第72話 ドクターの予想を覆す白龍の真剣な告白
ザッ!
私が、ぶっ壊れた私の映像を見て、呆然としているうちに、全員…というか、ドクターをはじめ、数人が私を取り囲み、他の子達はホールに結界を張って、何やら物々しい陣形をとっています。
また、映像にあったみたいに暴れると思っているのでしょうか??
「ど、ドクター??」
「イノリ!今しかないんだ!悪く思うな!満足しきっている今なら、封印ができる!!」
「いったい何を…」
みんな真剣です…。
寂しい限りですが、映像を見る限り、悪いのは私。
封印されても仕方がありません。
「ふぅ…」
みんなの真剣な顔を見渡して、私は覚悟を決めて、目を瞑りました。
『『『『根源封印!!』』』』
カァァァァ…!!
私の周りにいたみんなから、同じ波動の魔法が放たれ、私の全身を包み込みました。
「クッ…」
根源封印とは何か…そんな事よりも、私の中の何かが、わずかな痛みと共に静まっていくのが分かります。
「よし!封印完了!!ふぅ…」
『『『『ふぅ…』』』』
ドクターのため息を合図に、みんなで汗を拭くジェスチャーでため息つくな!!
ヘロヘロだったみんなは、いつの間にか元気になってますしっ!!
「で?これはいったい何の騒ぎなんです?」
「お前、映像に映っていた光景と、お前がやっといた事、覚えてないだろ?」
「えぇ…まぁ…」
ドクターは語ります。
私はホムンクルスだったと。
そして現在、私は本来あるべき姿になってしまったと。
①ホムンクルスは、本来、魂を入れるか、人工的に人格を形成するかで性格が決まる。
で、私は後者だった。
(ふむふむ…)
②ところが、私が幼女の集まりに興奮したため、人体を形成していたDNAと魂が呼応し、一体化してしまった。
それが暴走した理由。
③私に追い回されながら、全員が念話でドクターからの指示に従い、私が大人しくなるのを待っていた。
あぁね…それで、示し合わせたように動けていたわけね…と、納得する私。
④だから、私が映像を見て、放心した瞬間に手際良く円陣が出来、封印をする事ができた。
つまり、今現在、私の中には本来の私の魂が封印されている?
④地獄で厳重に封印されていた魂が、私と融合した事で、再度の魂摘出は不可能となり、こういう形にするしかなかった。
「その魂って…?」
「俺の幼馴染の魂…」
わぉ!
やっぱり、私はドクターの幼馴染だったんだ!
ちょー嬉しい!
「幼女を愛し、幼女にしか興味がなく、限りなく幼女の味方…」
「なるほどぉーー!!だから、私にも反映されているんですね?」
「……」
ドクターは、少し考える仕草をし、こう言いました。
「…コホン…それ以外には、何の躊躇もなく、残虐非道も辞さない、極端な性格…動物や爬虫類の部位を解体して、擬似女の子を製造しちゃうマッドサイエンティストだけどな…まぁ、それが、本来のお前だ」
「え??」
何それ…私って、ドクターの幼馴染だった頃、どんな女の子だったのよっ!!
…と、根本的に間違った認識をした私がいました。
「封印は、完全なんですか?」
「いや…おそらくは、封印が解除されるトリガーはあると思う…満月に狼男が変身するように…」
「そのトリガーとは??」
「んー」
『『『『ゴクリ』』』』
周りにいる全員から、言うなオーラが半端なく出ています。
「ま、まぁ、そのうちわかる」
パチン!
ドクターは、返答をはぐらかし、指を鳴らして、全員を元の姿に戻してしまいました。
(あぁ…なんかもったいない)
☆☆☆
『ふぅ…とりあえず、フェアリー形態が戻ってきたわい』
精霊女王様の、天使の羽根、可愛かったのに…!
(チッ)
『バカモン!!私が羽毛系の翼を持ってしまったら、それこそ精霊ではなく、天使になってしまうではないか!』
あ!自画自賛しちゃったよ…この人…プッ!
