第83話 天王神が俺を他の異世界に飛ばした理由

ドサッ…。


『やぁやぁ!君が天王神様に逆らった愚かな人間だね?』


「………。」イラッ!


『そう、敵意をむき出しにしないでおくれよ。僕はただの案内人なんだからさ』


「案内人??」

『そうだよ?僕は、この世界を統治する神の1人、知恵の神、チエという女神さ』


「は?知恵の神でチエ?安置すぎるだろ…」

『いやぁ、妖狐にヨーコって付ける君に言われたくないなぁ…』

「う、うるせー!!」


秒で揚げ足を取られた!

ちょっと恥ずかしい!!


(帰ったら改名だな…こりゃ)


『それはどうかな?本人達は気に入ってるみたいだからいいんじゃないかな?』


くそっ!こいつも心を読めるのか!


もさもさ頭に白衣という装い…女神と言われなきゃ、性別すら不明。


天使の羽を生やして、宙に浮いてなきゃ、神様とすら思えない物いい…。


だが、紛れもなく神様だ…天王神の名前を出すあたり、エセ神ではないのだろう。


そして、1と言う限り、この世界は、同じレベルの神が複数人で統治しており、その配下も多数存在する事を意味する。


つまり、ここは日本人の表現でいうところの、『正規ルートの異世界』という事になる。


そうであるなら、当然、ここには、事を意味し、俺もその中の1人に数えられている可能性があるという事だ。


まぁ、他の奴ら(転生、転移者)とは、飛ばされた経緯が異なるとしても…だ。


ドサッ…。


『何やってんのさ…こんな奴、さっさと追い出したいんだけど?チエ、何をボーっとしてんのさっ!!』


『いやぁ、こいつの思考が面白くて、ついね…』


黙ってたのは、俺の考え事を観察してたのかっ!

なんて性悪な女神だっ!


『いやぁ、好奇心旺盛と言って欲しいね…そこは。君は、実に興味深い』


シャキン!


俺は、死神のカマから精製した10トンメスを取り出す。


『タンマタンマ!もう、思考は読まないからさ…それはしまっておくれ。シャレにならない!』


『何言ってんの?さっさとクエストを…』


シュッ!

サクッ…。


『なっ!ちょっ!まっ…』


シュゥゥゥ…。


俺は、後からシャシャリ出てきて、偉そうに何かをほざいてる勝気な女神に向けて、メスを投げつけた。


結果は、眉間に命中、消滅。


まぁ、どんな女神だったかは、語る必要もあるまい。

もう、いなくなったし…。


『あーぁ…。自己紹介をする暇も無く消されちゃったよ…技術を司る神だったのに…』


ふっ…技術屋か…道理で短気なはずだ。


技術職は、どんな職でも、常に正確さとスピードが求められる。

結果、短気が多い。

上司は特に…だ。


より良い物をより早く、沢山作ってこそ、信用と実益がついてくるのだ。


ちなみに、手抜きは論外だ。

依頼主の目を盗んで、中抜きする、虚偽報告をする。

すべて論外。


ろくな結果にはならない。

まぁ、虚偽報告に関しては、技術職に限った事ではない。


脱税をしたり、裏金を作ったりと、悪い事をすれば必ずバレる。

どんな形でも、いずれは処罰されるのが世の常だ。


そんな悪習を撒き散らす可能性がある神を葬った俺は、神よりも神らしいとさえ思えてくる。


そう、これこそがなのだ…ハッハッハ!!


知恵の神が真っ青な顔をしているが、見なかった事にしておこうと思う。


うん、そうしよう。

それがいい…ハッハッハ!!


☆☆☆


ここがどんな世界かは、今だにわかっていない。


しかし、死神のメスは有効であると証明された。


神を殺せるなら、人類の肉体、霊魂も切る、もしくは消滅させられるという事だ。


ある意味、あの神は俺の実験に付き合ってくれたと思ってもよい。


どうせ、どこかで生まれ変わるんだろうからな…。


さらば…モブ女神よ!


とか思っていたのだが、神はどこまで行っても神らしい。


人間が、神に格上げされる事はあっても、その反対はないらしい。


ただ、統括する立場から一旦外されるだけ。


仮に、その神達をという総称で呼ぶとしよう。


統括神は、天王神を始めとする、原神達から選ばれた、言わばその世界の最高位の神。


それを、おいそれと降格にはできないのだそうだ。


原因は、何となく察した人もいるだろうが、俺の死神メスで消滅させられたという事。


俺の取り込んだ死神は原神であり、それ故に、俺も原神と同等の権限がある。


もちろん、俺の使う死神メスも同様だ。


だから、知恵の神は青い顔をしていても、俺に文句の一つも言えないで、こうして丁寧に説明をしてくれる。


ふむ。

実に気分がいい…ハッハッハ!


