第10話 意味不明魔法と湧き出たパートナー

謎のレベルアップを果たして、歓喜に満ちた7人。

俺だけが半端ない。


しかし、そんな事は気にしてられない。

今は、ミッションをクリアしなければいけないのだ。


『そうじゃぞ?』

「うるせーよ!!」

唯一神が、こうしてたまに念話を送ってくる。


「「「「「では、私たちは一旦主神様のところに帰ります。ミッション頑張ってください」」」」」


フッ…。


「え?ちょ…」

唯一神の念話にツッコミを入れているうちに、7人は俺を置いてあっさりと姿を消した。


「パーティーメンバーはどこへ行った?」

『聞いておらんかったのかえ?主神の元へ帰ったのじゃ…ホッホッホ』

「なんで?」

『配下になったからじゃよ』

「は?」

『仕方があるまいて』

の意味がわからない。


『配下はダメじゃが、眷族なら大丈夫だと言ったであろう』

「あー!そんなこと言ってたな…」

余計な情報が多すぎて、肝心の会話の内容が入ってこないから、ついつい聞き逃し気味だが、整理すると、結構大事な内容を言われてた気がする。


「で、ここはどこ?」

『さぁ?妾は念話で話しているだけじゃからのう』

「………」

やはり勘違いだったようだ。

これからは、話に流されずに、要点だけを気にしよう。


と、心に誓った俺だった。


☆☆☆


「さてと…どうするかなぁ」

てっきり、女の子を侍らせて、ハーレムパーティーでいざ冒険へ!という流れになりそうだったのに、あっさりとパーティーは解散となり、洞窟に1人、取り残されてしまった。


しかも、換気に使われていた排気口から入ってくる光と、焚き火以外の灯りがない。

全員、主神の所へ行ったため、灯りがなくなったからだ。

時間すらわからない。

排気口から見える、微かな光から、夕方ではないかと推測できるぐらいだ。


(せめて、灯りは欲しかった…)

主神の所へ帰った属性少女の存在感が、ここにきて必要なものだと改めて痛感する。


(つか、昇格が、何故か闇神だけ一段階上になっていたのだろう…)

なんて、つまらない事を考えるのも、薄暗い、この洞窟にいるせいだろう。

引きこもりにも灯りは必要なのだ。


という事で、まずは現状の把握と打破を目指さなければいけない…と気持ちを切り替える。


なんせ、この異世界は『いろんな設定』が詰め込まれた、『混沌な異世界(想像)』なのだから。


最初に行った場所は、某有名な遊郭街の屋根…そんな設定を作った覚えはないが、いろいろ詰め込んだせいで、何かしらの『科学変化』的な何かになっているのは間違いない。

たぶん…おそらく…バグだ。

予定していない天界やら悪魔界ができてしまった世界だ。

他がバグっていてもおかしくない。

よし!これから、おかしな事はすべてそう思う事にしよう。


『あちこちのバグを直せば解決する』

俺は、こう結論づけた。


そう考えないと、収拾がつかなくなり、よけいなトラブルになりそうだったからだ。

もちろん、この結論に根拠はない。


そう考えるのが楽だから。

理由はそれだけだ。


☆☆☆


ぱぁん!


俺は、自分の両頬を平手で叩き、気持ちを入れ替える。


まずは、この洞窟だ。

ベッド以外の調度品はある…拠点にするにはまずまずの場所だ。

誰にも見つからないで潜伏できる。


「あれ?俺、魔法使えるんじゃね?」

ツッコミ役はいないが、この事実は今更だった。


ニヤリ…。

魔法が使えるのだ。


(拠点作りには、何の問題もないのでは?)

ワクワク…。


「まずは…光あれ!!」

洞窟に灯りを灯すべく、俺は格好をつけて叫んでみた。


ビッカァァァーーー!!


「ぐわぁ!!目がぁー!」

格好をつけて叫んだのがいけなかったのか、はたまた、魔力量を間違えたのか、その光は、まるで閉鎖された洞窟に、大量の『閃光弾』を放たれたかのような、強烈な光が広がっていき、俺の視界を奪っていった。


トランプ型カードを出した時も、この世界の言語を日本人向けにした時も成功したっぽい。


何故、今だけ失敗するのか…。


「クソがぁーー!!目がいてぇー!!」

失敗の原因を考えている場合ではない!

この目をなんとかしなければ!


「この強烈な光を淡い光に!!」


ポワン…。


音が出たわけではない。

目に刺さってくる強烈な光が和らいだ感覚がしただけだ。


しかし未だに、目は開かない。


「よし、この目を…ヒール!!」


『ヒール』

この魔法は、鉄板中の鉄板、誰もが知る『回復魔法』である。


その瞬間


ドサドサドサドサドサドサドサ…カランカラン


「痛い!いてー!ちょ!何?!痛い痛い!」

俺の頭上に、大量の『何か』が降ってきた。


「………」

音と痛みがひき、落ちてきたものを手探りで触って、俺は言葉を失った。


落ちてきたのは、女性が履く『ハイヒール』だったのだ。


ふざけてんのか!!


☆☆☆


ハイヒールの山に埋もれた俺。

目は機能しなくなっても想像はできる。

だから何気に、1人である事に安心してしまう。

おそらく、絵面がシュールだからだ。


こんなの、誰かに見られていたら恥ずかしくてゲロを吐きそうになる…オェ


『クスクスクスクス』

『アヒャヒャヒャ』


み、見られてたぁーー!!


「ゆ、唯一神か?見てた?」

『当たり前じゃ…元々、モニター越しに見られるようにしてあるわい』


ガーン!


「おい!さっきは、念話で話してるだけだから、場所がわからんって言ってなかったか?」


ブチッ


また念話を切りやがった!


(ん?)

ここで、ふと気づいた疑問があった。


『アヒャヒャヒャ』は、おそらく…いや、間違いなく唯一神。

なら、『クスクスクスクス』は誰だ??


ヒラリ…。

「ヒール!」


この、衣類が擦れる音はどこから聞こえてきたのだろう?

ヒールをかけられた俺の目は、徐々に視覚を取り戻し、周りが見えてくる。


案の定、俺は様々な色やデザインのハイヒールに埋もれていた。


黙って目の前に立つ少女。

見覚えがある…喪服メイドだ。

確か、闇属性の少女だったはず。


「改めまして…ただ今戻りました」ニッコリ


立っていたのは、予想通り、先程帰った7神の1人、闇神やみがみのサオリだった。


しかし先程とは違い、喪服のメイド風ではない。


黒の服に水色のエプロン、白いニーハイに赤いヒール。

黒髪は茶髪になり、緑のピアスに金色のヘアバンドをしている。


はっきり言って『奇抜』な配色だが、喪服よりはいい。


「似合いますか?これからは、私がご主人様のパートナーとなります」

「へ?他のみんなは?」

「えと…みんな、私の部下になりました」エッヘン


「で?」

胸を張っている所、誠に申し訳ないんだが…。


論点はそこじゃない!

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