第53話 ドクターの秘密と性格が明らかになりました。

獣人族の始祖が地球人であり、日本人だったとして…それを機に文化が発展していったとして…疑問はまだ解消された訳ではありません。


①獣人族が生まれる前、龍族と精霊族は、世界をどう感じていたのだろう…と。


②そして、増えた人類が、何故獣人族の始祖だったのだろうかと…。


女王様のテンションに水を差すつもりはありませんが、3種族という肩書きになるには、獣人族の歴史は、あまりに短いと感じたのです。


それを解消しなければ、今後に影響するのでは?という不安が拭いきれません。


なんせ、獣人族達の始祖たる地球人、日本人は、今尚、神族領に召喚され続けているのです。


「ふむ、獣人族が誕生するまでは、この大樹海は我ら精霊族と龍族が治めておったと聞いた事がある…いつの間にか、金龍の提案により、三等分されたのじゃ…」

「うむ…そのへんは、ワシから話そう」


現役を退いて、会議にも不参加だった金龍が、下座から静かに語らい始めました。


マイクもないのに、部屋が震えます。

体のあちこちにダメージが入ります。


(いったい、どれだけの魔力を秘めているのやら…)


「お爺さん、そんなに威嚇しなくても…私が話しましょう」

「しかしじゃ…まぁよい、頼んだ」


銀龍は語ります。

獣人族の成り立ちを…。


「「ゴクリ…」」

始祖の話を聞けるとあって、獣王も獅子王も、銀龍にちょー食いついています。


神族領から逃げてきた人間は、ある程度文明を築けるレベルまで子孫を残したあたりから、爆発的に人口が増え、争いが絶えなくなっていった。

平和主義者や弱者は淘汰され、虐殺さえも厭わない国が多数出来上がった。

そこに、神族領から脱出を試みた転生者や転移者…もちろん、常人ではなく、全員が、何らかのチート能力を持った日本人であったが、そのを目の当たりにし絶望する。

平和主義だった者、弱者を集め、解放軍を結成。

争いを終わらせるために、力を欲した転生者は、常人を更に超えた、『獣人化』の魔法を使い、身体を強化して悪辣な先人に立ち向かっていった。

『獣人化魔法』を使った転生者が、実質、獣人族の始祖となった。

悪に染まった人類は淘汰され、地獄へ落とされて、獣人として生まれ変わる事となる。

国は二分化され、それぞれに王を立てる事で、元凶を作った、悪に染まった人類や神族に対抗しうる力を求める軍事国家として、今の国家制度となった。

つまりは、獣王や獅子王の、本当の意味でのご先祖様。


「だから、獣人族は強者主義であり、非戦闘員は、龍族領、精霊族領に流れ、他種族国家となったのじゃ…獣人族にある文献も、兵器も、古代遺産を受け継いできたものだと聞いておる…その節は、地獄の閻魔にも世話になった…まぁ、そんなところじゃよ」


「「ありがとうございます!」」

あー!獣人族の2人、号泣しております。


絵面が、非常に悪いけどねっ!


☆☆☆


「閻魔!」


スッ…。


『へい!旦那!何か御用で?』

「お前、金龍と銀龍に面識があったのか?」

『へい…何故それを??』

「いや、そこにいるからさ…」


「なんと!!閻魔殿ではないか!これはいったい!!」

だーかーらー!

金龍さん、オーラ抑えてって!!


「息災でしたか?」

『へい!今は、旦那の元で、地獄の管理をしております』

「「へ?」」


(プッ!)

威厳のあった老龍2人が、面食らっています。


ちょーウケる!!


「お前、いろいろあったんだな」

『へい!まぁ、昔の事ですがね…やった事といえば、魂を浄化し、送り返したぐらいでしたし…』

「へー」


『転生者、転移者は、能力的に地球に返すわけにも行かなかったんで、獣人として生まれ変わらせておりましたですよ?』

「俺は?」


『だんなぁー!旦那は特別でしょうに…普通の人間は、自分を使って人体実験はしませんし、10歳で体型変化を自由にはできませんからね…あのまま地球にいたら、間違いなくでの、人体実験を受けていたでしょうし、旦那なら、それを利用して、更なる実験を進めて、日本の治安を崩壊させていたでしょう?早めに地獄に落として良かったと思っておりますよ?』

「お前…いや、否定はしないが…」


ちょ!まって!ドクター!

