第82話 天王神は俺の敵じゃぁー!!
目覚めると、そこは見知らぬ部屋の見知らぬ天井…。
(俺、まともに寝た事ないんだよなぁ…)
そう、俺はだいたいの場合、寝なくても大丈夫なよう、自分を改造してある。
まぁ、それまでは目覚めると、大抵の場合、目の前に溶液入りの大きな円柱型カプセルがあっわけだが…。
そう、よくあるアレだ。
っと。
ここからは、多少長い回想になるため、少し未来の☆印まで転移してもらっても構わない。
ま、念のため…。
で、回想が始まるわけだ。
元々、俺は変態な幼馴染とは違い、幼女にも…いや、人体そのものに興味がなかった。
理由は、ぶっちゃけ、機械いじりの方が楽しかったから。
なのだが、変態幼馴染が、幼女になるために、自らチンコを切って死んでしまうという、究極なバカをやらかした事件があり、それをきっかけに、俺を機械いじり好きから人体いじり好きへと変えてしまった。
いい迷惑だ。
まぁ、俺からしたら機械も人体も、大して変わらなかったのが救いだろうか…。
機械でいう部品は、人体だと部位であり、機械の故障は、人体における怪我、病気だと考えれば、なんのことはない。
ただ、人体は各種細胞により、自己修復機能が備わっており、肌は耐水性で、脆い内臓は筋肉や皮膚、あるいは骨などで守られ、多少の傷や病気などは、自然治癒してしまう優れた代物なのだ。
と、考えたあたりから、俺の人体への関心は機械いじりの概念を元に、より精巧で完璧な人体を求めるようになった。
人体の構造は、病院の霊安室に幾度となく忍び込んで、念入りに調べつくした。
そこで、見回りや、監視の目を盗み、早急に…且つ、後でバレないように、解体技術と縫合技術、そして、解体から組み立てまでのスピードを身につけ、その副産物とも言える、細胞は元より、大気中に漂う細菌、更に小さなウィルス、元素を見る視力を手に入れた。
人間顕微鏡とでも言えばいいのだろうか…しかも、任意で見える風景も思いのまま。
すべて見えた状態では、大気中に漂うあらゆるものが視界を邪魔するという弊害を回避するため、そのような機能も備わったのだ。
人体とは、機械とは違い、よくよく実に優れた代物だと言えよう。
人間や動物、その他、この世に生きとし生ける物は、そうして進化してきたのだと実感ができる。
そう、俺は人類が到達不可能である領域に進化したのだ…と、思う事にした。
そして、発見したのだ。
長い期間、保存されていたであろう、死体の中に潜む、生きた細胞を…。
肉眼ではわからない細胞…しかし、俺の死体いじりの経験則から、ソレが死んでいる細胞なのか、生きている細胞なのかは、はっきりとわかった。
細胞の持ち主は死んでいても、ソノ細胞は、生きようと足掻いていた…ように見えた。
それを持ち帰って培養していたのが、先程言った、円柱型のカプセルなのだ。
培養した細胞は、潰しても潰しても増え続ける。
まったく違う構造、細胞、DNAの物でも、馴染んで結合してしまう。
この細胞は、死ぬ事を決して諦めない。
だから、どんな部位を結合させても拒否反応なんか起こらない。
俺は、この細胞に『再生細胞』という名をつけ、自分の身体に移植した。
☆☆☆
とまぁ、それから自分の身体を実験体にし、紆余屈折があって今の俺があるわけだが、どうやら、天王神には、俺のあらゆる要望は任意で却下できるらしい…という事がはっきりした。
なんせ、俺は俺の意思に関係なく、どこかの部屋で眠らされていた。
そして、来たくもなかったココに送られてきてしまったのだから。
ボフン…!ボフン…!
「くそっ!閻魔とも連絡がつかねー!!」
俺は、緊張感のない音を出している掛け布団の弾力にこぶしを打ち付けるしかなかった。
この分では、自由に動き回れない、やりたい事ができない!
進化した俺の身体を実験体にし、更に人類として高みに昇っていた俺が、地獄という摩訶不思議な、本来、想像上の世界と認識されていた場所へ落とされ、そこでの生活に馴染んだあたりで、ひょんな事から魔素という未知なる物質に触れ、魔力、魔法という概念の存在する世界へと飛ばされた。
そして、俺の夢は広がる。
現代社会では出来なかったあらゆる事が自由にできる!
もっと素晴らしい実験や発明、生活基盤を構築できる!
と思っていたのに、これだ…。
これでも、地獄の閻魔を配下にし、次元牢獄、無限牢獄に捕らえられた魔王であったり邪神であったり、更には死神までをも、この身体に取り込み、三種族の
そうして、俺の求める自由なエンジョイライフは加速していくはずだった…。
だが!
これはなんだ!
何故、天王神にはいいようにあしらわれる?!
俺の取り込んだ邪神と死神が原神??
知らんがな!!
だから、原神として会議に出ろ??
知らんがな!!
そもそも、原神が次元牢獄とか無限牢獄とかに囚われていたのが原因だろうがっ!!
俺は、それらを自分の能力向上のために、有効活用しただけだっ!!
だが、なんだ?!
この、支配された感はっ!!
「あー!!イライラするぅーー!!」
天王神にいいようにあしらわれている現状が堪らなくストレスとなり、俺は、普段なら真っ先にするであろう、現状把握すら忘れてしまっていた。
頭に血がのぼるなんて、何年ぶりの事だろうか…。
いや、あんまり記憶にないな…それは。
人間、慣れほど恐ろしいものはなく、現状が普段の水準を下回ると、ストレスを感じる生き物なのだ。
高笑いをしていた上級国民の富豪が破産して、その日暮らしになって絶望感の中、酒に溺れて生きる屍になるがごとく…宝くじに当たって贅沢三昧をしていた奴が、金がなくなって犯罪に手を染めるがごとく…一度味わった高い水準は、中々下げられないものなのだ。
人間とは、そういう生き物だ。
斯くいう俺も、自由にやってきたツケが、何故か、能無しの国家公務員により、指名手配犯という、甚だ不名誉な身に覚えのない立ち位置にされてしまった。
だからこそ、現代日本の堅苦しい法律から逃れるために生命維持装置まで作って、法律に縛られない自由な時代へと体感ワープをする予定だったのだ。
その計画が壊され、行き着いた先の異世界で、新たにやりたいようにできるはずだったのが、またしても阻害された。
今の俺にしてみれば、エセ神も原神も変わらねー!って感じだ。
あの世界で、やる事はまだまだあった。
すべてが中途半端に終わっている。
「クソがっ!!」
現状、天王神の提示するクエストとやらをクリアしなければ先には進めないという事だけははっきりしている。
だがっ!!
絶対!絶対にヤツを許す気にはなれない!
こうなれば、ヤツが用意したクエストをこなしつつ、この世界を俺好みに染め上げてから次へ進んでやる!!
不本意ながら、今の俺にできるささやかな抵抗は、それぐらいしかないように思える。
天王神は、次々と世界をたらい回しにする腹づもりらしいが、必ず…必ず…。
もういい!好きにしろ!
と言わせてやる!!
最速で元の異世界に戻ってやる!!
ヤツに後悔させてやる!!
見てろよ!
俺を別異世界に飛ばした事を後悔させてやる!!
他の原神はともかく、天王神は俺の敵だっ!!
「吠え面かかせてやるぞ…クックック」
俺は、まだ知らぬクエストや、飛ばされてきた現在の世界について、しばらくの間、思考を放棄し、天王神に対する敵意をむき出しにしたのであった。
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