『『『『『女王様…』』』』』
と、哀れんだ目で全員から見つめられて、真っ赤になる女王様でした。
その後、女王様に、『お主らは、悪魔のような悪魔と悪魔のような神じゃのう』という、わけのわからない名称をもらい、それぞれがそれぞれの場所に帰っていきました。
ホールに残ったのは、私達と、女王様、侍女2人、そして…何故か白龍様。
「ようやくひと段落つきましたね…もう、本題に入ってよろしいですか?」
あら?真っ白な妖精天使ちゃんは白龍様だったのですね?
白龍さん曰く
中央王国のギルドから、ドクターと私に緊急出頭が要請されているとの事。
更に、王宮からの招集もかけられていると…。
その報告兼、相談しようとしていた矢先に、私の魔力暴走があり、私自身の暴走があり、有耶無耶になりかけていた。
と、呆れながら説明をしてくれました。
そもそも、3王国の領主は龍族の
初めて聞きましたがっ!
龍族が人類の頭になった場合、信仰対象となってしまうため、あくまで国を守護し、加護を与える立場になっているとの事。
これは、人族と龍族の寿命にも関係しています。
長寿の種族が国を運営する場合、後に生まれてきたり、移住してきた種族は、必ず覇権を求めて争う。
それならば、いっその事、人族に国営を委ね、見守る方が平和だという結論に至ったそうです。
その割には、ずいぶんと杜撰な、暗躍していた貴族連中が沢山いたようなきもしますがねっ!
(んー!重い話になってきましたねっ!)
また、精霊族も同じスタンス。
違うのは獣人族。
2国の王は、獣王と獅子王であり、ゴリゴリの武闘派軍事国家となっております。
何故なら、獣人族領の民は、全員、獣人族だから。
人族に国営を任せられない…否!
任せる事がそもそも不可能!
獣人族の統治は獣人族によってなされなければいけません。
「そんな事は些細な事なんです!ドクターとイノリさんには、早急にこの事態に対しての解決をしていただかねばなりません!」
「それは何故ですか?」
この質問には、正当性があると思います!
「貴方達が、樹海に身を置き、人族のルールを無視するからです!」キッパリ!
要するに、私の暴走も、魂の融合も、白龍さんにとっては些細な出来事…予期せぬハプニングに過ぎなかったのです。
何んか、ごめんなさい。
「という事で、まずはギルドに行ってもらいます!その次は王宮!これは勅命です!王宮に行ったら、ドクターの懸念する、あちらの大陸がやろうとしている暴挙も説明されるでしょう!行きなさい!」
「断ったら?」
「ちょ!それは不味いのでは?」
「俺、人に縛られたり、独自のルールを押し付けられるの、嫌いなんだよな?」
まぁ、ドクターは、そういう人でしたね?
「では、何故、ギルドに登録し、あまつさえ、いきなりS級冒険者の地位を獲得したのですか?王宮のルールを無視し、王家を壊滅寸前にしたのですか?」
ごもっとも!
「これは、すなわち、貴方が行なった数々の自由主義を通した尻拭いです!責任をもちなさい!我々では、解決できない事案が山積みになっているのです!」
「意味がわからん!」
白龍様は、「行けば分かりますよ」とだけ言い残し、立ち去って行きました。
はてさて、何か良からぬ事態になっている事だけは分かりました。
ドタバタからの、マジな事案…ドクターは、どのように解決していくのでしょう?
「イノリ、お前も一緒に来い!今回は、ヨーコ達、従者は連れていけない…」
ドクターは、いつもより神妙な面持ちで指示を出しました。
ヨーコ達も、いつもならわがままを言う場面なのですが、ドクターの指示に素直に従っています。
これから、何が待っているのでしょうか?
不安と期待に胸を膨らませ、私はドクターと共に、久々に中央王国に向かって転移をしました。
シュン!
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