第12話 能力テストとお説教とやらかした俺
「いつでもいいですよ!初めて下さい!ご主人様は、よくご覧になっていて下さいね」
「お、おぅ…」
真っ暗で、右も左もわからない状態で『ご覧になって下さいね』も何もあったもんじゃねーよ!!
…と、思っていたら、遠くで何かが光だした。
真後ろで!
(せめて、俺の目の前で光をだせや!)
と言いたくなる気持ちは、わかってもらえるはずだ!
で、とりあえず、光が現れだした方向に向いて…そして驚いた。
最初、チカっとしたと思ったら、一瞬のうちに、目の前まで光が届いたのだ。
しかも、光の球体だと判別できてしまっている。
これ、物理的におかしくね?
「いかがですか?」
「いやいやいやいや!直径100光年だろ?一瞬でって、それはないだろ?流石に!100年かからなきゃおかしい!球体に見えるのもおかしい!違うか?!」
「まぁ、人間基準だと、そうなりますが…」
サラッと言い放つサオリ。
つまり、神基準に人間基準は当てはまらない…と言いたいのだろう。
「ちょっと、この光に触ってみますか?」
「??…まぁいいけど…」
言われるがままに、光に手を伸ばす。
チリッ…「痛っ!」
光に手を伸ばした瞬間、電撃でも食らったかのような痛みが走った。
「これ、もしかして、エネルギーの
「はい。わかりやすく言うなら、広範囲のレーザー砲並みのエネルギーとお考え下さい。」
「………」
「普通の人間なら、触った瞬間、消滅しますね…クスクスクスクス」
「………」
どんな反応をしたらいいかわからない。
『あなたは人間ではない』と、念を押されたような気分になった。
☆☆☆
しばらくすると、強烈な光はなくなり、いつの間にか、光のナナが汗だくでサオリの横に立っていた。
「どうでした?結構頑張ったっす」
「よくできました」
「ありがとうっす。戻っていいっすか?」
「今のはご主人様に対するデモストレーション、あなたにも、これからご主人様のやった事を見てもらいます」
話の流れからすると、これから俺は、先程格好をつけてやった光を出す…という流れらしい。
フッ…。
闇のサオリは、小さな黒い球になると、ナナの懐に潜ってしまった。
『では、ご主人様。先程のようにやってみて下さい。ナナは計測を…』
サオリがナナの懐に『避難した』という事だけはわかった。
「ご主人様、よろしくお願いします」
ナナはナナで、しゃがんで頭を抱えている。
(その状態で、どうやって計測するんだ?)
と思わなくもないが、その辺はスルーしておいた。
人間基準が通じないだろうからだ。
「んじゃやるか…」
俺は、両手を広げて息を吸い、こう叫ぶ。
「光あれ!!」
「プッ!」『プッ!』
で、2人に笑われた!
ビッカァァァーーー!!
その瞬間、闇の空間には光が満ち、先程の球体という認識すらできなくなっていた。
どこまでも続く光の空間、サオリが、ナナの懐に隠れた意味が少しだけわかった。
おそらく、この光の中ではサオリは原形を留めていられないのだろう。
闇属性だから。
『ナナさん、距離は?』
「計測不可能っす」
「………」
『ご主人様、目はいかがですか?』
『大丈夫っす』
「プッ!」
ナナの語尾が移った。
んで、笑われた。
(つか、なんでだろう?今は痛くねーや)
「耐性がついたんすね」
「………」
んな簡単に!と思わなくもない。
つまり、地球規模のレーザー光線は俺には効かないって事だ。
自身の能力的には、どんどんとクソゲーになっていってる気がする。
無敵感が半端ない。
☆☆☆
ところ変わって、洞窟の中。
ナナの姿は消え去り、ナナが現れた時の違和感がなくなったサオリが、何故か黒ブチメガネをかけ、そのメガネをクイッとやりながら、さながら『女教師』風な雰囲気で細い棒を手の平でペチペチとやりながら佇んでいた。
洞窟の中には何もない。
あるのは、机、椅子、教壇と、黒板らしき雰囲気の板が宙に浮いている状態だ。
客観的に見れば、どう見ても先生と教師。
もちろん、俺が生徒。
「では、ご説明いたします」
「???」
サオリ、すまんな。
俺、今の状況についていけてないんだ。
「まず、最初の条件を思い出して下さい」
パチン!
サオリが指を鳴らすと、黒板改め、液晶板に『見覚え、聞き覚え』のある文字が浮かび出した。
『全属性、全状態異常の強耐性持ち。
あらゆる魔法の無詠唱発動』
妄想文を抜粋した内容。
改めて見ると、ちょっと恥ずかしい。
コンコン!
「はい!こちら!『あらゆる魔法の無詠唱発動』あの光は、これに抵触いたしました」
「な、なるほど…口に出したらダメって事だな?」
「まるっきりダメと言うわけではありません。しかし!そのイメージが致命的にアウトだったのです!」キリッ
(何故だろう…ダメと言われるより、アウトと言われる方がダメージが大きいのは…)
光あれ!
これは神話で、神が世界を創造する時に放ったであろう有名なセリフ。
そのセリフで闇を切り裂き、世界創造が始まるのだ。
「つまり、『無詠唱を基本とする』ご主人様のイメージが大きすぎると、詠唱で世界を破滅させかねません!以後、唱えるなら心のなかで…詠唱するなら、明確にイメージをして下さい!聞いてて恥ずかしい詠唱はダメです!さらに、魔力を集約する魔法陣なんかもっての他です!わかりましたか?」
「う、うん…でも、詠唱した方が格好いいし…」
「あれは、我々からしたらギャグです!」
ガーン!
『『『あははは!!!』』』
何か、全員からバカにされた気分だった。
(どこで待機してんだろ?)
「次に!」コンコン
俺が、笑い声に反応してキョロキョロしてるのを遮るように、サオリは液晶板を棒で叩いて、俺の注意をひく。
「これは、この世界において『かなり』重要な内容なのですがっ!!」
ビクッ!!
「ご主人様は、御身ずから、詠唱の基本をぶち壊してしまわれました!」
「え?」
サオリの口調は丁寧なのだが、その『圧』は、ものすごいものがあった。
(俺が何をした??)
「この世界に限らず、異世界では、すべて異世界言語が用いられます」
「というと?」
つまり、サオリが言いたいのは
①異世界では、異世界言語でなければ魔法は、正常に発動しない。
②通常の転生者、転移者は、自動翻訳で『日本語』で喋る事が出来、俺が言うところの『謎文字』が読める。
だから、普通に魔法が起動する。
③その概念がなくなった現在、異世界に現存する人類『以外』は、普通の日本語では魔法が発動しなくなる。
④無詠唱に限っては、イメージが大半を占めるので、発動させたいならイメージしてから無詠唱で発動する事が必要になる。
という事らしい。
「つまり今後、詠唱や魔法陣を必要とする程度の魔力しか持ち合わせていない転生、転移者は、その結論に至るまで、魔法が暴走し続ける事になります…やれやれ…です」
サオリは両手を広げ、お手上げ状態でため息をつき、首をゆっくりと振っていた。
要するに、俺が良かれと思って使った
『世界言語変換!すべて日本基準に統一一!!』
という大魔法が、実は『やらかした』大魔法だった…という結論である。
確かに、地球でヒールと言えば、アクセントの違いはあれど、誰しも『ハイヒール』を思い浮かべるだろう。
俺の場合は、イメージは回復魔法のつもりだったが、詠唱をした事で、魔法があらぬ方向へ行ってしまったらしい。
これから異世界に来るみんな!
ど•ん•ま•い!てへっ
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