第17話 そっちがその気なら…!

解決には、様々なやり方がある。

1人でやるなら『全員皆殺し』だが、それは却下されてしまった。


「みんなは、どうしたら、この場を収められると思う?」

全員が揃っているなら、みんなの意見も聞いて最善手を導き出せば良い!


俺は、そう結論付け、みんなの意見も取り入れて、対策を考えようと話を振ってみた。


「「「「「お好きなように」」」」」

「え!えぇーーー!!」

まてまて!さっき全員で『皆殺し』を却下しただろーが!!


(こ、こいつら…)

はてさて、どうする…。

俺の作戦は、今しがた『秒』で詰んでしまった。


「コホン…ヒントだけ申し上げますね」

お?やはり水神レイナは優しい!

「お、おぅ!」

「私たちは、あくまでご主人様の守護神です」

「ふむふむ」

「私たちは、あくまでご主人様のサポート役です」

「ふむふむ」

「守護神が、ご主人様の『皆殺し』をサポートするわけにはいきません…以上です」

「………」

わかったようなわからないような…。


「焦ったいなぁ!皆殺しにしたら、悪魔の支配下から、悪魔界の一部になっちゃうんだよ!悪魔界がある大陸以外に、そんなとこを作ったら、一瞬で大陸全部が悪魔界になっちゃうんだよ!わかった?」

短気な土神ヨウが、捲し立てるように説明をする。


「なるほど…」

と、言っておこう。

とりあえず…よくわからんが…。


「まぁ、おそらく、この騒動を主導している『悪魔を排除する』ならサポートできますかね」

by炎神マオ

「っていうか、早くしないとみんな死んで、悪魔の思う壺になっちゃうよ?」

by雷神カエデ

「たぶん、最終段階…」

by風神カナ

「これは間違いなく、悪意の最終搾取からの、乗っ取りっすね」

by光神ナナ


お前ら全員、NPCかよ!!

と言いたくなる。

レイナが言ったように『ヒント』しかくれないのだ。


「で、どうされます?クスクスクスクス」

最後にサオリがまとめる。


サオリよ…お前、面白がってねーか?


☆☆☆


整理してみよう。

①皆殺しはダメ

確かに、ゲームでも村が敵の支配下にあるからと皆殺しはしない。

つか、NPCは殺せない。

異世界物でも、関係ない人を巻き込んで皆殺しにするバッドエンドなやり方は誰もやらない。

②この地域は、すでに悪魔界としての最終段階になっており、大陸を乗っ取りを企てている。

③ここらを、こんな風に主導している悪魔は排除しなきゃいけない。

④守護神達は、あくまでサポート、手出しはしない。


「くっ…悪魔も守護神達も勝手しゃがって…」ボソッ


「なぁなぁ、お前らが5m圏内にいないと、俺の魔法は暴走するんだよな?」

「そうですね」

「このコロシアム内を移動しても、5m以上離れたら意味がないんだよな?」

「はぁ、まぁそうなりますね」

「………」


(使えねー!!)ブチッ…。

俺の中で、何かが切れた。


「お前ら…」プルプル

「「「「「はい?」」」」」

「全員、俺の装備になれ…」ギロリ

「「「「「はい?」」」」」ビクッ


自分でもわかる。

今、俺の身体からは怒りのオーラが出ている。


「いいから、さっさとしろ!」

「でも…」

水神レイナが何か言おうとしている。

…が、無視だ!


「言われた通りにやるしかありませんね…ご主人様のオーラで、耐性のない人達が死ぬ恐れがあります」

サオリは、諦めた顔をしてみんなにサラッとエゲツない事を言い放つ。


オーラだけで人が死ぬかよ!と言いたいところだが、あながちなので、スルーしておいた。


「レイナは胸当て!マオは剣!カエデは盾!」

「「「は、はい!!」」」

「ヨウは靴紐!」

「え?は、はい…」ショボン

「カナは拳銃!」

「はーい」

「ナナは右手のバングル」

「はいっす!」

「サオリは俺の影…以上!」


それぞれが、俺の指示通りに姿を変えていく。

最後に、サオリが俺の影に入った事で、闇空間も解除され、コロシアムの一画に飛び降りる形になった。


先程までは、全体を達観視しているような感覚だったが、今は違う。

コロシアムの一画、観客席の後ろの方だ。

目の前には死体の山。

死臭が漂い、発狂した人々の叫び声が木霊する。


自身の異変に気づいたのは、それからすぐの事だった。


死体の山にも、死臭にも血の臭いにも、特に何を感じるわけでもなかったのだ。

よくよく考えてみれば、俺は地球で過ごしてきたわけで、皆殺しとかには縁がなかったはずだ。


戦場にいた経験もない。

死体の山などは、漫画かアニメか、リアルではニュースぐらいなもんだ。

リアル死体の山は、規制がかかって映像で見る事はなかったが、普通なら卒倒したり吐いたりする場面である。


(俺の感覚が何かおかしい…)

例えるなら、リアルとゲーム、異世界物の知識が混ざり合ったような不思議な感覚。


「まぁ、俺、人間じゃないみたいだしな」

…で、自己解決をした。


さて、守護神達は俺の一部となった。

これで、魔法を使ったからといって、世界崩壊という事にはならないはず。


「さて…やるか」ニヤリ


☆☆☆


『カウントを開始します』

抑揚のないシステムメッセージと共に、ステータス画面と同じような画面が目の前に浮かび上がった。


ニャンニャンカウンター

水神レイナ 1

炎神マオ 1

以下略。

要するに、全員の名前があり、その横に1というカウントがつけられている。

って事だ。


「邪魔!」

俺は、手で画面を消す。


ただ今、俺はイライラMAXなのだ!


遊郭だと思っていた歓楽街は、ギャンブルをするための取り引き所だった。

守護神は使い物にならない。

悪魔は最終搾取とかで、この地域を掌握しようとしている。

つまり、最初のミッションが最終局面。


まーったく、思い描いた展開になっていない!!


悪魔!ぶっ殺す!!ヤーハー!!

コロシアム!ぶっ潰す!!ヤーハー!!

な心境だ!


ゴゴゴゴォォーー!

俺の中から、更にオーラが滲み出す。

これは怒りのオーラではない!

やる気のオーラだ!

胸から熱いものが溢れ出ている。


『ちょっと抑えてもらえませんか?オーラがキツイです』

by胸当てレイナ

『我慢しなさい!おそらく、これから1番キツくなるのは私!』

by剣マオ

『確かに!あははは!』

by盾カエデ


『で、何をやるおつもりで?』

by影サオリ

「まぁ見てろ!魔法が制御できるなら、やりようはいくらでもある!」ニヤリ

『お手並拝見させていただきます』ニヤリ


サオリは姿を現していない。

そもそも、姿を変えてはいないのだ。

闇属性で、影をも操るサオリは、ただ単に『本体』になっただけなのだから…。

意思の疎通は完璧である。


一言言わせてもらうなら、装備品になった守護神達のお喋りがうるさい…って事だ。


まぁ、喋る装備品の物語もあるのだ。

気にしてはいられない。


ただ、人数が多い分、あちこちから聞こえてくるのは、やはりうるさい。


「まぁいいか…俺は心の広い男!些細なことを気にはしない!」


『『『『どこが!!』』』』


全員からツッコミが入った。

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