第22話 鑑定と死者蘇生の弊害
俺は、ジリジリと魔王に近づいて行く。
魔王はすでに汗ダラダラである。
そりゃそうだ。
無理矢理正座させられ、口を塞がれているのだ。
何をされるのか不安もあるだろう。
っと、その前に鑑定でもするか…使った事はないが…。
ステータス画面は出せる。
何やらわからない『ニャンニャンカウンター』なる、ステータス画面にも似た画面も見れる。
だが、人のステータスを見るのは初めてだ。
上手く見れるだろうか…。
それを察したサオリがアドバイスをくれる。
「くれぐれも、無造作に鑑定はしないでください。あくまで見たい能力だけイメージして行って下さい。もちろん、詠唱は不要です」
と。
魔法とは、魔法陣を描き、それに魔力を込めて魔力の威力、性能、種類を定めて放つのが基本。
無詠唱は、脳内でイメージした魔法を直接放つ魔法。
無詠唱魔法で、通常の魔法と同じ威力を出すには、それなりに魔力が多くないとできないのである。
無詠唱魔法が使える=魔力量が多い。
しかし、俺に限っては、そのイメージすら制限をしなければいけないとの事。
何故なら、無造作に鑑定した場合、女の子なら3サイズ、その他、経験があるかないか、これまでに何回セッ…オナ…っと、これぐらいにしておこう。
つまり、知りたくもない膨大な情報の羅列が見れてしまうらしい。
犯罪者は赤の画面、それ以外は青の画面、犯罪者予備軍は黄色い画面、悪魔族は黒い画面に写し出される。
(鉄板だよなぁ…)
良くある設定では、鑑定は文字のみだったり、茶色い画面だったりする。
しかし、赤やら青というのは、想定内であり、何の新鮮味もない。
(まぁいいか…)
俺は、魔王をひと睨みし、心の中で鑑定を念じた。
その瞬間に、胸当てとバングルと盾が光る。
(はて?何故に守護神達が光るんだ?)
若干の疑問を抱きながら、浮かび上がった鑑定画面を確認する。
「こ、これは…」
俺は言葉を失った。
☆☆☆
種族 悪魔族
まぁ、これは見た目通り
個体名 レッサージェネラルデーモン
は?レッサー??
つまり、下位悪魔の将軍??
称号 第45位繁殖魔王
45???繁殖??
十大魔王やら、八星魔王なら知っているが、45て…。
つか、繁殖魔王ってなんだ??
特殊能力
無限生成
ん?何を??
配下 無し
まぁ、ぼっちはわかっていた事。
担当区域 エキサイト
言わずもがな、このエリアだ。
レベル10
HP 1万
MP 5万
※※ ♾
一般的に考えられる魔王のステータスを見たら、本来なら『驚愕』するところなのだが…これは何というか…うん。
期待外れ。
も、もう少し覗いてみようか…。
本職 種馬
最高勃起率 インターバル30秒連続100回
長さ30cm、太さ直径10cm
「………」
オェ…見るんじゃなかった…。
サオリの言っていた意味がよーくわかった!
必要以上の情報は引き出してはならない。
んで、理由はわからないが、これらを総合すると、遊郭をギャンブルバトルエリアにしたのは、こいつのステータスに由来するのだと確信してしまう。
って事で、尋問開始。
じゃねー!
確認開始だ。
「おい!種馬!」
ギクゥ!!
「繁殖魔王!」
ギクゥ!ギクゥ!
「お前…」
ダラダラ…魔王の汗が止まらない。
「飽きたんだろ?」ニヤリ
ギクギクギクゥー!!
『『『『『あははは!!』』』』』
「クスクスクスクス」
俺の尋問(?)に、守護神達が全員大爆笑してしまった。
守護神みんなは笑っているが、俺にはわかる。
こいつは、それほど力はないが繁殖に関して『魔王』なのだ。
そして、種馬としての役割に飽きたから、遊郭を改造したのだ。
ギャンブル大国という国に君臨する魔王の地位を利用して…。
男はヤリすぎると飽きるのだ。
無理矢理だと尚更だ。
いくら、違う女性が何人居たとしても…だ。
これは、俺の経験でもある。
本来なら、一度に出しすぎると子種は枯渇する。
だが、繁殖魔王というからには、特殊能力の『無限生成』はソレだろう。
俺の場合は『魔力供給』、俺視点では『魔力放出』の意味を持つので、ある意味無限生成ではある。
もちろん、普通の人間には不可能だ。
女性諸君!
