リアル異世界がクソゲーすぎる〜そっちがその気なら、俺も好き勝手にやらせてもらいます〜

咲谷 まき

第1話 妄想が現実に?

カタカタカタカタカタカタ…。


「ふーむ…新規のゲームって設定が難しいよなぁ…ありきたりな設定はボツだしなぁ…」


俺の名前はマモル、年齢は17歳。

本名は個人情報なので伏せておく。

若干引きこもり気味のいわゆるオタクという人種ではある。

趣味はアニメに漫画、ゲーム。


俺の仕事は、新作ゲームや新作アニメの設定を作りデータを送るという、いわゆるテレワークでできてしまう、俺には打ってつけの仕事だ。


ノベライズ、コミカライズから作る物は、元々設定が決まっている。

だが、俺の作っているのは、すべてオリジナル。

ストーリーを考えるわけではない。

世界観、登場人物、能力など、ストーリーを作るための素地そじを固める仕事だ。


あとは、ストーリーを考える人がゲームやら漫画、アニメを構成していく…と思う。

後の事は知らない。

知る必要もない。


では何故、そんな職業が存在するのか…答えは意外と簡単だ。

親が仕事を持ってきて、無理矢理やらされているのだ。


親曰く

『引きこもりたいなら金を稼げ』

無茶苦茶な言い分である。


うちの親は『働いたら負け』という名言を知らないのか!

と言いたくなる。


需要があるのだろうか?という疑問はあるが、定期的に仕事があるという事は、まぁ、あるのだろう。


仕事部屋にしている8畳の部屋には、好きなアニメやら特撮やらのポスターが所狭しと貼り付けられ、そのポスターが隠れないギリギリのラインで、参考となる資料、主にラノベや漫画、設定集が積み上げられている。

