺の言葉に反応した時点で、勝負は成立している!それがなんだろ?勝負したくなきゃ、何で俺の言葉を無視出来なかった?お前は、お前の意思で勝負に乗ったんだよ!」ピシッ!

俺は、賭博神を指差し、半ば強引な言い訳で、ギャンブルを正当化した。

いわゆる、理論武装というやつである。


俺の言葉に賭博神は、顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせている。


(案外チョロい)

が、笑いを堪えるのが結構辛い…フッ。

真面目な顔で言わないと、効果が薄くなるからだ。


「でた!勝負に勝った俺は、ひとつ願いを叶える事ができるわけだ」

「何故そうなる!いつ、そんな約束をした!認めぬぞ!」

「あー!負けておいて、そんな事を言うんだ?最初に決めなかったお前が悪いのに…へー!賭博神って、自分のルールを守らないんだぁ?」

ちょっと苦しいか?これは…。


「くっ!で、なんだ?願いとは!」


ありゃ、通じたよ…ウケる!

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