第61話 ドクター!団体さんのご到着ですよ?
ドクターは、3種族合同の国境線の関所である、城壁を設置し、最後の仕上げとしました。
城壁の門は、もちろん6門。
あたかも、それぞれの国に入るがための関所という体裁を保っています。
これまでは、神族領と3種族を隔てる運河が、関所代わりとなり、大陸を隔ててきました。
しかし、関所が出来た事で、運河は実質上の共用領域という認識が持たれるようになりまさた。
いわゆる、所有海域という形となりました。
豆知識として、運河がある限り、運河はあくまで海の河川であり、当然、この広い大陸の左右には広大な海が広がっております。
現時点でのドクターには、興味が無さそうなので、海の利用は、当分先になりそうです。
話は逸れましたが、この関所、あくまで『ダミー』。
関所を通り過ぎれば、60からなるダンジョンの入り口があります。
もちろん、それぞれの国に対して、10づつのダンジョンという配置。
これだけなら、『まぁ、ありがちだよね?』となります。
しかし、ドクターの考案したダンジョンの正解は6つ。
精霊族領の関所から入り、10のダンジョンから正解を導き出したとしても、必ず精霊族領に辿り着くかは、運次第。
まぁ、出口はシャッフルされているので、絶対に目的地には辿りつかないんですけどね?
3つの関所には、通行料が必要となり、1国に対して、1人金貨100枚。
精霊族領→100枚。
龍族領→300枚。
獣人族領→200枚
ダンジョンに入るには、挑戦1回につき1人金貨10枚。
ぶっちゃけ、ボッタクリです!
ただし、亡命者は素通り。
国民として生きていくために、人口の少ない精霊領の関所前で思考を読まれ、経歴を調べられ、隠蔽されてないと判断された者は、転移陣で、精霊族領に直接送られるのです。
ドクター自身に都合の悪い輩からは金をむしり取る。
神族領に見切りをつけた住民には、神族領での情報を対価に、受け入れをする。
犯罪者?
もちろん、即、地獄行きですよ?
こうして、神族領の力を徐々に削ぎ、神族領より力をつけると共に、ドクターの敵となりうる、『押し売り正義』、『ご都合主義の法律を謳う輩』など、ドクターの自由を奪いそうな奴らを掃討するつもりなのです。
では、何故、ドクターが直接、神族領に乗り込まないのか…。
それは、魔族領と同じぐらい…いえ、それ以上の敷地を有すると思われる神族領。
そして、術者を『神の宝玉』で擬似神とし、転生転移者を、任意で神族領に召喚させるという、暴挙を平気でやれてしまう、常軌を逸した神族の民度。
これらが、まだ不透明で、闇雲に喧嘩を売るわけにはいかない。
だから、現時点では、防衛面を固め、相手の戦力や目的を探るにとどまっているとの事。
まぁ、本音は『神族領民を揶揄いたい』なのでしょうけど…。
いつか、自ら、神族領に乗り込む可能性もありますよね?
ドクターなら…あ!心配しないで下さい!
その時は、私もお供しますので☆
☆☆☆
「ところで、何故、そんなにゆっくりしてるんですか?」
ただ今、ドクターは、浮遊要塞のてっぺんで、サマーチェアーとパラソル、丸テーブルを用意し、サングラスをかけてダラダラとトロピカルジュースを飲んでいます。
まるで、浮遊要塞がクルーザー代わり。
結構シュールです。
ちなみに、魔の森で破壊された要塞は『アルマゲドン』
現在いるのは、『アルマゲドンダッシュ』。
『A'』というマークがついています。
『'』が、リアル寸法で1mm。
んなもん、遠目でわかるかぁーー!!
『アルマゲドン』は、元々ドクター専用で、全自動。
『アルマゲドンダッシュ』は、他の浮遊要塞同様、獣人族領の科学者が滞在しています。
「ん?まぁ、やる事はやったし、ちょっとやる事を決めかねててなぁ…」
「珍しいですね?ドクターにしては…で?何を決めかねているんですか?」
「モンスターの改造をするか、国々の視察ををするか…かな?」
ドクターらしいですよね?
