【番外編】とある分身体の独り言

俺は、とある部署の分身体である。

俺達分身体は、数字で管理…いや、個別を言い分けている。


そもそも、本体に俺達を管理する事はできない。

というか、管理する気はないのだ。


ただ、本体に反旗を翻すような不良品が生まれたら、即座に廃棄されるだけの事。


元々、10人の本体直属部隊が俺達の上司にあたるのだが、最近は数字に関係なく、ざっくりと能力を仕分けし、各作業に従事している。


軍隊に例えるなら、直属10人を将軍とし、副官、側近などが割り振られる事だろう。


だが!

本体のやりたい放題を支援するために作られた俺達分身体には、そんな上下関係なんか、ほぼ無意味なのである。


無意味と言っても、それぞれに役割はある。

…あるのだが、その各部署がカオスなのだ。


集団における規律や集団行動は意味をなさない。


理由は1つ。

本体が好き放題やっている事を、世界のシステムとして正常に起動させなければいけないから。


大々的に余儀なく変更を強いられている事柄を少し紹介してみよう。


①大気圏を本体の結界にしてしまった。

⚫︎これを、北半球に住まう人類全体にとして認識させなければいけない。


②貴族制度を廃止した。

⚫︎腐敗した貴族社会を撤廃したのはいいが、こんな広い世界をどう統治していくんだって話。

今、役職やら統治者の管理範囲の決定やらが最優先事項だ。

まぁ、領主的な役割の者は必要だろう。


③元々、アメリカ大陸ぐらいだった北半球の、本体が拠点にしていた大陸が、地球の大陸、島をすべて合わせて、その広さを10倍以上にしたような広さになってしまっている。

⚫︎こんな広い土地をどうしろと?


④3種属6ヶ国を、3ヶ国統括し、同盟国にして各種族の行き来をスムーズにしたまではいいが、今だに領域は手付かず。

⚫︎まぁ、これは潰す前に本体が南半球に飛ばされたのが原因なのだが…。


⑤偵察分身隊の調査で、支配神領域の両サイドには、未知なる大陸が広がっていると判明している。

⚫︎これについては、本体自体が認識しているかは俺達にもわからない。


これは、あくまでざっくりした内容だ。


だが、俺達の実務は、こんなに簡単には説明できない。


これから、各部署のカオスっぷりを紹介していこう。


☆☆☆


まずは【発明実験課】

作っているのは

金のなる木

猿も木から落ちる

木を隠すには森の中の


ことわざを現実にする発明と実験をしてるらしい。


「猿だけ落ちる木なんか作れるかよぉー!」

「木を隠す森って何だよ!普通の森でいいだろぉー!!」


ふむ。

言い分はわかる。


順調なのは「金のなる木」班だけか…。


「本体に、この世界に金鉱床があるとは聞いてたけど、純度高すぎだろ!これじゃあ、金地層だぞ!」


まぁ、金を取り出した空間に、この地下施設を作ってるわけなのだが…。


「どうした?順調じゃなかったのか?」

「最初はな…」

「というと?」

「金が取れすぎて、金貨に加工する手間を省くためにのなる木に改造したのだが…」

「ふむ。で?何が問題なんだ?」

「置き場がない」

「へ?ちなみに、今、何枚ぐらい?」

「金地層10%消化して、30兆枚弱」

「………ま、まぁ頑張れ」


としか言えなかった。


【スキル、魔法管理課】

「まーた新しいスキルを使ったぞ!」

「急げ!早くデータに保存だ!」

「これは魔法でいいのか?!」

「何でもいいからデータに収めろ!」

「誰だよ!♾️スキル、魔法♾️なんてデタラメな数値にした野郎は!!」

「文句を言うな!HP、MP♾️組は、消滅寸前まで、ひたすら♾️数値を下回らないように不眠不休だぞ!」

「だいたい、元々、本体の体内には♾️の魔力が宿っているんだから、無限に放出可能なのに、大気まで本体の魔力で満たして何になるんだ?」

「魔物から発する瘴気なんかも吸い込んで、自分の魔力に変換できるんだぞ?この部署、意味ある?」

「バカ!本来、本人に見せて、認識させるためのステータス画面に収まりきらない量の情報をここでまとめてるんだ!いわば、この部署自体が本体のステータス画面なんだよ!」

「画面じゃねーだろ?ステータス部屋だ!もし、気まぐれに『ステータスオープン』なんて叫ばれてみろ!データ化してないと、すべてアナウンス課が読み上げる大惨事が起きるんだぞ!」

