第18話 好き勝手にやらせてもらいます!
「さて、茶番は終わりだ!やるか…」
『『『『ゴクリ…』』』』
俺の体のあちこちから、ツバを飲む音が聞こえる。
とりあえず無視だ。
俺は、試しに1つの魔法を使ってみる事にする。
名前決めの時に使った魔法…それが、何がどうなったのか『カード魔法』というカテゴリーになっていた。
…なら、アレもできるはずだ。
そう、目の前で繰り広げられているカードバトルのデッキ。
これを作ればいい。
「えーっと…なんだっけ?まぁいいや、試しに1枚…っと」
スッ!
思い描いたカードが出現する。
「これは有名なカードだから知ってるな…フッ」
カードバトルには、何種類かの役割を持ったカードがある。
モンスターカードやら、魔法カードやらトラップカードやら…。
でも、よくわからない。
リアルでカードバトルをした事がないからだ。
引きこもりに、そんな相手はいない。
仕方がない事なのだ。
ちなみに、オンラインゲームもやった事がない。
正確には、やった事はあるが何故か『相手が弱すぎて、常に無双状態』だったため、各運営から出禁を食らった…というのが真相だ。
思えば、地球の学校における勉強も、今になって思えば簡単すぎた。
これは、まだ人間だと思っていたからなんだが、俺が人間ではないなら合点はいく。
根本的なところから、基準が違うのだ。
出したカードは魔法カード『死者蘇生』
ちょー有名カードである。
【死者蘇生】
◯◯を対価に、死者を蘇らせる。
(ふむ…)
次に出したカードも魔法カード『瞬間移動』
【瞬間移動】
◯◯した時、◯◯以外は地上に瞬間移動する。
そして、トラップカード『体内浄化』と『隠蔽無効』
【体内浄化】
◯◯が発動した時、体内の異物はすべて浄化される
【隠蔽無効】
◯◯が◯◯した時、◯◯の隠蔽魔法は無効化される。
「この4枚でいいか…」
これは、カードバトルではない。
ある意味、悪魔にとっては、一方的な蹂躙だ。
ただ、この場でカードバトルが繰り広げられているから、それを模してやってみよう。
…という、安直な発想で作っただけである。
◯◯は、カードを出した時に唱えるために伏せ字にしてある。
悪魔が覗き見している可能性があるからだ。
あちこちで『カードオープン!』とか叫んでいるんだ。
俺がやっても、小声ならその中に紛れてわからないだろう。
ただ一つ言える事は
絶対に悪魔の好きにはさせない
これに尽きる。
「ワッハッハ!後悔しろ!悪魔共!!」
☆☆☆
まずはトラップカード
「体内浄化、隠蔽無効!」ボソッ
【体内浄化】
『死者蘇生』が発動した時、体内の異物はすべて浄化される
【隠蔽無効】
『人類全員』が『瞬間移動』した時、『悪魔』の隠蔽魔法は無効化される。
「よし!トラップは完了っと…」
いよいよ本番!
「カードオープン!【死者蘇生】!『悪意、殺意』を対価に、死者を蘇らせる!」
『『『『『な!!』』』』』
どこからか、ダミ声が響きわたる。
(やはりな…悪魔共は複数人、そして、このコロシアムのどこかに潜んで、この惨状を作り出している)
おおよそ思った通りである。
「トラップカードオープン!!『体内浄化』発動!蘇生した者の体内は浄化される!」
『『『『『な!!』』』』』
「カードオープン!『瞬間移動』!『蘇生して体内が浄化された』時、『悪魔』以外は地上へ瞬間移動する!」
『『『『『な!!』』』』』
悪魔共…お前ら、『な!』しか言えねーのかよ!!
これには驚いた。
悪魔のボキャブラリーの無さに。
そういう些細なところで、頭の悪さが露見する場合もある。
つか、ここを仕切っている悪魔共は、よほど頭が悪い…と言わねばなるまい。
そもそも反撃がこない。
普通は邪魔しにきたり、反撃したりするもんだ。
「いいのか?俺を野放しにして!」
『『『『『な!!』』』』』
『『『『『あはははははは!!!』』』』』
守護神達も、流石に堪え切れずに笑い出した。
カタカタカタカタ…。
バングルに姿を変えた光神のナナだけが、笑いを堪えてプルプルしている。
それに釣られて、右手に持った剣(炎神マオ)が震えて音を鳴らす。
結果、アル中の人がアルコールを切らしたみたいに、俺の右手がプルプル震える。
「ナナ…絵面が悪いから、笑いを堪えるのはやめてくれ」
『ご主人様に同意です』byマオ
『は、はいっす!』
そうこうしているうちに、観客席、コロシアムのフィールド内にいる死んだ人類…まぁ、人族も居れば、亜人族も居るが、ひっくるめて『人類』でいいだろう。
…が、蘇生しながら消えていく。
随時、地上に移動しているのだ。
「さて、ここで守護神の出番だ」
『『『『はい!』』』』
「靴紐と拳銃!」
そう呼びかけると、ムスッとした顔で土神ヨウ、続いて、ボーっとした風神カナが姿を現した。
「せめて名前で呼んでよね!!」
「その短気を治したらな」
「な!」
「カナは語彙が悪魔みたい」
何気に酷い言い方である。
「そんな事ないよっ!!」ムカッ
「カナ…そういうとこだぞ?」
「ムグッ…」
俺のツッコミに言葉をなくすカナ。
(勝った!)
俺は心の広い男!
これで、ベッドを壊した件はチャラにしてあげよう。
☆☆☆
「ヨウは地上に行って、麻薬原料になる毒草、毒キノコ、その他すべてを、上級回復ポーション用の薬草に変えてきてくれ」
「了解…しました…グッ…」
お?我慢できてる!
「カナも地上に行ってもらうが、役割は『すべての麻薬』を風で粉々にし、誰も使う事ができないようにしてもらいたい。誰が持っていて、どこに隠してあるかわからんが、やれるか?」
「うーん。できると思うー」
相変わらずのマイペースぶりだが、マイペースというよりは、のんびり屋さんで細かい事を気にしない…と言ったところか。
「「行ってきます!」」
シュッ!!
(よし、これで事後処理も終わったようなもの!)
「死体は順調に消えている…モンスター達は除外されているから、生きている人類は、後で殺そう」
我ながら物騒な事を言っているが、死体でなければ、麻薬の浄化も瞬間移動もさせられないのだ。
これは、『生かす為に殺す』という、とても慈悲深い殺人なのだ。
まぁ、暴れまくっているモンスター、とりわけ、モンスターの中でも郡を抜いてドデカいドラゴンが、俺が手を下さなくても殺してくれるとは思うが…。
俺は、しばらくの間、観客席、コロシアム内で暴れているドラゴンなどのモンスター達を眺めて、『その時』を待つ。
(俺の予想が正しいなら…)
ニヤリ…。
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