男にしつこくされたくなかったら、早々に子種を枯渇させ、男を賢者タイムに追い込む事をお勧めする。
簡単な事だ。
ブッ刺される前に出し切ってしまえばいい。
男は腕力があるから、複数人で連携は必要になってくるだろうが。
コホン
えー。人間の男性諸君!
頑張ってくれたまえ!
基本、やりたい時に都合よくやらせてくれる女性が多数いるとは考えてはならない。
女性をオモチャみたいに扱う男は、女性にオモチャにされる事もまた、覚悟しなければいけないのだ。
ハーレム展開は、地球…いや、日本では無理だから、男のロマンとして、異世界物やアニメ、漫画などに反映されているのだ。
って、何の話してんだ俺は…。
☆☆☆
スッ…。
俺は、口の聞けない魔王の前に立ち、『言語魔法』を発動する。
魔王は、俺を睨みつけるだけ。
ザマァ!
「では…」
俺が魔王の頭に手をかざすと、流石の魔王も萎縮してしまうようだ。
まぁ、当たり前である。
基本能力値が違いすぎる。
「闇魔法!『四面楚歌』!雷魔法!『因果応報』!」
魔王の体が光り、全身に魔力が注ぎ込まれる。
紫の魔力と黄色い魔力。
『『『『『????』』』』』
「クスクスクスクス」
サオリ以外は、俺が何をしたのかわかっていないようだ。
反対に、サオリは俺のやった事をわかっている。
…が、敢えて口にはしない。
「闇属性ですから」で済まされる可能性大だからだ。
「さぁ…後は見物だな…解除!」パチン!
さて、ここで問題です。
俺は何を解除したのでしょーか!
『正座と口封じじゃな…ホッホッホ』
「速攻バラしてんじゃねーよ!!」
出たよ!唯一神のいきなり横槍念話。
忘れた頃にやってくる。
「で、お前は今、何してんだ?」
ブチッ…。
これだよ…都合が悪くなると、すぐに念話を切りやがる。
つまり、内緒で何やら言えない事をやっているって事だ。
そして、更に別口から出てくる影。
唯一神みたいに念話ではない。
フワリ…。
「終わったよー!意外と大変だったぁー!」
「大変だった。今も大変」
土神ヨウと風神カナが、任務を終えて帰ってきたようだ。
「おー!お疲れ様!今から、面白い余興があるんだ。一緒に見よう!」
「へー…って…」
ヨウが何かを構える。
パッコォーーン!
「ブヘッ!」
何故か、ヨウにハリセンで叩かれた。
(どこから出した!それ!)
「お、俺、ご主人様…」
「クスクスクスクス」
「笑ってんじゃねー!」
サオリは何か知っているようだ。
「私は、草木の神でもあるのっ!紙の加工ぐらい造作もないんだからっ!」
ヨウは、何やら剥れているようである。
「何があった?」
「死者蘇生が止まらない」
「へ?」
おっとりした風神カナの説明をまとめるとこうなる。
①ドラッグの原料になる素材は、すべて指示通りに上級回復用の薬草に変えた。
②すでに出回っているドラッグは、風魔法ですべて廃棄した。
③麻薬中毒になっている者は、一旦殺して死者蘇生をもって再生した。
④麻薬中毒患者、狂人はすべて居なくなった。
いいじゃないか?
何か問題でも?
と思ったが、問題はそこからだった。
⑤老衰で死んだはずの老人が生き返った、事故に巻き込まれた人が生き返った、盗賊に襲われて殺された人が蘇った。
結論
死者蘇生の効果が強すぎて、この遊郭エリアの人々は死んでも蘇る人種となってしまった。
「…って事」
なんてこった!
こりゃ、魔王にかけた魔法にも、何らかの弊害が出るのでは?という懸念が生まれる。
…だーがー!
相手が魔王なので、特に気にしないでおこう。
ハッハッハ!!
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