第3話 クソゲー異世界と契約条件

ポイ…ポイ…。


自称女神が、持ってきたモニターを見ながらドヤ顔をしている。


ポイ…ポイ…。


俺は、出されたお茶を飲みながら、とりあえず女神の動向を見守る事にした。


ポイポイポイポイ…。


「…って、ちょっと待てぇぇーー!!」

「ぬ?なんじゃ?」

ポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイ…。


女神は、空間に出現させた真っ黒な渦に、次から次へと、俺の私物を放り込んでいた。


これは流石にわかる。

テンプレなの機能だ。


「なんじゃ?じゃねーよ!モニター見ながら、何、人のモンを片っ端から異空間収納してんだよ!!」

「邪魔じゃからじゃよ?心配するでない!をしておるわけではない」

「なら、異空間転移か?」

「いや、異空間ゴミ箱じゃ」


ポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイポイ


「は、はぁーー??異空間収納より悪りぃぞ!心臓に悪いわ!!元に戻せ!ボケェーー!!」

「よし、こんなもんじゃな」


どんなに叫んでも、マイペースな女神には逆らえず、というか、ただただ見守るしかなかった。


結果、ベッド、仕事スペースのデスク、本棚しか部屋には残されていなかった。


しかも!

本棚にあった各種漫画はなくなり、漫画やアニメでみるようならしき、難しそうな本が並べてぎっしりと並べられている。


「これは、お主に必要ない書物じゃ、気にするな」

「なら、なんで俺のコレクションを捨てたぁぁーー!」

「あれらの地球産の雑誌も、今になっては必要なくなったからじゃよ」

「お、俺のコレクションがぁぁぁーー!バカやろーー!!」

俺の叫びは、無駄に広くなった部屋に虚しく響くのであった。


☆☆☆


「まぁ。そういうでない。どうせ5年後にはすべてがAIがすべての設定を組み上げて物語を作るようになる」

「え?」

「無人クリエイターというやつじゃ」

女神は続ける。


「この先、一般受けする設定、キャラデザ、文章、作画によって、夢を形にするのではなく、エンターテイメントが発達する…という事じゃ」

「文明の発達とは、そんなもんじゃ。そもそも、お主が考えてきた設定は、地球で活かされておるわけではない」

「それは、どういう…」

「発注者は、妾じゃとゆうたではないか」

「つまり…??」

「お主の想像力は、すべて異世界に反映されておる…という事じゃ」

「今まで?モンスターとか、ラスボスとか?」

「そ、そうじゃ…」

女神の言葉は、なぜかようにも見えた。

先程の軽い気持ちで言っているのではないのだけは理解できる。


「さて、先程持ってきたモニターなんじゅが、あれが何かわかるかえ?」

意味不明な展開に、まだ頭はついていってないが、ようやく本題のようだ。


既存のモニターには、があり、様々な色で識別され、表記されていた。


だが、新しく持ってきたモニターには、ざっくりと3色。

白い区間が上から3分の1、黄色い区間が真ん中に3分の1、下は黒い区間が3分の1。

わかりやすく3色に分かれている。


「こ、これは…」

「勢力図じゃよ。今、天界と人間界、悪魔界は、日本でいうところのをしておるのじゃ」

「へ?」


異世界で国取り合戦??

設定としては、シュミレーションRPGに似た趣向。


「そんなの考えた覚えがないんだが?」

「いやぁ、妾も、まさかとは思っておらなんだ」

「何をした?」

「今まで提出された設定をではないが詰め込んだら、こうなった」

「は?」

俺が、今までだと思ってやっていた設定作りは、10や20ではない。


「それを詰め込んだ…だと?」

「うむ。全部ではないが、面白そうな設定は、だいたい…じゃな」

「で、これをどうしたい?」

「平穏な異世界を取り戻して欲しいのじゃ」

「な!!」

無茶ぶりも大概にして欲しい。

いくつもの設定をごちゃ混ぜにしたら、なんて作れるわけがない。

間違いなくだ。


そこで、俺は先程の分布図と勢力図を見比べてみる。


「ほう、切り替えが早いのう」

女神はニコニコしているが、俺自身は、それどころではない。


やはりに整合性がない!


つまり、天界勢力下の地域でも犯罪が発生しており、悪魔界でも平穏に暮らしてる者がいる。


だけを見れば、どの世界も力は均衡しているように見えるが、実際はそうではない。


ゲームの国取りゲームは、そこに住まう人々の意志など関係ない。

相手の陣地を攻め、国さえ取れたら勝ちなのだから。


でも、これは違う。


狂っている!