ドサッ


(まただ…)


この部屋に入ってくる奴らは、何故か全員、紙でできた用紙をどっさりと持ってくる。


これで3山目だ。


その内容は、医学に関する問題を中心に、物理学、科学、化学、帝王学…と、様々な分野の問題がびっしりと書いてある。


まぁ、要するにみたいなもんだ。


『いやぁ、技術神が迷惑をかけた。ワシは統括神01《ゼロワン》という、この世界のすべてを管理して、人類にまともな生活基盤を提供しておる』


「なっ!」

(統括神ってマジでいたわ…)


と思ったのは内緒だ。


『それでさぁ…この問題を、すべて解答してもらいたいんだよ…君には』


そこに知恵神のチエが、何の脈略もなく本題を切り出す。


ニヤニヤ…。

ニヤニヤ…。


2人の神が、俺を見ながらニヤける。


俺の唖然とした顔を見たいのだろう…。


だがっ!

残念だったな…唖然とするのはお前らの方だ!ハッハッハ!


「あー。。それな、もう全部解き終わっているぞ?プッ!」


俺は、そう言いながら、口に手を当ててニヤけ顔で返してやった。


『『え…え?』』


2人が、目を真ん丸にしながら問題を眺めていく。


『で、できてる…さ、採点しなきゃ…』


チエが青ざめた顔で配下らしき者に連絡をとっている。


そして、ゼロワンは言った。


『いつの間に解いたんだ?紙に触ってすらなかったのに…』


その言葉に俺は返答をした。


「お前が自己紹介をしている間に…ハッハッハ!」


『『えぇぇーーーー!!』』


「ギャハハハハ!お前ら、俺を舐め過ぎ…」


このやり取りに関しては、俺の圧勝だった。


ザマァ!


☆☆☆


『ぐぬぬ…そ、それでは、最後の問題用紙だ!天王神様から出された特別問題だ!解けるものなら解いてみろ!』


『と、統括神01様〜。それは、私達にも解けなかった超難問ですよぉ?この男に解けるんですかぁ?』


ゼロワンはドヤ顔をし、チエはマイペースに話しながら、どこか落ち着きがない。


つか、って、久しぶりに聞いたぞ?


地球の言語文化より、少し遅れてるんじゃないか?

この世界…。


あ、俺も使ってたわ…

まぁ、流行語ってわけでもないし、言葉文化の一部って事にしておこう。


ちなみに、俺が送られてきたには、窓がない。

扉もない。

ステンレスを思わせる金属製の天井や壁、床が見えるのみだ…簡単に言えば、何か大きなキューブの中に入れられている感覚…。


この世界の神達は、転移なのか瞬間移動なのかは知らないが、シュン…シュン…と現れてくる。


しかし、閉鎖された空間であっても呼吸はできている。

金属製のキューブ内だとしても、密閉されているわけではないようだ。


(まぁ、要するに結界のようなものか…)


などと、前言を撤回し、結論付けをして天王神からの特別問題とやらを見てみる。


問1

原神が収める異世界の大きさを、木星レベルから太陽レベルまで広げたのは誰ですか?

問2

大気圏を、勝手に自分の魔力で結界にしたのは誰ですか?

問3

北半球異世界の大気を、自分の魔力で満たしたのは誰ですか?

問4

資格もないのに医者を名乗り、死体や自分を実験台にして医術を学んだのは誰ですか?

問5

南半球の異世界は、元々1000以上の世界だったのに、異世界拡張により、10000以上にして、南半球の異世界に混乱を撒き散らしてしまった人物は誰ですか?

問6

地球神様ちきゅうしんさまの怒りを買い、肉体ごと地獄に落とされた人物は誰ですか?

問7

絶対神様の指示で、天王神が北半球異世界から、南半球異世界に飛ばした人物は誰ですか?

問8

異世界の常識に縛られず、予期せぬ行動ばかりしていた人物は誰ですか?

問9

原神の核を所持しながら、原神の仲間意識がない人物は誰ですか?

問10

最初に、南半球の科学文明の発達した統括神01が管理する異世界に飛ばされた人物は誰ですか?


なんだ?

地球神?絶対神?

原神の上に、更なる高位神がいるのか…。


どうりで、地球との接続が上手くいかないはずだ…。


絶対に、どちらかの神に阻害されている。

これは間違いないだろう。


そう、地球も他の世界から見れば、異世界なのだ。


つか、地球神ってのがいるから、地球に戻るすべがないのかもしれない。


これは予想出来なかった。


というか…。


この問題の答えは、もしかして、すべてじゃねーのか??


こうして、やってきた事を羅列されると、北半球の異世界…つまり、俺が飛ばされた支配神のいる異世界から、南半球(?)にある、この世界に強制送還されたのは、異世界の神として、至極真っ当な事だと言える。


「くっそ…言い訳ができねー!!」


意識してやってたわけではない。

好きなようにやっていただけだ。


それが、このような結果になろうとは思いもしなかった。


俺は、今の現状を受け入れるしか道はないのだとのであった。

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