そこは否定しとこ?


つか、閻魔さん!

懐かしさのあまり、情報を漏らしすぎてるのでは??


全員が固まってますよ?


サラッと、何故、ドクターが、15歳で司法解剖の仕事をしていたのかが判明してしまいました。


ドクターは、元々、私の…いえ、人類の想像を軽く超えていたのです。


そこに、地獄での300年…さぞ、やりたい放題だったでしょう?


『あ、それより、前に依頼されていたモノをお持ちしました』


コトン…。


それは、丸い何かを入れた皮袋、2つ。


「あぁ、ご苦労…廃棄場には、何かいいモノ届いてるか?」

『今のところは…へい、これが目録です』

「ふむ、ご苦労…もし良かったら、金龍銀龍を連れて、地獄巡りでもさせるといい」

『へい…あ、みなさん、お邪魔しました』


スッ…。


閻魔さんが消えた後に、訪れる長い静寂の時。


全員が、ドクターを見つめて固まっています。


「そんなに見るなよ…照れるじゃねーか!ハッハッハ!」


「「「「「………」」」」」

「でだ!みんなにプレゼントがある!早いモノ勝ち!」

あ、ドクター…この空気をスルーした!!


「なんじゃ?もらえるならもらうぞよ?」

流石は女王様!

好奇心旺盛!!


でも、私の予想が正しいなら…。


「選定神の神核と邪龍核だ…ちょっと手に入れる機会があってな…」


「「「「いやいやいやいや!!」」」」

ほらね…。


「邪龍核は分かる!魔族領に居た、討伐してもらった奴の核じゃろう?」

「黒龍さん!大正解!!」

ドクター、こういうノリ、本当に好きっすね…。


「しかし、神核なぞを抜き取られた神は、もはや神ではなく、ただの魔法使いじゃぞ?」

女王様!甘い!甘いです!


「いや、魔法核は、俺が全部取り込んだ…すべての総称が『神の宝玉』だったかな?忘れた…ハッハッハ!」

「なら、そやつは、ただの神官じゃな…流石に同情するぞよ」


(はい!私も同意見です!!)


「黒龍、邪龍核いらね?取り込んだら、暗黒龍になれるし、俺にはダメージを与えられる力を身につけられる《かもしれない》》」ニヤリ

「うむ…考えておこう…」

いやいや!即決で断った方がいいですよ?


「で、神格は、精霊女王?精霊神に」ニヤリ

「うむ…我も考えさせてもらおう…というか、お主、その選定神に恨まれてはおらぬか?」

「バカ言え!恨んでるのは俺の方だ!!」


(ですよねぇー)


私は、場が収まるよう、簡潔に事の経緯を説明しました。


ドクターが、キレそうだったからです。


「なるほど…それで、たまたま来たんだな…普通は、必ず神族領経由であるしな…」

ウンウンと頷く獣王さん…納得するの早すぎる!!


「でだ…目録によると…」


邪神

厄病神

貧乏神

魔王5体

幻獣4体、聖獣4体(いずれも能力は同じ)


「碌なのがねーな…あ、あのクソ詐欺師がきたら、貧乏神の神核を埋め込んでやろうか…で?どこの世界の奴らだよ…幻獣や聖獣を次元牢獄に入れた奴は…これ、粛正案件だぞ?」ブツブツ…。


「幻獣とは?」

「聖獣とは?」

「へ?」

「「「「ゴクリ…」」」」


「朱雀、玄武、白虎、青龍…これは、東洋龍な…が、2セットだ」


「「「「ブゥゥーー!!!」」」」


そりゃ、みんな驚きますって!!


「確かに粛正案件だ!」

「ふむ!けしからん!!」

獣王、獅子王、あえなくドクターに賛同。


「解体して、取り込んでみるか?」

「「は?それだけは、やめたげて!我々よりも格上の存在なんだし!!」」


ほんと、それ!!


「そうか…邪龍は俺が丸ごといただくとして…まぁ、またどこかの魔王が封印されたみたいだから、またみんなを強化してやるよ…ハッハッハ!」


邪龍をいただくな!

魔改造を企むな!!


私の中にあった、ドクターの初期キャラが完全崩壊した瞬間でありました。


ほんと、とんでもねーな!

発想が!!


知ってたけどさっ!!

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