これが事実なら明らかに、この異世界はクソゲー決定だ!

仮に、地球でこんな設定を出したところで許可する企業はないだろう。

設定は奇抜すぎるし難易度が高すぎる。

なんせ、あらゆる設定を詰め込んだ世界だ。


この異世界の人類は何してんだ?


☆☆☆


「これって、モニターだけの話だよな?」

ダメ元で聞いてみたが、答えは目に見えていた。


「実際に起こっておる事じゃよ」

やっぱりね。


「で?俺にどうしろと?」

「言った通りじゃ…世界をあるべき姿に戻し、平穏な世界を取り戻す」

「俺にできるのか?」

まだ実感はない。

部屋で見せられた画像でしか情報が入ってきてないからだ。

脳内では、未だにゲーム感覚でしか認識できていない。


俺は恐る恐る女神の返答を待つ…。


「できる…はずじゃ。あれだけの妄想を瞬時に構築できるお前なら」

「妄想??」

嫌な予感がする。


『初期設定で、ラスボスをワンパンでやっつけられるほどの強さ。

レベル1でHP1000万、MP500万

レベル2ならHP1億、MP5000万。

レベルがあがる毎に、桁が増えていく。

最高レベルは1000

1分でHPもMPも1万づつ加算されていく。

予想外な使い方をしない限り、常に無敵状態。

不老不死で全属性魔法の使い手で、全属性、全状態異常の強耐性持ち。

あらゆる魔法の無詠唱発動。

認識阻害に鑑定阻害、暗視に読心スキルなど、使いたいスキルはなんでも創作できて使いたい放題。

スキルポイントは無限。

初期装備は、俺が持ったら神器クラスになる。

所持金は、財布にとして、10万相当の白金貨が10枚。

1万相当の金貨が10枚。

減った所持金は、常に補充されて、お金には困らない』


「これじゃ…」


げー!やっぱりかぁー!!

俺の妄想丸出しのクソ設定!!

復唱するな!聞いてて恥ずかしいわ!!


「これが世界を救う」

「嘘つけー!!」


俺がおかしいのか?

画面に映っている異世界がおかしいのか?


「つか、あんた女神だろ?つまり、勢力的には天界側の神だ。それなら、天界が世界統一を狙っているんだろ?話が噛み合わないんだが?」


「まぁ、普通に考えるならそれはそうじゃな…しかし、それは、主と妾との契約が済んでからじゃ…今言っても机上の空論じゃろうて」

「ま、まぁ、たしかに…」

この女神は異世界の情勢を見せただけ。

俺は、それを聞いて知識を得ただけ。


俺が世界を救うってのも、なんの根拠もないのは事実。

女神の言葉を鵜呑みにするなら、女神と契約をすれば、すべてがわかる…もしくは、すべてを説明してもらえる…という事になる。


「異世界がクソゲー真っ青な世界だという事はわかった。なら、早く契約を済まして、早く真実を教えてくれ」

正論である。


「妾と契約すれば、お主の妄想は現実となり、お主自身の力となる…のじゃが…」


「ん?どうした?そのために転移させたんだろ?未だに所在地はわからんままだが…」


「いや、その…それはそうなんじゃが…妾も人間とのまぐ…契約は初めてでの…」

焦ったい…。


「はっきり言え!何が問題なんだ?」

ジト目で女神を追い詰める。


一貫の流れから、優位性はこちらにあるはず。

女神に逆らえるはずもない。

フッフッフ


「さぁ言え!言って楽になってしまえ…クックック」

魔王キャラで、更に追い詰める。


「わ、わかったのじゃ…後悔するでないぞ?そもそも、お主が考えた設定じゃからな?」


「俺が?まぁ、あの妄想設定が手に入るなら後悔なんかするもんか!」

「男に二言はないの?」

「当たり前だ!」


「コホン…そこまで言うならゆうてやる…契約とは…」

「契約とは?」


「妾とお主がまぐわう事で成立する!(キリッ)」

「え、えぇぇぇーー!」

「お主が夜中にで作って削除した設定じゃよ…ホッホッホ」


「いや、確かに…夜中はエロモードになるから…って、削除した設定を採用してんじゃねーよ!!」


とんでもない事になってしまった。

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