第68話 ドクター抜きでドクターを粛正する?

さて、次の仕切りは天王神。

はてさて、何が始まるのやら…。


『まず!あやつは、10歳の時、幼馴染を亡くした事がきっかけで、医者になろうと決めた』


あー!将来の夢あるあるですよね?


『そして、ある細胞を探し求めた…そう、再生細胞だ』


ふむふむ。

これは確か、地獄で見つけたとかなんとか言ってましたね。


『その過程において、現世において活性細胞を発見…自分に植え付け、様々な栄養分を摂取する事なく、体内に直接投与する事で、体内の成長を促した』


へー!


『その間に死にかけたのが100回以上、毒に侵されたのが50回以上、そんな無茶をして、無理矢理手に入れた大人の身体…活性細胞で脳細胞を活性化し、身体を大きくし、大学に潜入、司法解剖をやりながら、人間の部位を集めて人体の仕組みを研究しながら、幼馴染のDNAを培養…活性細胞が崩壊し始めた時に、人道から外れていると指名手配…身体と顔を変えながら逃亡…研究は続けていた』


へー!

なんか新鮮ですね…ドクターのヒストリー的な話。

やっぱり、死にかけた事は何度もあるんですね…まぁ、そんな事だろうとは思いましたが…。


『ここまでで、すでに日本において、法律的には犯罪者として認識され、神界の掟としても、掠め取った人間の部位で、新たな人間を組み立てるなど、やってはならない禁忌を犯している!』


はい、それはもう!

ドクターが異常でみなさんが正常ですよ?


『ここまでで、申し開きはあるかね?』

「いやぁ、初耳な事が多すぎて、何も言う事はありませんよ?私、まだ生まれてませんでしたし…ちょっと話は聞きましたけど」


申し開きって、何か私が悪いみたいじゃない!

失礼ねっ!


『コホン…そういう異常な経緯であったため、肉体ごと地獄に落とされたのだ!わかるかね?』

「まぁ、なんとなく…」

『そこで、地獄を我が物とし、現世に留まる霊や妖、その他を地獄の住人とした』

「はい、それは聞いています」

『さらに、冥王を亡き者にし、冥界と地獄をつなげた…西洋妖怪や悪魔族が入り乱れているのは、その為である!』

「あら?冥王様はどちらに?」


これも初耳ですが、なんとなく想像はできますが…。


『奴が喰らった』

「やっぱり…ドクターって、何かっていうと、食べて栄養にしちゃうんですよね…ウフフ」

『笑い事ではない!!人間風情が、地獄で好き勝手に300年もの歳月を費やし、闇の世界を掌握し、再生細胞などという物を発見して不老不死になるなど、神にも背く行いをするという事が、どれだけ重罪か分からぬお主ではあるまい!!』


そんなに怒鳴らなくても…顔真っ赤ですよ?

天王神様…ウケる☆


☆☆☆


ここまでを整理すると、ドクターが冥王を食べた事により、冥界や地獄、悪魔界の境がなくなり、現世に漂う諸々も、すべて地獄の住人として取り込んでしまったという事。


生死を司る神々が怒っているのは明白であります。


ま、私には関係ないんですけどね!


『しかし、何の因果か、我々は神核を取り戻してもらい、一部の最高神を除いて復活できたのは確かなのだ…加えて、支配神による人造神じんぞうしんを使っての転生転移誘導も阻止できた』

「えと…支配神とは??結局、ドクターのどこを粛正したいんですか?」


もう!!

まったく要領を得ない!!

イライラするぅーー!!


『奴が何かをするたびに、未来が大きく変動するため、未来視が出来なくなっておる!すでにできていた未来設計図鑑も破棄せねばならなくなった!神界と天界との調和も乱されておる!世界設定が固定されない!』

「だから?すみませんが、結論を言っていただけますか??」

『奴の体に取り込んだ様々な要素を取り出して、こちらの許容できる範囲の能力に留めるのだ!これすなわち粛正なり!!』


とか、ドヤ顔してますけど…。


「無理じゃないですか?みなさん総出でも…ドクター自身の設定も、かなり変わってきてますし…新月になると力を失うとかいう設定も、今は反対に新月に力が増幅するとか、霊魂は死神メスで切り取って食べちゃうとかやってますし…」

『何故じゃ!我々は神なるぞ?!奴から能力を奪うのは容易い!!』


「ドクター、さっき話に出ていた死神と更に邪神も食べて取り込んでますし…」

『え?』

「支配神とやらが、神族領で悪さをしているのは分かりました…が、それはドクターの獲物となっております!邪魔はしないでいただきたい!」


延々と続く、不毛な議論…もといに終止符を打つべく、私ははっきりと言い放ちました。


「そんな事より、ドクターの暴走を止める手立てを考えて下さい!能力を奪うのではなく、制御できるように!!でないと…」

『でないと??』


、神界や天界の存続は保証できません!!ドクターは、制約されるのを嫌います!だから、神族領にいるすべてに敵意を持っています!分かりますか??ドクターに何かをすると、間違いなく皆さんはを持たれます!よろしいので??」


私は訴えかけます。

ドヤ顔で、ドクターのやってきた事を延々と語り、粛正をするとか、はっきり言って愚策です。


粛正したいのなら、もっと早い段階でのです。


当然、その段階は、とうに過ぎています。


神々は、ドクターを暴走させないように、また、制限をかけないように配慮するしかないのです。


「ヘタをしたら、あなた方全員が反対に粛正され、悪くすれば排除されますよ?、本物の神には敵意がありません。支配神とやらの命は保証できませんが…」

『…………』


そうそう、こんな上から目線で『粛正ー!』とかほざいてないで、ドクターのやる事を静観するのが正解なのです。


良くも悪くも、ドクターは興味がなければ敵対はしません。

だからこそ、地獄の住人、妖怪、獣人族他、多種族領の住人は、ドクターの好きなようにさせているのです。


私は、どこまで行ってもドクターの助手であり、パートナーであり、理解者でなくてはならないので、誰に対しても姿になってしまうのも仕方ないでしょう。


つか、ドクターには自由にやらせるしかないのは事実ですしね…いや、マジで。


好きに実験をさせ、自由に行動させる。


そうしないと、黒龍のように解体されて組み立てられて蘇生させられるという憂き目にあってしまいます。


まぁ、その大半はという、子供じみた好奇心からなのですが…。


「ですから、粛正とか物騒な事を考えないで、反対に刺激しないように協力体制を確立する方が懸命だと思うのです」


『『『『ゴクリ…』』』』


あー!やっぱりこうなりますよね?


「で?ドクターは今どこに?」

『え?』


天王神から、ギャグのような汗が滝のように流れています。


まさか…!

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