第16話 裏切られた期待と狂人の宴
予想してた歓楽街、遊郭街とは、かけ離れた展開に、俺の心の何かが砕け散った瞬間であった。
そりゃそうだ。
現代における風俗と呼ばれるカテゴリーの業界が存在しないという、衝撃の事実が判明したのだ。
建物は、その要素がバリバリあるのに…だ。
路上で客をひく、店を通さず個人で春を売る女達ですら、男女混合になり、ストリートファイトをしているという。
風俗店だと思って入ったら、中身は賭博場でした…なんて、普通は思わない!
ある意味詐欺だ!
いや、個人的には!!
「って、なんでこんな建物があるんだ?バトルエリアなら、こんな娼館のような建物、いらねーだろ?」
ふむ…紛らわしいだけだ。
必要はないはず!
「昔の名残りですかね…今は、店がファイターを育成する、お客さんが買う、バトルに参加する、賭けの対象になる…こんな感じです」
「昔の名残…というと、昔は遊郭も遊女もいた…と?」
「はい。元々は、ギャンブルで勝った人達が、癒しを求めて、こちらに出向いてきていたらしいのですが、とある事件が発端で、今ではギャンブルバトルエリアとなってしまっているのです」
「…とある事件ねぇ…」
遊郭で起きた事件と言ったら、アレかな?と思い当たる節はなくはない。
まぁ今、それを言ったところで意味はない。
現状は、現場を見なければわからない。
地下にいる全員が、暴動を起こしているとして、鎮圧しなければいけないのだ。
☆☆☆
「なんか、地下のコロシアムに行ったら、ゴッツイ女とか居そうで嫌だな…」ボソッ
「ご安心下さい。そういう女性も居ますが、基本的には男は肉体バトル、女はカードバトルがメインですので問題ありません」
カードバトル…マジか!
トランプや花札はカードゲームと称される。
知識が間違っていないなら、カードバトルと称されるのは、アレだ。
デッキを揃えてタイマンで戦うアレ。
いや、確かに、それもバトルには違いないのだが…。
どんどんと風俗店のイメージから遠ざかっている事には変わりない。
「おそらく、ここら一帯は悪魔が主導権を握っているのでしょう。でなければ、健全なギャンブル場のままだったはずです」
健全なギャンブルって…ギャンブルってトラブルありきなジャンルじゃねーのか?
…と俺のイメージでは、少なくともそうなっている。
ギャンブルを否定するわけではない。
だが、純粋に楽しんでる人は居るだろうが、一攫千金を夢みてギャンブルをしている人、のめり込んで人生を棒に振る人が居る事も、また事実なのだ。
エロ展開を期待していた皆さん!
俺と共に悲しみを分かち合おう!
コホン
本題に戻ろう。
守護神から得た情報から聞いた内容によると、ここで使われている麻薬は、肉体強化のドーピング用、頭脳の回転を早めるためのドラッグ、飲料水に混入された麻薬は、闘争心を煽るドラッグと快楽を求めるドラッグ。
それにより、通常営業が出来ないぐらい、混沌としたエリアとなっているらしい。
さぁ、地下がどうなっているのか…悪意がヤバいと言っていた。
思うに、悪魔界はこのエリアを、更に悪意に満ちさせ、支配下領域を広げようとしている。
そんな気がする。
まぁ若干の疑問は残っているが、今は地下コロシアムをなんとかしなければ、悪意に満ちた人間達が各地に広がり、悪魔領域は広がってしまうだろう。
折角、各主神達以下、配下達が悪魔領域を狭めた意味がなくなる。
俺の魔力供給の意味もなくなる…いや、それはまぁ、個人的には意味はあったけども…。
「さぁ、本番だ!」
「そうですね!行きましょう!」
トプン…。
サオリの闇空間移動で地下を目指した。
闇空間移動は、まるで『底なし沼に沈んだような気分だった』というのは、サオリには内緒だ。
☆☆☆
地下のコロシアムでは、報告があった通り、『狂人の宴』が繰り広げられていた。
ざっと見た感じ、人族に獣族、魔族に妖精族…様々な種族が入り乱れて、あちらこちらでバトル…というか、戦闘をしている。
「こ、これはひどい…」
ようやく見る事ができた、最初の異種族が、こんな状態とは…。
せっかくの異世界イメージが台無しである。
「………」
個々に見てみると、格闘バトルに剣術バトル、魔法バトルにカードバトルが大半を占めているようだ。
カジノのような、スロットやルーレット、カードゲーム類は見当たらない。
何より、当たり前だがギャンブルを楽しんでいるようには見えない。
全員、血まなこで何かに取り憑かれたように『勝敗』をつけたがっている。
何も特技を持たない観客と思われるギャラリーは、お互いに殺し合いをしている。
殺す=勝つ、殺される=負け
というルール…にしか見えない。
こいつらに、賭けの対象はないようだ。
つまり、ただの殺し合い。
そりゃ、悪意バリバリでやり合うだろう。
悪魔が悪意を吸い上げるには、手取り早いかもしれないが、絵面が悪い。
(仮にもギャンブル場だろ?)
と、素直に思ってしまう。
カエデ曰く
「この流れは、大型イベントとして、突発的に開催される」
との事。
例の、電気信号で思考を読む、俺もやられた事のあるアレを使って情報を仕入れたらしい。
イベント時には、ドラッグがばら撒かれ、みんな正気をなくしてバトルをするらしい。
それが本日、今現在、目の前で繰り広げられている光景である。
解決する方法はいくつかある。
即時解決を目指すなら
①ここにいる全員皆殺し。
②ギャンブルコロシアム自体を閉鎖する。
③主導権を握っている悪魔を排除する。
長期的解決を目指すなら
①ドラッグを徹底的に排除する。
②ルールを変える。
③ギャンブルの方針を根本的に変えてしまう。
こんな感じだろうか?
『守護神全員集合!』
俺は、念話であちこちに居るであろう守護神を呼び寄せて作戦会議をする事にした。
ちなみに、『全員皆殺し』は、全員から即答で却下された。
☆☆☆
今、サオリの作った『闇空間』で、作戦会議が行われている。
…が、早くしないと、結局は全員が悪意…恨みや憎しみに囚われて死んでしまう事になる。
特にヤバいのは、カードデッキから出現したモンスター達。
ホログラムでも、模型でもない、紛れもない本物のモンスター達。
さすが異世界だと言わざるを得ない。
つまり、異世界のカードバトルは、召喚バトルでもあるのだ。
地球における『◯◯を召喚』なんて、カッコいいセリフだけの生半可な召喚ではない。
カード自体に、召喚獣、トラップ魔法、その他を封印してカード化し、バトルを繰り広げるのである。
本来、それだけなら、さぞ壮観な光景だろう。
しかし、今は違う。
召喚されたモンスターが、見境なく大暴れしている。
そういう仕組みだからなのか、コロシアムのフィールドには『防御結界』が張り巡らされ、観客席には被害はない。
だからこそ、観客席では、普通に殺し合いが行われているのである。
モンスターの餌食になっているのは、主にカードデッキを操る召喚士と、肉体バトル、剣術バトル組のファイター達。
自身のデッキから召喚されたモンスターに食われる、哀れな召喚士すら居るのだ。
このままでは収拾がつかない。
死体の山が増えるだけだ。
事態は急を要する!
どうする!俺!
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