第54話 ドクターの獲物とトンデモない真実。
「よし!とりあえず、ダンジョン対策はいいな?細かい調整、変更は各自任せる!侵入者はすべて排除!罪なき亡命者、金のない善良な旅人には、高待遇で、こちらの国民、戦力にするようしむける!よし!決まり!!」
ドクターは、何を思い立ったのか、早口で話を強引にまとめあげ、会議を終わらせてしまいました。
「いやいや、待たぬか!お主、本議題に入る前に…とか、ゆうておらなんだか?」
ナイス!女王様!!
「あぁ!そっか!!ヨシ!宿題にしよう!」
本議題が宿題??
意味不明なんですけど??
「議題は、『一人称をそれぞれ個性的にする』…だ!精霊女王も、『我』から変えたかったら、変えていいんだぞ?」
「「「「「「はい?」」」」」」
「ちなみに…」
ドクター→俺
私→
ヨーコ→ボク
ミーコ→あたい
レイコ→
チーコ→わっち
「…って感じだ」
だそうです。
本議題って、それかよっ!!
つまらねー!!
と、全員が思った事でしょう。
「ところで、その4人は今どちらに?」
白龍さん、良くぞ聞いてくれました!
全然、連絡がつかないんですよ!
みんなと…!
「ん?魔の森で、狩りをしてるぞ?元々、ダンジョンにあった『ダンジョン
ちょ!!
「なんと!ワシらも言って良いかの?修行がしたい!」
「兄者!交代で頼む!俺もやりたい!」
流石は戦闘種族…。
「あぁ、いいぞ?『死神結界』は外しておく!
と、のたまっております。
「もうちょい敬意を祓ってもいいんじゃ?」
「大丈夫!じきに、俺の従魔獣になるから!ハッハッハ!」
「は、はぁ…」
もう、言葉がでません。
「では、諸君!俺は、これから地獄経由で、幻獣聖獣達を連れて、狩りに行ってくる!」
「ドクター!狩場は?獲物は?」
焦って聞きましたが、これの機を逃すと
本当の意味での『行方不明』が確定してしまいます。
「えと…ひとつは決定しているんだが、あとは幻獣聖獣に聞かないと分からない…とりあえず、奴らを次元牢獄に入れた世界にカチコミに行く!んで、ついでにちょっと、世界掃除をしてくる予定…かな?」
「………」
サラッと、おかしな規模の話をしないで下さい!!
「つか、それ…狩りじゃなくないですか?」
「だからさ…狩場は決定してるんだって…」
「どこですか?獲物は??」
「えと…」ダラダラ
気まずいのでしょう…めっちゃ汗かいてますし!
「で?ど•こ•で•す•か??」
「す、すまん!事後報告で頼む!!」
シュン!!
「あ!逃げた!!」
よほど、言いたくなかったのでしょう。
次元を切り裂かず、転移で姿を消しましたね!!
行き先がわからないので、追尾転移もできません。
イラッ…。
「閻魔さん!!」
『へ、へい…
「ドクターの動向を教えなさい!知っているでしょ?」
『いや…その…』
「………」ギロリ
『ごめんなさい!!』
スッ!
あ!閻魔も逃げた!!
くそおーーー!!
☆☆☆
ドクターの、恐ろしくしょーもない議題も終わり、みんなは、やれ修行だ、やれ狩りだと、それぞれ散り散りになっていきました。
遺跡宮殿に残ったのは、精霊女王、金龍銀龍。
黒龍白龍以下、他の参加者は、それぞれの役割、住処に帰っていきました。
「やれやれ…今度は何をする気なのやら…」
私は、頭を抱えて椅子に座り直しました。
ドクターが狩りに行く…。
それは、普通の狩りではないでしょう。
また、とんでもない事をしでかす予感しかありません。
『傍受遮断結界!!』
そんな私をよそに、金龍が部屋の中に、膨大な魔力で結界を張りました。
(はて?)
その魔力のオーラが凄すぎて、私には、どれだけ強力な結界が張られたのかすら、分からない程でした。
「やれやれ…ようやく本音で話せる」
精霊女王様?何を言っているので??
