第33話 勝負の行方とツナギの刺繍効果

ドヤ顔で仁王立ちになっている王妃。


もはや、どこからツッコんでいいのやら、全くわからない。


「何…この状況…」


王妃の登場と共に、先程まで漂っていた緊張感が吹き飛んでしまった。


(もしかして、天然??)


「………」

仁王立ちになっている王妃。

俺達は、言葉を失って棒立ちになっていたが、王妃もまた、唖然とした顔で棒立ちになっていた。


じぃぃー…。


目と目が合う俺と王妃。

方や、ブーツを脱いでツナギをパタパタさせている俺。

方や、コスプレで仁王立ちしている王妃。


王妃は汗ダラダラ、俺はパッツンパッツンの体操服に密着した豊満な胸に釘付け、からの、プルマのエロスにやられている。


「きゃー!何でブレスが効いてないのよぉーー!!やだ!見ないで!!」

今更感はあるが、ようやく我に返った王妃が、体を隠すようにしゃがみこんだ。


「で、でもね!貴方の魔法とスキルは封じてあるから、私を脱がそうてしたって無理なんだからねっ!!」

思ってない思ってない。


やはり、先程の『オール•キャンセラー』は、対象の魔法とスキルをキャンセルするスキルらしい。


つか、いきなりキャラが変わったし。


「ニヤリ」

俺は、王妃に向かってわっるい顔でにじり寄って行く。


「や、やめて!お願い…許して…」

こらこら!

それじゃ、まるでAVのシチュエーションだよ!


もう、そこは無視だ!


俺は、王妃の前に立つと、涙目になっている王妃を無視して、頭上を見上げた。


魔法とスキルは封じられている。

だが、それだけだ。


ドラゴンブレスも効かなかった。

唯一、土竜のブレスによる、ツナギの中で砂がシャラシャラ…で不快にさせられたぐらいだ。

土砂ブレス侮りがたし!


いや、今はそれが論点ではない。


魔法やスキルは封じられているが、運動能力までは封じられていない…という事だ。


攻撃をされた時は、確信がなかったので回避したが、今ならはっきりとわかる。


天空に漂う火の玉を、俺の体ひとつで破壊できる事を。


俺は、屈伸をして勢いをつけ、火の玉に向かって飛んだ。


ドン!!

ヒュッー!!


ズッバァァァーーン!!


俺が目標に飛び込んだ瞬間、どデカい花火が咲き誇るように、巨大な火の玉は飛散していった。


「な!!」


王妃よ…お前も、繁殖魔王と同じレベルか…。


☆☆☆


「私の負けよ…1000km勝負で負けたから、最初から本気を出していたのに…ドラゴンブレスが効かなかった時点で、獄炎球も効かないとは思って居たけど、まさか、その身ひとつで破壊しちゃうなんてね…」

ため息をつきながら、王妃はあっさりと負けを認めた。


ドラゴン達はレイナとマオを残して消えていく。

レイナとマオは、メイド姿で王妃に寄り添っている。


「貴女達、ずいぶん可愛い服装なのね」

「「ご主人様のご趣味なので」」

まて!それは間違いじゃないが、正解でもないぞ?

俺が指定したわけじゃない!


「そうなのね…」

違う違う!


王妃は、諦めたように、俺に手をかざし、再び『オール•キャンセラー』を発動させた。


キャンセルをキャンセルする。

一見、ややこしく感じるが、要は、俺の魔法もスキルも元に戻ったという事だ。


「落ち着いたようなので、ご主人様には、その刺繍についてお話します」

「ん?」

「実は、色とりどりの刺繍には、それぞれの属性が付与されておりまして、条件はありますが、ノーリスクで魔法が発動されます。もちろん、キャンセルされる事はありません」

「な!!そういう事は早く言え!!」

「ご主人様が嫌がるかと思いまして…」

「嫌がるわけないだろう!魔法が使えない状態でも発動するんだろ?さっき、知っていれば、色々とやれたはず…違うか?」

「いえ、違いません」

俺とサオリの会話を、呆然と聞いているをしている王妃。


何気に、聞いている風を装って、目を盗んでジャージに着替えていた。


人が会話している隙を伺ってたって、見える物は見えてるんだぞ?

…とツッコむのはやめておいた。


何故なら、この王妃、体操服の上からジャージを着ていたのではなかったからだ。


体操服を脱いで、わざわざジャージに着替えているのだ。


(んー!実にエロい!)


下着は紫、レースをふんだんに使ったスケスケ仕様のエロ下着だ。


だが、そんな着替えシーンを見ていても、俺のは、ピクリともしない。


(あいつらとやりすぎたからか?)

と、思わなくもない。


が、この時の俺は、以前に見たスキル一覧の、『◎絶倫(神族限定)』という項目をすっかり忘れていたのだ。


このスキルによって、後に、人類から『役立たず』という不名誉な呼び名で呼ばれる事になるのだが、それを今の俺には知る由もなかった。


☆☆☆


さて、気を取り直して、王妃の胸を凝視しながら、刺繍の効果を試してみる。


背中に縫い付けてある刺繍は、

『喧嘩上等』が金色、背中。

『ぶっ殺す!』が白、右腕。

『瞬殺してやんよ!』が緑、左腕。

『かかってこいや!』が赤、右足。

『俺!最強!』が水色、左足。

『お尻ぺんぺん』が茶色、お尻。


ちなみに、黒いツナギ自体には闇属性が付与されている…との事。


(試してみるか…)

王妃とサオリ、レイナにマオが、その様子を見守っている形になっている。


注目の一撃!

「雷撃!サンダーランス!」

サオリはノーリスクだと言っていた。

つまり、格好良く詠唱しても問題はないって事だ。


バリバリバリバリィィー!!

俺の手元に、雷を纏った槍が出現する。


「とりゃ!!」


ビュン!!

『けーんーかーじょーとぉー!!』


「は?」

「「「あははは!!」」」


「風撃!ストームスラッシュ!!」


シャッシャッシャッ!!


『しゅんさつしてやんよ!しゅんさつしてやんよ!しゅんさつしてやんよ!』


「………」

「「「ギャハハ!!」」」


「何これ…」

「属性魔法はノーリスクで使えますが、音声が出るんです…クスクス」


ガーン!!


た、確かに、これは嫌だ!


使えねー!!


「あー!久しぶりに大笑いしたわぁー!」

その効果に対して、釈然としない俺をよそに、王妃にとっては、大変ご満足だったようである。


「ハァァァァーー…」

もうため息しかでない。


☆☆☆


それから程なくして、俺からの質問タイムが始まる。


まずは…。


「名前は?何でジャージなの?インフェルノの由来は?なんで龍神の加護を持ってんの?何歳?バストはいくつ?いつ死んだの?何で転生したの?何で王妃なんかやってんの?旦那は何で病んでんの?」

「セクハラで強制送還しますよ?」

俺の質問に答えたのは、サオリだった。


からの

『精算したいのかえ?』

唯一神からの念話。

「王妃よ、もっと彼を誘惑しなさい。その気になったら、こちらも助かります」

龍神らしき声。


「あー!今のは無し!ちゃんと質問するからっ!」


『『チッ!』』

ブツッ


唯一神と龍神、舌打ちしやがったよ…。

クソが!

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