第2話 自称女神と謎の地図

カタカタカタカタ…。


(ん?俺、仕事してる?ゲームしてる?)


悪夢と思いたいような変な出来事があってから、おそらくは数時間後、俺はキーボードを打つ音で目が覚めたような、まだ夢の中にいるような異様な感覚で目覚めた。


というのも、過去に何回もをしていた事があるからだ。


ぶっちゃけ、無意識にゲームをクリアしていた事が何度もある。

ある意味が半端ない出来事だったりする。


でだ。


カタカタカタカタ…。


これだ。

間違いなく、俺がやっているわけではない。

誰かが、俺のパソコンをいじっている?


ガバッ!


「誰だ!何をしている!」

「妾は。パソコンをいじっておる」

俺はベッドから飛び起き、パソコンの前に座ってカタカタやっている怪しげな少女を見て叫んだ。


女神??

どうやって入った?

俺のパソコンで何をしている?

そもそもって何だ?


見た目は15歳ほど、銀髪をクルクルツインテールにし、淡い紫の西洋風ドレスを身につけている。


「おや?起きたのかえ?もう少しで終わるところじゃ。まぁ、ゆっくりしておるが良い」

こちらを向いた自称女神の目は赤く、唇も赤い。

まるで吸血鬼のような様相である。

しかし、その姿に恐怖感はなく、反対に色っぽいとさえ思えてしまう美貌だ。


「あ、ありがとう…じゃねーよ!!お前、そこで何してんだ?」

その雰囲気に飲まれ、あやうくお礼を言いそうになる俺。

 

「しかし、オタク文化とは奥が深いのう。よう、こんな環境で仕事ができるもんじゃ」

「ほっとけ!心地良いんだからいいんだよ!これで!で?お前は何をしている?」

「オタクというから、太っていて、いつも汗をかいてて、メガネをかけてて…ってなってないところもすごいのう…ホッホッホ」

「仕事や趣味で頭を使ってるから太らねーんだよ!偏見の目で見んな!つか、その偏見、どこ情報だよ!!」

「まぁ良い。お茶でも入れるからゆっくりしておれ…ホッホッホ」

そう言うと少女は立ち上がり、部屋を出て行った。


「あ、ありがとうござ…じゃねーよ!」

話がまったく進んでない!

何の疑問も解消されていない!


わかったのは、最初の声の主が目の前に現れた、自称であった…という事だけ。


俺の叫びは虚しく部屋に響くだけだった。


☆☆☆


「付き合ってられん!とりあえず、気分直しにゲームでもしよ…んんん?あれ???」

テーブルについた俺の目の前には、動画用、ゲーム用、仕事用、3台のパソコンモニターがあったはず…。

いや、正確にはモニターは3台ある。

…あるにはあるのだが!


「な、な、なんじゃこりゃー!!」

俺の目の前に映し出されているのは、の世界地図。


何故、地球ではないとわかるのかというと、それは一目瞭然。

知識にある地球の世界地図ではないからだ。


正確には、地球と比較して、アメリカ大陸並みの大きい大陸が5、オーストラリア並の中規模な大陸が3、日本島並みの小さい大陸が2。

北極、南極と思われる大陸が上下に…ってまぁ、北極には大陸はないわけだが。


いや、そこは大した問題じゃない。

計12ある大陸は、さほど距離が離れているわけでもなく、大陸の形は様々あれど、世界基準の世界地図に良く似ている。

日本にあたるとおぼしき小さな大陸が、極東部に位置しているからだ。


見慣れた世界地図の日本は、地図の真ん中あたりに位置しているが、それは日本を基準にしているからであり、世界各国の地図の日本は最極東に位置付けされている。

だから、異世界物などの物語で、日本は『極東』『東の国』などと呼称される。


まぁ、そんな豆知識はどうでもいい。

問題は、その3台には種族分布図、治安分布図、魔物生息地分布図と、同じ地図に違うタイトルで違う色分けがなされ、映し出されている…という事だ。


人口密度分布図、動物の生息地分布図、気候分布図、とある感染病者の分布図などは良く目にするが、なんてものは地球に存在しない。

あったとしてもあたりがあるぐらいだろう。


(たしか、異世界に転移させたって言ってたよな?…まさか、これは異世界の分布図??)


こう考えるなら、合点はいく。

なんせなんてものは、多種族がいて成り立つからだ。


地球には、人間族以外に知的生命体は存在しない。

しかし、よくある異世界物には、いろいろな知的生命体が存在する。


そう合点は行くが、納得はできていない。

ただ今、自室でモニターを見ているだけだからだ。


「ま、そんな事は異世界物ならありきたりな物だし、所詮、画面上の地図だからな…何を動揺しているんだ俺は…」

そう、これは画面上の地図であり、現在地、つまり、俺の部屋がこの地図と関係があるというわけではない。


つまるところ、俺は今まで『妾さんと親』に、嵌められていたという事実に動揺というかを覚えているのだ。


☆☆☆


そんな事を考えていると…


ガチャッ

「!!!」

いきなりドアが開き


ガシャガシャ…ゴトンゴトン…。

「ヨイショ…ヨイショ…ほら、お主!手伝わんか!」

「お、おぅ???」

どデカいモニターを持った、さっきの少女が入ってきて、さも当たり前のように、俺に命令する。


積み重ねてあった俺のを散らかしてモニターを置き、何やらドヤ顔をしている。


ドン!

「ふぅ…お待たせじゃ!これでようやく説明ができるわい」

「説明?つか、お茶は!?」

と、そんな少女に思わずツッコんでしまった。

が、お茶セットは、少女の真横にしっかりといた。


「なぁなぁ、お茶を浮かべられるなら、最初からモニターを浮かべれば、ふぅ…とか言わなくて良かったんじゃね??」

「おー!まったくじゃ…ホッホッホ!いいツッコミじゃな。ボケた甲斐があったというもんじゃ」

「お前、俺で遊ぶつもりだろ?」

「さ、さぁ…何の事じゃろうなぁ…」

思っ切り棒読みである。

、俺をこき使いやがった!こいつ!

しかも、俺の大事なもんをグシャグシャにして!!


そこで、ハッと気づいた。

お茶セットが浮かんでいる事にも感じてない自分がいる事に…。


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