第8話 結局、何も進んでなくね?
話をしていると、何かにつけてまぐわいガーとか言う流れになりそうなので、俺は新たな仕事をするつもりで、4台のモニターを並べ、どこから攻めるのか…はたまた、どこからアプローチしていくかを考えだした。
いわゆる『仕事モード』というヤツである。
種族分布図、治安分布図、魔物生息地分布図、そして勢力図…。
「なぁなぁ…」
「なんじゃ?まぐわいかえ?」
「ちがぁーう!!俺は今、仕事モードなの!まぐわいは、ある程度落ち着いてから…あ!」
「ふむ。良かろう…ニヤニヤ」
俺とした事が、ついつい乗せられてしまった!
(バカか俺は!)
本題に入らねば!!
「コホン…最初に、パーティーメンバーが欲しいんだが、俺の能力に見合ったメンバーって居るか?」
俺の質問に、唯一神はこう答えた。
「何故じゃ?目的による…まぐわいの為なら却下じゃ!」
聞いた俺がバカでした。
(テメーの頭の中はピンク色かよ!!)
体力、魔力共に全快したとはいえ、数万の女神達を相手にアレをやった俺の賢者タイムは続いていた。
『何事もほどほどが肝心』『腹八分目』
過去の日本人は偉大な言葉を残したと思う。
「まぁ、冗談はさておき、目的によるのう…最大7人までなら可能じゃが?」
「水、火、風、土、雷、闇、光の関係か?」
「な、な、なんと!!妾に読心術は聞かぬはずじゃが!お主は何者じゃ!」
「いや、まて。落ち着け!さっきまで普通の人間だと思っていた、ただの設定屋だよ!」
「しかし…」
「落ち着けって…これは良くある設定なんだよ。誰でも想像できる範囲な」
「なんじゃ…そうじゃったか。驚いた」
唯一神と言いつつ、実は頭が弱い神なのではないかと疑ってしまう。
この調子だと、この世界も良くある設定ありきたりな設定安直な設定のオンパレードな世界ではないかという不安に駆られる。
はっきり言って、今まで出会ってきたゲーム、アニメ、漫画に良くあるパターンで成り立っている可能性がある。
はっきり言ってお腹いっぱいな設定だ…ゲップ
「これから異世界冒険を始めるんだ。本来の成り上がりパターンなら、随時パーティーを増やしていく流れだけど、その必要もないからな。だから、いきなりパーティーを組んでスタートしたい…ダメか?」
「ふむ…良いじゃろう。先程の神達の配下は無理じゃが、眷族なら何とかなるじゃろうて」
先程の神…とは、デリ◯ヘル嬢を指し、配下とは、あの4万人を指し、眷族とは、その下位の存在だと推測される。
(各デリ◯ヘル嬢の序列が知りたい…)
素直な感想である。
それに性格や能力を加味したら、面白い序列が生まれるのではないだろうか…。
などと、細かい設定を考えてしまう。
「良かろう…主神の4人から選りすぐった眷族をお主のパーティーてして用意しよう」
「おう!頼むわ!」
「で、パーティーを組んで何をするのじゃ?まぐわ…「違う!」」
「チッ…ノリが悪いのう」
「とりあえずは、現地に行って調査だよ。ゲームオーバー寸前のシュミレーションゲームや、育成ゲームは、どこに問題があるか調べなきゃいけないんだよ。組み込まれたプログラムじゃない分、実際に見てみなきゃわからんからな」
「ふむ、わかった。眷族貸出には、それ相応の者を用意させよう。報酬は魔力じゃが、問題はなかろうて」
『報酬は魔力』という言葉を聞き流した俺だったが、こうしてようやく『世界立て直し計画(仮)』がスタートするのであった。
☆☆☆
「ふやけますよ?」by水の化身
「火傷するよ?」by火の化身
「切り刻まれるよ?」by風の化身
「カビますよ?」by土の化身
「感電するよ?」by雷の化身
「腐りますよ?」by闇の化身
「消滅するっすよ?」by光の化身
このセリフは、唯一神が用意してくれたパーティーメンバーのアレにまつわる、俺のナニが迎えるであろう結末の話だ。
何故こんな話になったかは、ほんの少し時間を遡る。
唯一神は言った。
「4人の神の眷族から選りすぐった者を用意する」
と。
そうして、各神から派遣されてきたのが各属性の化身達。
水、火は龍神から。
雷は獣神から。
土は樹神から。
風、闇、光は精霊神から。
こんな割り当てだ。