「いや、本体はそんな事やらねーだろ?」



んー。

そっとしておこう。


【地形、建造物配置課】

こちらは、大陸を模型化して、パズルを組み立てるように配置に四苦八苦している。


「こっちの建物と建物をこっちに移してぇー…」

「まて、そうなると、ヨーコ様のエリアが離れるぞ?」

「いっそ、それぞれの管理エリアをまとめてみたらいいんじゃないか?」

「精霊族領は、ありのままでいいんだよな?」

「龍族のエリアを広げても、魔物の森はまだまだ広いぞ?」

「国の城壁と森の間は、あまり広げられないぞ?冒険者が困る」

「そうなると、スタンピードが起こったときに…」

「いや、その辺は龍族の娘達の采配に任せよう」

「だいたい決まったら、人類にそれがとインプットするぞ?」

「支配神の領域と両サイドの大陸は、こっちで弄れないってのがウザい」

「いやいや、それは本体の管理の範疇にないからだろ?」

「それぐらいわかれよ」

「「「あははははは!違いねぇー!」」」


あらあら、だいぶ…これ。


つか、人類の深層意識までいじるのか…。

ま、当たり前か…。


地球で解体改築、新築をするわけではないのだ。


いきなり景色や住む場所が変わったら、大陸中でパニックが起こる。


ここもなかなか大変だ。


☆☆☆


まだまだ部署はあるのだが、これから紹介する部署を最後にして、本体が手に入れたこの世界のシステムの裏側を察して欲しい。


【システムアナウンス課】

本体のカテゴリーが神となった事によって、新たに作られた部署。


いわゆるというやつだ。


しかし、担当するのは、あくまで本体の分身体。

つまりなのだ。


だが、一般的には女性のアナウンスが流れる。

…と、地球では認識されている。


男が聞くのに、おっさん声だとテンションがあがらないし、女性が聞くのにも、おっさん声ではキモがられて、これまたテンションが上がらない。


なので、本体は、男には美女を思わせる妖美な声で。

女性には、美男子を思わせる凛々しい声で。


と、姿が見えない事をいい事に、声帯を改造して本体の管理世界に流している。


そして、本体専任ではないので、本体管轄の人類全員のレベルに合わせて、取得した称号やスキル、魔法やなんかを、個別に聞こえるようにしている。


女性声バージョン

「レベルアップしました。次のレベルまで頑張って下さいね、〇〇さん♡」


男性声バージョン

「すごいよ!新しいスキルを取得したよ!上手く使えるように応援しているよ♡」


てな風に、機械音声システムを無視した、個人向けの聴き心地の良い音声と内容にしている。


そこまでしなくても…と思わなくもない。


あと、美少年バージョン、美少女バージョンの担当もいる。


1人で何人も担当しているので、声は普通でも、本人は汗だくなのである。


システムアナウンスを聞いてるみんなは、そんな苦労を全く知らないで、アナウンスが流れるたびに、目をハートマークにして、アナウンスを聞くために次のステップに向かって精進しているのである。


大事な事なので、もう一度言おう。


凛々しい男性声であろうが、妖美な女性声であろうが、美少年美少女声であろうが、その声を出しているのは、本体の姿をした俺達分身体の一部なのだ。


見えないとはいえ、聞いてる人達には同情をする。


ほんと、好き勝手にも程がある!


という事で締めておこうと思う。

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