この辺は。
ドクターは国政には関わらないですし、かといって、中央国に先代の王を移動させたための、国政は気になる。
山脈を取り払った事による、国々の公益、財政、国民の生活水準改善など…樹海側に面した、防衛都市に関しても、気になるところです。
ドクターは、『やりたい事』と『やらなくちゃいけない事』の狭間で悩んでいるようです。
しかし、進言はしなくてはなりません。
最重要案件を…。
「ドクター?そんな事に悩んでる暇はありませんよ?」
「え?なんで?」
「関所に、言いがかりレベルで文句を言っている軍隊が上陸してきましたし…旗印からして、違う勢力の国、3国が別々に…ですかね?」
「ちょ!パーティーじゃなくて?」
「はい!軍隊です!神族領に国がいくつあるか知りませんが、少なくとも上陸したのは3国だと思われます」
「人数は?」
「50人づつ、計150人。帆船10隻に軍艦5隻、潜水艦3隻です」
揉め事は、当然入国料。
全員分で、15000枚。
そりゃあ、文句も出るでしょう。
でも、ドクターには関係ありません。
「入りたかったら、金を払えばいい」
元々、神族領の民衆は入れたくないのです。
ドクターにしてみたら、どっちに転んでも損はない…という事です。
魔王やら邪龍やらを取り込んで、神族領には入れないと思っていたドクターも、死神、邪神を取り込み、一応、神属性になった為、ドクターの方から出向くのも可能なのです。
「ふむ…なら、タダで通してあげて…もちろん、ダンジョンも」
「え?いいんですか?」
「いいよ?お土産持ってきてくれたんだし」ニッコリ
はて?お土産とは??
☆☆☆
「よし!俺が接客しよう!」ニタリ
うわっ!すんごくわっるい顔してる!
「ちょっと行ってくる」
「お気をつけて」
シュン!
しーらないっとっ!
とか言いつつ、ドクターが何を考えてるのかが気になります。
ドクターが接客??
お土産??
怪しすぎるでしょ?これ!
「チーコ!」
『あいあい!』スッ
流石と言うべきか、従者の中でもっとも使役している眷族が多いチーコ。
確実に、私よりも目や耳は効くようです。
『すでに、あちこちに眷属を配置しておりますゆえ』ニッコリ
「そ、そうするよね?チーコなら…」
いえ、チーコだけではありません。
すでに、ドクター率いる地獄の住人、こちらに来ている妖怪従者は、全員、ドクターに感化され、『悪ノリ』という、自重からは程遠い感性になっております。
そう、もちろん私も…プッ。
「みんなを集めて!精霊女王様の大樹ホールに!女王様には私から伝えておくわ!最重要案件よっ!」
『ラジャー!』
こうして、チーコに伝言を頼み、私は精霊族領に向かいました。
「…というわけです。全員で観察しませんか?」
『それは面白そうじゃのう!外資を得るのも悪い事ではない』
いや、そこかい!
あんた、精霊のくせに銭ゲバなんかい!
とは言いませんよ?
精霊族の3人、獣人族の2人は、ドクターの投薬改造によって、ずいぶんと私達寄りになっていますしぃー!
まぁ、元々、精霊族は獣人族よりも長寿であり、龍族よりもイタズラや楽しい事が大好きな種族。
それに加えて、魔王(故)から受けていた禁呪による、命の危機から脱した解放感が、悪ノリを加速させているのです。
女王様も、側近を従者とは思っておらず、何かにつけて3人で行動しているようです。
『元々、我々は長寿…不老不死になっても、あまり影響はありませんね』
とは、メイド従者のつぶやき。
こうして、大樹にあるホールには、私達、初期メン5人と、精霊組3人、四聖獣夫婦8人の、16人が集まって、ドクターの接客風景を眺める事にしました。
モニターは、精霊女王様特性、妖精モニター。
極小妖精が列を成し、空間に大画面を形成。
送られてくる思念波を読み取って、体を色とりどりに変化させて映像化する、天然の液晶モニター。
魔法映像とかは使わないの?って思うぐらい、魔法世界ではアナログと言ってもおかしくない方式でした。
映像は、もちろんチーコの眷属からの思念通信。
皆、それぞれにポップコーンやら飲み物やらを手に、観戦体制に入ります。
鑑賞ではありませんよ?
あくまで観戦です!
あのドクターが接客をするのです!
LIVE中継なのです!
ここは、すべて他人事と割り切って、楽しまなければもったいない!
さて、ドクターは…。
城壁の真上に立って、わっるい顔でニヤニヤと団体さんを眺めています。
ワクワク…。
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