俺が聞き流していた『報酬は魔力』というのは、それぞれの主神に支払うべき魔力であり、本人達に直接ではないという事だった。
もし、直接ソレをした場合、冒頭の結果になるという。
(碌なもんじゃねーな)
未だに賢者タイムが続いている俺が、その話を聞いてゲンナリしたのは言うまでもない。
つまり、精霊神3、龍神2、獣神、樹神それぞれ1
という割り当てで報酬(?)を支払わなければいけない…という事だ。
そして、それぞれの化身達は、働きによって昇格する立場にあるという。
(神の眷族に昇格制度があるのは新鮮だな…)
と、ついつい目新しい設定に胸を躍らせる俺。
疑問はいくつかあるが、昇進ではなく、昇格というのが会社っぽくなくて、実に神っぽくて異世界っぽい。
ついでに、疑問に思っていた、神達の序列についても話を聞けた。
ざっくり並べるとこうなる。
※◯は属性名
眷族
◯の欠片(集団で行動可)
↓
◯の
↓
◯の化身(個体生成可、能力行使可)
↓
◯の使徒(下位神の助手)
配下
◯神(主神の従者下位神)
↓
◯上位神(下位神の上司)
↓
◯神補佐(主神の片腕)
という序列らしい。
パーティーメンバーは、欠片から化身まで飛び級した、優秀な者達らしい。
正直に言おう。
設定が細かすぎて、ゲームには向かない…と。
更に、進化というカテゴリーらしいが、階級制度的には会社のソレである。
ぶっちゃけ、ありきたりすぎて萎えた。
☆☆☆
でだ…今現在。
この会話を、俺の部屋でしているのかというと、そうではない。
とある場所の、とある館の屋根の上で雑談がてら話をしているのである。
唯一神に、いきなり、無理矢理に飛ばされてきたのだ。
いきなりエロモードな会話になったのも、この場所に由来する。
それは…大きな娼館の屋根の上。
映画やアニメで目にした事のある、昔の歓楽街だ。
この辺一帯は、瓦葺きで煌びやかな日本家屋の、まさに某有名な遊郭、吉◯遊郭と言っても過言ではない。
しかし、その為か、移動はしたが異世界要素はゼロである。
どちらかと言うと、昔へタイムスリップした気分とでも言うべきか…。
そんな事を思っていると、目の前に
『ミッション1 この辺一帯を何とかせよ』
という文字が書かれたウィンドウ画面が浮かび上がった。
「異世界感が無いのに、ゲーム感はあるんだよなぁ…」
って、論点はそこじゃない!!
何が『好きにやるが良い!』だ!
後付けでミッションとかやらすんじゃねーよ!!
と、叫びたいが、今は人気のない屋根の上。
叫んだら、即見つかってしまう。
「………なぁなぁ」
「「「「…………」」」」
「おい!」
「「「「………」」」」
誰も返事をしない。
今は、個体生成をせず、それぞれが丸い光になって、俺の目の前に並んでいる。
まるで、色とりどりのキャンドルを目の前に置いて眺め、キャンドルに向かって話しかけているような、
「なんで返事してくれないの?」
「「「「誰に向かって言っているのか、わからないからでーす!」」」」
「な、なるほど…」
じゃねーよ!!どうすりゃいいんだ!!
…と、途方に暮れていると、いきなりアラームのような音が鳴った。
ピコン
『それぞれに名前をつけてやらねば個体判別はできぬのじゃよ…化身じゃからな』
それは、唯一神からの念話だった。
『つまり、それぞれに固有名詞をつけろ…と?』
『そういう事じゃ!』
『わ、わかった。つーか、ミッションっなんだよ!好きにやらせてくれるんじゃなかったのかよ!』
ブチッ
クソ!切りやがった!!
どこまでもマイペースな神である。
マイペースというより、これ、巻き込み系の神だ。
言ったそばから、違う事を言い出す上司ってのが居るのは知っている。
いわゆるブラックと呼ばれる企業に多いパターンだ。
「まぁいいか…」
俺は程なく諦めた。
考えても無駄だからだ。
唯一神相手では、明らかに
とりあえず、マイペースな神に付き合うしかない。
しかし、無理難題というわけでもない。
『何とかせよ』とは、どう好きにやっても、何とかなればいいのだ。
そう考える事にした。
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