第87話 俺が白衣を脱ぐという意味。
それは、普段身につけている枷を外すという事。
そして、内ポケットに携帯している各種メスを使用しないという事。
そう、今回俺は、外科医としてではなく、神として、この世界を正常に戻すのだ。
つか、この世界を正常にするには、メスがいらない代わりに、その枷を外した反動ともいうべき、魔法とスピードが求められるのだ。
こんなつまらない世界は、さっさとおさらばするに限る。
ちなみに、俺の白衣に携帯しているメスは以下の通りだ。
死神メスが2本。
1本10トン。
肉体を切ると、霊魂が分離する効果がある。
肉体をそのままに霊魂だけを分離する、肉体ごとバッサリと切り裂き、霊魂を分離する…これは任意でできる。
更に、取り出した霊魂の頭部を切り離すと、霊と魂が分離できる。
いわゆる、魂を浄化して記憶を消す、そして、新たに輪廻転生させるという作業の前段階まで、その場で行えるという事だ。
ちなみに、肉体から霊魂を分離させるだけなら素手でもできる。
触れなければ取り出せないのが難点だが…。
死神の力が上がれば、思っただけで分離も可能だろう。
まぁ、これが本来の死神としての役割であり、死神のカマの効果なんだが…。
死神のカマの持ち手を加工したメス2本。
1本10トン。
これで切ると、霊魂も肉体も滅ぶ。
しかも、輪廻転生をも阻害する。
死神メスと同じ効果だと思っていたのだが、やはり、刃物部分と柄の部分では、その効果は異なるようだ。
このメスには、即死メスと名付けてある。
まぁ、あまり使う機会はないだろうが、これは一般的な死神も知らない事だろう。
なんせ、そもそも柄の部分は、あくまで持ち手なのだから。
そして、アダマンタイトメス4本
1本10トン。
魔力伝導率は低いが、やたらと硬い。
ひたすら硬い。
圧縮させてある分、普通のアダマンタイトの剣よりも切れ味は良い。
主に、魔法を伴わない普通の手術に使用する。
ミスリルメス2本
1本5トン
魔力伝導率が良いわりに、切れ味がものすごく良い。
魔法を使う繊細な手術で使うものだ。
最後にオリハルコンメス2本
1本5トン
魔力伝導率はそこそこだが、重さの割に薄く固く、ミスリルメスよりも繊細な手術が可能なのだ。
それぞれの用途に合わせたメスが12本。
これが俺の携帯するメスの概要だ。
重さは、ざっと100トン。
これを携帯しているのが通常モードなので、その白衣を脱ぐという事は、100トンの枷を外すという事。
使用する魔法の威力もスピードも、さぞ上がる事だろう。
これが、白衣を脱いだ理由である。
この世界での目的は、この世界の資源をマルっといただく事。
世界共通医師免許を取得させてもらったこの世界の神には悪いが、今回は外科医としてのスキルはいらない。
俺はこれから、邪神(正確には無邪気神)となり、この世界を正常に戻すのだ。
フッフッフ…。
☆☆☆
それではまず、この世界にいる人類には気づかれずに、地脈、鉱床にあるすべての鉱石を1ヶ所に集める。
俺は、指先に鉱石探知をまとわせ、地中にある鉱石を1ヶ所に集める。
やり方は単純だ。
指で鉱石を移動させる。
こうして…だ。
ヒョイ…。
ヒョイ…。
幸い、この世界には、合戦場と思われる広い土地がある。
ここにすべての鉱石を集める。
で、内密に閻魔の協力を仰いで、すべて回収。
これで、新たな武器装備は作れない。
その後、弾薬を含む大砲もどきの兵器を、これまた地獄送りにする。
固定されている兵器だ。
指で兵器を指定して、地獄への門を開けば、そのまま沈むだけだ。
ちょー簡単!
これで、兵器を使った攻撃は出来なくなる。
ここまですれば、兵器大国は、実質戦争どころではないだろう。
なんせ、兵士しか残ってないのだから。
と言っても、兵器大国にはアンドロイドしか残っていない。
個人的には、このアンドロイド軍団も無傷で回収したい。
だが、アンドロイドは動く。
しかも、その制御はアンドロイドのトップがやっていると考えてもいいだろう。
何故なら、この俺がアンドロイドの制御権を奪えずにいる。
これは、間違いなく転生者が絡んでいる…とみるべきだろう。
動かないようにすれば、回収は可能だと思うのだが…。
「ふむ。やはりやるしかないか…」
『旦那…』
「いや、壊すわけではないぞ?ある漫画を参考に、体内にある制御系のケーブルを指で引き裂くだけだ…読んだ漫画は、視神経を指で引き裂いてたかな?」
『それは、メスを使わなくてもできるんで?』
「言っただろ?指で視神経が切れるんだ、俺なら制御系のケーブルぐらい、簡単に見分けて切れるさ…ハッハッハ!」
『いや、それは漫画の話…って、旦那には些細な事か…』
閻魔は何やらブツブツと独り言を言いながら地獄へ戻って行った。
☆☆☆
「さて…やるか…」
スッ…。
ふむ。
これだと、転移魔法に近いスピードがでるのか…。
初めてにして、新しい発見だ。
だが、白衣以外の服装はチリとなって四散してしまった。
(これでも、ナノ細胞で作った衣服だったんだがな…)
これは計算外だ。
白Yシャツ、ネクタイ、スラックス
全部ダメになってしまった。
現在、インナーシャツ、パンツ、靴下、革靴という装い。
これではまるで、どこかのオッサラリーマンの泥酔野郎だ。
マヌケ姿にも程がある。
「んー。。」
パチン!
チリとして四散した衣服の残骸を、今のスピードに耐えられる黒の上下、黒のブーツという、一見忍者のような装いに改造してみた。
「これなら、白衣を着ても違和感はないだろう…ネクタイはなくなるが…」
さて…やるか!
シュッ…。
アンドロイドの数は、兵士、支援を含めてざっくりと3万。
広大な大地や山に、兵器が設置してあったにしては、数が少ない。
これが、制御の限界なのか、これだけですべての兵器操作を維持できるのか…。
(まぁ、関係ないか…)
「閻魔…兵器は…」
『へい!すべて獣人族領に運び込みました。鉱石は各国に分配してあります。尚、鉱石は、鉄鉱石から魔鉱石まで、様々な種類があったので、希望を聞いて振り分けました!』
この閻魔、有能かよ!
「ふむ。それでいい」
と、それがさも当たり前かのように返答をしておいた。
ハッハッハ!
「これから回収するアンドロイドは、地下の施設行きな…んー。発明実験課にすべて放り込んでおけ!あいつらなら、適当に何とかするだろう」
『は、はぁ…』
「よし!やるぞ!」
シュッ!
ブチッ!
ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!ブチッ!
俺は、片っ端からアンドロイドの制御系ケーブルを、人差し指で引きちぎっていった。
制御されなくなったアンドロイドは、そのまま地下へ転送されていく。
「ふむ。順調だな」
☆☆☆
『『『バカか!こっちはてんやわんやだよっ!』』』
by発明実験課一同
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