第28話 雑魚い王子と女傑王女
はい!
お待たせしました!
これより解体勝負の開始でございます。
「ゲームスタート!」
と、勝負を期待にした皆さま!
残念でしたぁー!!
勝負は一瞬で決着がついたので、割愛しまーす!
医師団長 魔物 10
俺(一応) 残り全部
な?
圧勝しただろ?
俺は大した事はしてないがなぁー!
ポーカーなら、ワンペアに対してロイヤルストレートで勝ったようなもん。
宝くじなら、下一桁当選1枚に対して、1等前後賞を10組当てて勝ったようなもん。
文句は言わせない!
どうやって勝ったかって?
魔法を使って…当たり前w
「クスクス、まぁ、人間相手ならこれぐらい手加減しないと示しがつきませんからね」
「………」
これでも手加減したんだとさ。
俺がやったのは、浮遊魔法で、区分けエリアの真上に、解体前の全てを移動しただけ。
あとは、まるでパズルが崩れるように、すべての獲物が解体され、冷凍、冷蔵され、落ち際に、まるで念動力でも使って移動させたか、素材に意志があるのでは?と思うような動きで、各所に整理されていった。
所要時間、約5分。
解体に関しては、闇属性のサオリと、風属性のカナ、光属性のナナで、すべてを分担してやったとの事。
冷凍、冷蔵に関しては、水属性のレイナと炎属性のマオが担当したらしい。
人間の視界に認識できたのは、俺が浮遊魔法を使ったところまで。
後は、人間の視覚では何がどうなって、そうなったのかはわからないだろうとの事。
byサオリ
ここで知ったのは、レイナは常温から絶対零度までの温度調整が出来、マオは常温から6000度、つまり、太陽の表面温度までは上げられるという、制限付きの能力だと言う事。
そしてそれぞれの物質が気体化した時点からが、風神カナの出番らしい。
「………」
と、聞いてみて、改めて気づく。
マオ
↓
最高温度6000度(太陽の表面温度)
俺
↓
ファイヤーボール
(バスケットボールサイズ)
↓
太陽と同等サイズ
(表面温度6000度、内核層16000度)
相当鍛えない(小さく小さくのイメージ)と、各属性神の力無しでは、自分で魔法の使用すらできない…という事になる。
これ、まずくね?
やっぱり、クソじゃね?
ま、何はともあれ、勝負には勝ったので、ヨシとしよう。
これで、ようやく情報が聞ける。
「真っ白になって、四つん這いで灰になりそうな医師団長よ…やすらかに眠れ…フッフッフ」
「いえ、死んでませんから」
「………」
サオリよ…俺の優越感をぶち壊しにするんじゃねー!
☆☆☆
「お見事でした。そして、お礼を申し上げます。これで、またしばらくは国民が飢えずに済みます」ペコリ
受付嬢である王女様が、いつの間にか側に来て、頭を下げている。
「これに懲りたら、真摯に国のため、その手腕を使って下さい…では、御二方はこちらへお越し願います」
王女様は、ザマァ!というような目つきで医師団長を一瞥すると、俺達を応接室に案内してくれた。
(容赦ねーな)
これが俺の率直な感想である。
サオリと同類な気がする。
応接室に案内された俺達。
テーブルを挟み、両側にあるソファーで対峙している形となる。
スチャッ。
王女様は、俺達に腰を下ろすよう促し、自分は立ったまま、袖からスマホを出し、誰かと通話をする。
(異世界にスマホかよ!)と思ったのも束の間…。
「今、お客様がお見えになっております。今すぐ応接室に来てお茶を入れて下さい」
ブッブッ
『お姉様、お父様はいかがいたしましょう』
プップッ
「放っておきなさい」
ブッブッ
『承知いたしました。お姉様』
スチャッ。
会話が終わると、手元にあったスマホは、いつのまにか消えていた。
(手品師かよ!)
とツッコミたいところである。
いや、本題はそこじゃない!
スマホと思っていたのは、マイク兼スピーカーの、簡易通信機のようなもので、『喋る→聞く』、それだけの代物だったって事だ。
声を雷属性魔法で電気に変える
↓
電気を電波に変える
↓
音声を届ける
↓
音声を受け取る
それだけの物だ。
本来、マイクとスピーカーの構造は同じ。
やってやれない事はない。
ただ、周りに音声がダダ漏れになるってだけだ。
(容赦ねーな)
はい、本日2回目。
この王女様、ちょっと怖い。
☆☆☆
応接室に、またもや王女らしき人物がお茶を持って入ってきた。
先程、スマホから聴こえてきた声の女の子だ。
受付嬢王女、推定年齢18歳、第一王女。
お茶汲み王女、推定年齢15歳、第二王女。
第一王女の名は『メアリー•インフェルノ』
第二王女の名は『ソフィア•インフェルノ』
やはり、ファーストネームはエキサイトではないが、中々物騒な家名ではある。
だがここで、予想は一部的中する。
国名は、やはりギャンブル大国になって変更された名前だったって事だ。
俺達の働きを認められたのか、メアリーは思った以上の情報をくれた。
①王様は婿入りであり、王位は王妃にあるとの事。
②家名は王妃の名前であり、国の名前は元々『インフェルノ大帝国』だったと言う事。
③王様は、城を追い出された事で病み、床に伏せっているので、謁見はできないとの事。
加えて、謁見できても話にはならない…だそうだ。
④先程の医師団長が、元々は第一王子であったが、王妃に王族の地位を剥奪されて城を追放され、さらに侯爵→公爵→伯爵と地位を落としていったとの事。
(容赦ねーな)
3回目…まぁ気にするな。
「兄は、元々王位に興味はなく、人体実験を繰り返して医療の知識を蓄えたのです。だからお母様に勘当され、爵位も落としました。
アレは、元々マッドサイエンティストだったのです。もう、兄とは呼べません」
と、第一王女は言う。
どうりで、団長の態度が横柄だったわけだ。
そして、第一王女の当たりがきつかったはずだ。
って事は、最初の遠慮がちな態度は、俺達の目を気にしてネコを被っていた事になる。
(典型的な女系家族だな…)
と思ったのは間違いではないはず。
更に第一王女の説明は続く。
⑤ソフィアは根が優しい為、ギルドを仕切るのは難しく、第一王女であるメアリーが受付嬢がてら指示を出し、一応、王である父を看病しているとの事。
(一応って…)
⑥王妃は今、領主(地方自治体責任者)をはじめとする、元王様の腰巾着貴族、王族付き神官の教育をしているという。
⑦毎年、北の神官長から、職業を決めるギャンブルの開催が通知され、それぞれの
⑧王妃はギャンブル、格闘、剣術、魔法において百戦錬磨であり、本来なら王族に戻るのも可能だが、あえて冒険者ギルドに留まっているという。
謎すぎる。
「この国で何が起こったのか…教育とは何か…お母様が何を考えているのか…については、直接聞いて頂かなければなりません」
ふむ。
謎すぎる。
ただ、よくわからんが、北の神官長がこの国の惨状を生み、そのような中で、国の舵取りを王妃が担っている…という事だけはわかった。
つまり、これ以上は、王妃である『教官』と対戦して、聞き出さねばならない。
まだ、何も解決はしていないが、糸口は見つかった。
そういう事だ。
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