第92話 出来すぎた転生転移システムと俺のライフスタイル

side チーコ 2


「くっ…物質変化!!」


頭をめり込ませ、もがきながらも転生者は何やらやろうとしている模様。


しかし、わっちはすでに手を打ってありんした。


旦那様の言葉を受け、密かに微量のレッドマウスライムを体内に忍ばせているのでありんす。


大きさは、人間の細胞一つといったところでありんすか…。


しかし…。


「頭がクラクラする…その足をどけてくれないか?」

「いやと申したはずでありんすが?」

「ならば実力行使だ!」


はて、何をするのでありんしょうか?


「このスライムで溶かされた研究室を、バイオ兵士にして、お前を倒すまで!!」

「ほう…」


「いでよ!バイオ兵士!この女を駆逐しろ!」


ざわっ…。


何やら、床、壁から、人体らしき形をした、まるでゾンビのような人間型の上半身が無数に出てこようとしてるでありんすが…。


当の本人は、それっきり身動きがとれなくなり、虫の息でありんす。


「くそっ!体内の血液が足りん!これでは、魔力も出せん…仕方がない!俺の血液優先で物質変化をするしかないか…」


方針を切り替えたようでありんす。


物質変化した血液は、転生者に輸血され、力を取り戻しつつある状態。


「さて、そういう事なら、好きなように動くと良いでありんす」


わっちは、踏みつけていた足を離し、見守る事にしました。


『旦那様、バックアップのシステムは、どのように処分いたしましょう』

『データチップだけ回収、本体はいらないな…奴が、どんな研究をしていたのが知りたいだけだからな…』

『承知しましたでありんす。このまま、旦那様の元へ運ぶといたしましょう』


ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ!


スライム達は、迅速に旦那様の元へデータチップを運んで行ってしまいました。


「で、データは、また保存できるし、機材も作ればなんとかなるっ!」


『ん?奴は、機械関係の設備を作れるのか?』


俺の言葉に、こちらの転生者は、首を横に振る。


「無理ですね…奴の物質変化は、細胞、バクテリアなど、生命に関する物質変化しかできません…ちなみに、私は、鉱石を使った武器や設備の物質変化しかできません。」

「一度作った物は、元に戻せるのか?」

「無理ですね…私達が受けた恩恵…つまり、チートスキルは、作るだけなのです」


『だそうだ…チーコ、いけるか?』

『余裕でありんす。すでに、この転生者に、物を作る力は残っておりませんゆえ』


(何をしたんだ?見た目には、何の変化も見当たらないのだが…)


☆☆☆

side城壁


「昔は、2人仲良く、この世界を豊かな大地にしていたのですが…」

「お前らを、この世界に送り込んだ神は、どんな奴だった?」

「確か、転生神の導きで、こちらに転生してからは、豊穣の女神という、土地を豊かにする神が俺たちのサポート役として、しばらくは見守っていたはずですが…」


ふむ。

「して、神とは本来、人間の世界に干渉が出来ないのではなかったか?」

「はい、夢で啓示を受け、それを参考に文明を発展させてきました」


更に兵器転生者は語る。


破壊と再生を繰り返して、世界は回っている。

生物に限らず、物質は誕生し、役目を終えて土にかえる。


物質変化で作った物は、手動でリサイクルするか、無害な物質にしてから廃棄して、新たな物質をつくる。


…と。


つまり、創造は任意で出来るが、役割分担があり、双方の破壊は自然に任せているという事。


微生物を生み出して土地を豊かにし、作物を作って人類を飢えから守り、機械、その他道具を作って生活を豊かにする。


それぞれ、生物関連全般、無機物関連全般を物質変化させて発展してきたのが、この世界。


この世界の人類にとって、転生者2人の存在は神にも等しい立ち位置であろう事は想像ができる。


だが、統括神、知恵神(知識神)、技術神は、見守る事しか出来ない。

夢を通じて、啓示するのがギリギリのラインだ。


神とは、どこの世界でも同じである。

はっきり言おう!

神は無責任なのだ!


地球において、異世界に召喚される転生者の多くは、決まって、事故死、過労死、死亡、などが主流になっており、転移者は、神に選ばれた者が送りこまれてくる。


神官や召喚士も、その共犯者と言えるだろう。


はっきり言って、基準がわからない。


天寿を全うした人間は、異世界転生しない。

老人は転移者に選ばれない。


何故だ?!


それでいて、転生、転移者には、もれなくチート能力を付与し、『地球には帰れないけど、力を授けるから頑張って、この世界で生き抜いてね』とか『勇者様!魔王を討伐して下さい!』等とほざく。


転生、転移者は、魔法やチート能力を付与され、地球でのしがらみから解き放たれるために、暴走しがちなのは、そういった経緯があるからだと俺は考えている。


中には、役目を終えたら帰還できる奴らもいるし、自力で地球の帰還を果たした奴らもいる。


だが大半は、元の世界(地球)には帰れないし、、大変な役割を押し付けられるパターンが多いのが現状だ。


しかし、という、ある意味をされる為、誠実に異世界人のとなる奴らも存在しているのも事実ではある。


だが、スローライフと言いながら、何やかんや転生、転移者達や、現実を受け入れて真面目に取り組んでいる奴らであっても、そんな神をだとは言わないのだ。


思ってすらないだろう。

いかに自分が地球人類にとって、大切な存在であるかを…。


大切な事だから、もう一度言おう!


•天寿を全うした人間は、異世界転生しない。

•老人は転移者に選ばれない。


何故だ?!


異世界送りになるのは、いつも働き盛りの社会人か、未来ある少年少女達なのだ。


何故だ?!


それらの社会の柱になっていくであろう人間を、神は殺して転生させ、承諾も得ずに転移させる。


勝手にもほどがある!


だがっ!

そんな身勝手な行いを、俺は許したりはしない!

いつの間にか、いくつかの原神となっている俺ではあるが、は人間だ!


たとえ、自分自身の肉体を改造をしていても、神の核を取り込み、神格を得ていたとしても、元々はだったのだ。


俺に限っては、神のようになんて、都合の良い立ち位置ではないし、人類のように、神にあらがすべがまったくないわけではない。


そう!

俺は、異世界のありとあらゆることわりを無視する事ができる立場にいる。


今風に言えば、スルー出来るという事。


神の身勝手や人類の暴走は、俺がであるなら目も瞑ろう。


だが、それがもし、俺の障害となるのであれば遠慮も容赦もしない!


科学帝国転生者は、間違いなく俺の障害であり、排除すべき存在だと確信している。


「さぁ!チーコ!無様に敗北していくマッド転生者を見せてくれ!」


(…と言った俺に触発されるであろう残りの奴らにも、新たな可能性がある事を見せてつけてくれ!)


「ワッハッハッハ!」

『オーッホッホ!!』


ここから、チーコのはクライマックスを迎えるのであった。


「「「「ぐぬぬぬぬぅぅぅ…!」」」」

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