第60話 ドクターの仕込んだ過剰戦力が必要なワケ。

「で?ドクターは何がしたかったんですか?」

「肉体改造…」

「何のために?」

「自衛のため」

「本当は?」

「実験のため…」


はい!本音いただきました!


ただ今、再び、龍神殿の広間に全種族を集め、ドクターの尋問をしている最中でございます。


尋問官は私、イノリでございます。


ヨーコをはじめ、元々、妖怪出身だった従者は、特に気にはしていませんが、問題は、四聖獣と獣王、獅子王さんです。


10日に及ぶ、『修行』という名の投与実験。

その最終段階での、『性能テスト』。


とりあえず、なるための修行だと偽り、注射の薬液成分を開示しないで投与し続けていた事を謝罪させました。


『こやつ、またやりおったか!』と、精霊女王様も呆れ果てています。


獣王、獅子王は、以前にも同じ手口でので、ダメージはさほどでも…いや、むしろ喜んでいる節がありますので、放っておきますねっ!


問題は、四聖獣の皆さん。

そう、オスの方です。


まぁ、ただ呼び方が世界によって違うだけらしいのですが…。

神獣、聖獣と呼ぶ世界が多いけど、幻獣と呼ぶ世界もあるのだとか。


ぶっちゃけ、どーでもいいです!

そのへんはっ!!


そう!問題は、聖なる獣が、『魔王核』と『魔法核』を摂取させられたという事。


メリット

やたら強くなった。

デメリット

魔王因子を取り込んだ事で、聖なる力が出せなくなった。


はい!デメリットの方がヤバめ!


「投薬では無く、ちゃんと手術したら、そんな副作用はでないように調整できたんだがなぁ…」

とか、涼しい顔でイケシャーシャーとドクターには、お仕置きが必要なようです!


「チーコ!」

『はい!…頭突き!』


ボムン!ボムン!


「グヘッ…ちょ!これ、やめて…悪かったから…」


ドクターの『これ』とは…。


もちろん、レッドマウスライムの拘束…からの、ゼロ距離頭突きです。


チーコが使役している『レッドマウスライム』。


通常形態がネズミ型。

色は青、黄、赤の3種類。

青→マウスライム 時速60km

黄→イエローマウスライム 時速80km

赤→レッドマウスライム 時速100km

雑食性、同色なら合体可能、形はノーマルなスライムと同様、自由自在。

捕食、討伐されないように進化した、今や魔の森の最凶種。

体当たりをして、獲物を捉えて捕食する。

下級の魔物なら穴が空いて即死。

連携が出来、ゼロ距離からでも最高スピードが出せる。

命名 ミーコ。


以上、ミーコの観察日記より。


普通の人間なら、死に至るダメージですが、ドクター相手なら使えますよね?これ…。


☆☆☆


『で?それほど戦力を高めて、何を企んでおる?』

精霊女王様は、相変わらずちっさ可愛いのに、結構鋭いです。


「いやぁ…そろそろ、俺に恨みを持つ輩が、団体で来そうな気がするんだよなぁ…で、国を守り、民を守り、樹海を守り、安息を守りたいかなぁと…」ニッコリ


『ほうほう。して、どういった輩なのじゃ?』

「それはもう、やりたい放題な輩ばかりで…てへ☆」

「………」


開いた口が塞がりません。

どの口が言うのでしょうねっ!!


ドクターが、綺麗事を並べる時には、大抵の場合、本音は別にあります。


ドクターは続けて語ります。

「特に、こいつらが厄介で…」


死霊術師→いたこ

=霊を現世に留め、弄ぶ輩。


召喚術師→陰陽師

=モンスターを使役して、にしたり、精霊(式神)を使って弄ぶ輩。


ほらねっ!

ある事ない事ばかり、じゃなくて、ない事ない事を吹き込んでるよ…この人!!


要するに、妖怪、妖、幽霊、アンデッドを、まとめて地獄管理にして、術で契約をさせないようにしたから、恨まれてるって話ですよ!


つまり、本来あるべき職を無くしたのはドクター。


妖怪や妖はモンスターじゃないし、無理矢理使役なんかしないし、奴隷扱いもしない。

そもそも、式神は精霊じゃないし、降霊術も死霊術じゃないからね?


と、知らない事だと鷹を括って、ずいぶんと話を盛って盛って盛りまくってますよね?


唯一、大笑いしている金龍銀龍さんにはお見通しみたいですけど…プッ!


ただ、必ずこちらに来るように仕向けていた、擬似神がいなくなった事で、こちらに来る事ができるのは、陰陽師ぐらい…ん?


もし、自分の魂を飛ばして、『魂転生』とか『魂転移』ができる人がいるなら、敵は、ワンサカ押し寄せてくるかもしれません。

チート能力を携えて…。


そう、朝起きてみたら…目が覚めたら…的な、です。


もし、そのままではなく、姿を変えて、チート能力を持って、パーティーなんか組んじゃって、冒険者として来ると、メチャクチャ大変な事態になるのではないかと思います。


ただでさえ、神族領に転生転移をさせないようにして、おそらくは、すでに恨みを買っているであろうドクター。


そこに、ドクター以外には、能力者が手を組んでしまっていたら?


んーっ!

ちょっと考えたくないですね…マジでっ!


☆☆☆


「まぁ、世界に魔王がいるなら、勇者もいて、その勇者パーティーに的を絞れば、回避はできるんじゃないですか?」


と、最悪なケースを頭の隅っこに押し込めて、ごく当たり前な事を言ってみました。


「まぁ、そうなんだけど、視力のいい俺でも、魂転移とかされたら、見分けはつかないぞ?」

そーなんだ?


『まぁ、そもそも、その魔王が居ないのじゃがな…』ボソッ

『ワッハッハ!!確かに!!すでに勇者パーティーに用はなくなっておるわい!!』

『『『『あははは!!ウケる!!』』』』


みんな、好き放題言っております。


ドクターが地球から逃げてきた理由

①医師法違反で指名手配されていた。

②霊的商売の人に賞金首にされていた。

③地球の法律がうざったいから。

④のんびりと実験を楽しみたい。


以上、大まかに並べると、こう言う事になります。

もっとも、②については、初耳でしたが…。


「今、閻魔に頼んで、世界に散らばる彷徨う霊魂の類は、地獄に搬送してるから、死霊系、降霊系の奴らは、ほとんど戦力外なんだが…」

「やなり、問題は陰陽師ですか?」

「だな…」


陰陽師は、陰の力で妖を使役し、陽の力で式神を操る。

たぶん…いや、知りませんけど?


時には、陰陽術で次元や時空を飛び越え、魂でさえ操る術を使う、地球の歴史において…いえ、日本の歴史において、『魔法使い』にもっとも近い存在だと思います。


ドクターは最初から、その可能性を見越してダンジョンを作り、浮遊要塞を作り、主要メンバーの能力底上げを画策した…という事になります。


確かに、山脈を削り住まいを作り、交通の便も良くなり、総合的には各国にとって、有益なにはなったと思います。


だがしかし!

使い古された言い回しで申し訳ないですが、再度!!


だがしかし!


これはすべて、ドクター個人のが根底にある事を忘れてはいけません!


ドクター特性の、『魔改造薬(仮)』の頻繁な投与も、過剰な修行メニューも…すべてです!!


しかも!しかもですよ?

自衛というのはあくまで建前…だとおもいます。

間違いなく、本音は『面白い』から。


これしか考えられません!


こういうのを、本当の『やりたい放題』と言うのですよ?


はぁぁぁぁぁ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る