更に、過去にボツとなった設定のデータを保存したUSBやら必要となる映像ディスクやらゲームが散乱し、いかにも『オタク部屋』というべき鬱蒼うっそうとしたが広がる。


すでに発売されている設定集を熟読し、ゲームをし、それとは被らない新しい設定を考え出すのだ。

資料は、いくらあっても困らない。


ちなみに、各種ポスターは士気を上げるための必要なアイテムである。

眺めているだけでやる気が出る。

フッフッフ


しかし、残念ながらゴミを放置するスペースはないので、ゴミ屋敷にはなっていないのは幸いである。

ベッドにパソコン3台、参考資料でゴミなんか置けないからだ。


動画を見ながら片手でゲームをし、片手で仕事をする。

まさに天国である。


いいのか悪いのか、趣味と実益を兼ねた生活を続けていくうちに、いつの間にか脳内と手足が並行処理するようになってしまっていたほどだ。


☆☆☆


しかし、クライアントの要望に応える仕事は、いろんな制約、要望があり、はっきり言ってつまらない。


やれ、魔法のない世界での無双物だとか、魔王のいない世界での勇者物語とか、科学文明と魔法文明との世界戦争物だとか、そんな無理設定を受けるんじゃねーよ!と言いたい。


まったく自分の趣味が反映されない。

つまらないのは当たり前だ。


趣味を反映させるなら、異世界で魔法やスキルを使って無双する鉄板物がいいに決まっている。


「まぁ、俺の趣味を反映させたら、間違いなくクソゲーになるけどな…フッ」


そう、制約でがんじがらめにされながら作る設定より、気ままに設定した内容の方が夢があるし、考えているだけで楽しいのだ。

ただ、採用されないだけ。


ゲーム設定にしろ、異世界物の設定にしろ、弱い主人公が成り上がって無双するから面白い。

敵役も、手強いから良いのだ。


そしてハーレム設定。

これは外せない、これは鉄板だ。


薔薇設定に興味はないが、百合設定なら許容範囲である。

いや、まて。

腐女子がターゲットなら薔薇設定もありか…。


で、それを、予想外な設定にしたら面白いだろうか…いや、たぶん面白くはならない。

他人がやるなら…。


ただ、自分がやるなら話は別だ。

過去に、できるものならやってみたいクソチート能力の設定を作った事がある。


『初期設定で、ラスボスをワンパンでやっつけられるほどの強さ。

レベル1でHP1000万、MP500万

レベル2ならHP1億、MP5000万。

レベルがあがる毎に、桁が増えていく。

最高レベルは1000

1分でHPもMPも1万づつ加算されていく。

予想外な使い方をしない限り、常に無敵状態。

不老不死で全属性魔法の使い手で、全属性、全状態異常の強耐性持ち。

あらゆる魔法の無詠唱発動。

認識阻害に鑑定阻害、暗視に読心スキルなど、使いたいスキルはなんでも創作できて使いたい放題。

スキルポイントは無限。

初期装備は、俺が持ったら神器クラスになる。

所持金は、財布にとして、10万相当の白金貨が10枚。

1万相当の金貨が10枚。

減った所持金は、常に補充されて、お金には困らない』


自分をそんな設定にした異世界物なんか、ゲームにしろ物語にしろ、最初から結果が見えてて…つまり、チートでヒャッハーして短期攻略して終わり。

という、実につまらないなのだが、自己満足で考えて、誰にも言わなければ…知られなければセーフだ。


自分の妄想だ。

妄想は自由だ…たまにはこんな妄想もいいだろう。


こんな妄想が、仕事の合間の休息だったりする。

いわゆるストレス発散だ。


こうして頭の中を緩め、また制約だらけの依頼に没頭するのだ。


☆☆☆


そこに、聞きなれない女の声が響いてきた。


『その、容赦のないありえない自己満足な設定を待っていた。その設定を授けた故、心ゆくまで楽しむが良い』


「は?」

俺は頭が悪いのだろうか?

今の言葉の意味が、さっぱりわからなかった。


『という事で、お主を異世界へと召喚した』


「へ?」

『という事で』の意味がわからない。


『この異世界で好きに生きてみるが良い』

「えと…あんた誰?」


『気軽に、ゲーム感覚でやれば良い。得意じゃろ?』


ん?ん??


「まてまてまてまて!『召喚した?』『召喚する』ではなくて?ゲーム感覚で?何言ってんの?」


『ふむ。お主が妄想してる最中にこっそりとな…ゲーム感覚はゲーム感覚じゃ』


「は?何してくれてんだよテメー!仕事の途中だったんだぞ?現実に帰せ!って、部屋ん中だからイマイチ実感はないけど」


『あははは!ほんに面白い奴よのう。安心せい。元々の仕事発注者は妾じゃ。親の承諾も得ておる。不都合はあるまいて』


「ふ、不都合しかねーよ!!」


『という事で、これからは妾がサポートしてやる故、存分に楽しむが良いぞ』


「何勝手に決めてんだよ!」

部屋に鳴り響く声と、散々言い合いをして疲れた俺は寝る事にした。


そう、これは夢だ!

現実なわけがない。


(起きたらまた、仕事の続きをしよう…そして親に文句を言ってやる!)


そうして俺は、ベッドに潜り込んで現実逃避をしながら寝る事にした。


…が、寝られるわけがない。


疑問①

俺は異世界に召喚された。

だが、部屋の中だから実感はない。


疑問②

俺の考えたクソチートな設定が授けられた。

何もしてないので実感はない。


疑問③

ゲーム感覚で楽しめ…つまり、現実には実装されていない、架空のVRMMORPGシステムのようにやれと言われた。

しかし、これも部屋の中なので…以下略


疑問④

仕事は『妾さん』からの依頼だった。

親もグル。

これが1番、冗談がキツイ。

つまり、それが事実なら俺は妾さんと親に、ずっと嵌められていたのだ。

家に関しては、部屋の中なので実感はない。


疑問⑤

妾さんって誰??


何か、悪い夢でも見てる気分だ。


仕事のしすぎだろうか、はたまた、妄想を拗らせたか…外に出れば、多少ははっきりする事もあるだろうが、今は何もやる気が起きない。


原因ははっきりしている。

ただ単に、ドッと疲れたってだけだからだ。


疑問を整理した事で、何の解決にはなっていないが、気分がスッキリしたので、今度は良く眠れそうだ。


「寝よう…」

とりあえず、俺は睡眠という現実逃避の道を選んだ。

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