「イノリさん、あなたは知らなくてはならない事があるのです」
銀龍が静かに話を進めます。
「うむ…お主だけが、あやつを止められる、唯一の要じゃからのう…」
私には、金龍銀龍、精霊女王様の意図がまったく見えません。
ただただ、唖然と流れに任せる他ないような雰囲気です。
「まずは、我が説明しよう!元妖精女王、現精霊女王として…」
「は、はい…」
精霊とは、最初、小さな淡い光の妖精として誕生し、長い年月をかけて、人体を形成し成長し、妖精となる。
更に長い歳月を過ごし、内包する魔力を高め、魔法の研鑽を積み、世界を渡り歩く事で、進化をしていく。
エルフ、フェアリー、ドライアド…進化の過程で、様々な種族に変わって行くが、その中でも、より優れた者が妖精王となる。
本来、精霊とは妖精の上位種であり、全世界に散らばる妖精を統べる能力を持つ。
しかし、妖精王に関しては、精霊全てを掌握する権限が与えられる。
さらに、妖精王になったものは、精霊王の元で修行をし、適正があれば精霊王の次代として認められる。
「それが我じゃ…」
「えと…話が見えないんですが…」
「つまり、全世界とは、お主の言う異世界全てであり、我の権限は、その全てに及び、森羅万象、全世界の精霊、妖精を通じ、あらゆる事が見渡せる、干渉できる…その分、もちろん責任は重くなるがの」
ちっさ可愛い女王が、そんな凄い人だとは知りませんでした!つか…。
「それって、もはや神の領域では?」
「そうじゃな…だから、神核を…とか、あやつが言い出した時には、かなり焦った」
「つまり?」
「そんなものを取り込んだら、許容を超え、暴走してしまうわい」
女王様は続けます。
本来、過ぎた力は、制御できて初めて己の力となり得る。
だが、身の丈に合わない力を取り込めば、巨大化したり、自我を失ったり、異形になったりと、力の代償を払わなくてはならなくなる。
「ふむふむ…あ、でも、それだったら…ドクターや私は…」
「そう!お主らは、いくら力を取り込んでも、その兆候がない…何故かわかるか?それは、我々にも分からぬのじゃ…」
「いえ…ただ、ドクターと私は、細胞ごとに人格があると…だから、自立型だと言っていましたね…」
「「「それかっ!!」」」
3人が、ハモりながら目を見開いています。
「普通は、細胞は人格が操作するものであり、自我は持たぬ…つまり、細胞の数だけ取り込む事が出来、その分の能力向上が可能となる…のかもしれん」
あれ?言ってませんでしたっけ?
☆☆☆
「イノリさん、先程、女王より話があったように、今の彼女は森羅万象、現在、過去、未来が見えるようになっています…それは、若くして、精霊女王になった程の御方だからこそであり、それ故に、あらゆる次元、時空の精霊、妖精に干渉できるのです」
「ちなみに、私も同じように、世界に干渉できます」
「ワシも同じじゃ…あと、全世界に点在するドラゴンの総括じゃな…自我をなくした、モンスター化したドラゴンは管轄外じゃが…」
「ちょ!」
金龍、銀龍さん??
「貴方方は、いったい…」
「我々は龍神家族という立ち位置です」
「マジっすか!!」
「で、本題なんじゃが、あやつが、己の体を使って、あらゆる実験をやり出した時から、未来が見えなくなった」
「へ?」
どういう事??
「あやつは自由すぎる」
「はい、それは十分に承知しております」
「しかも、悪意も他意も、大義名分もなく行動しよる…あやつにとっては、もはや異世界だからという概念もないじゃろうて…」
「確かに…地球にいた時も、ここに来てからも、何故か平常運転ですね…」
つか、女王様、言いたい放題っすね…。
「で、我々は考えた…あやつを、目の届くところにおかねばならないと…」
「つまり?」
「お主らが、こちらに来ると分かった時から、過去に遡り、数千年の時をかけて、この世界に滞在し、待っておった」
「マジっすか!!」
「「「大マジ!」」」
ちょ!
とんでもない事を聞いてしまいましたよ!!
「あやつが、この世界に来た事で、今後、世界がどういう経過を辿るのか、多少なりとも把握できるのではないかという、一縷の望みにかけてな…」
「なんか、すみません」
これで、女王様があっさりと魔王因子の入った薬を盛られた事も、白龍さんが捕らわれていた事も、黒龍が解体された事も、龍族があっさりと樹海を手渡した事も、金龍銀龍が、今まで静観していた事も、納得がいきました。
「では、今、ドクターがどこで何をしているのか、分かりますか?」
「無論じゃ…はぁ…」
金龍さん?何故溜息を??
「あやつは、各世界に滞在している転生、転移を司る神を狩り尽くすつもりなのじゃ…」
「え?狩りって、獲物は転生転移に関わる神様全て?」
「「「そうじゃ!」」」
なんてこった!!
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