第51話 ドクター担当のダンジョンは攻略不可??
『『ぬぉ!なんじゃこりゃぁー!』』
ほら、言わんこっちゃない!
獣王には、黒い羽根の生えた翼と、任意で伸び縮みする黒い爪。
状態異常無効化に、黒光りする、身体硬化能力。
シンプルに、強靭化に徹した改良…いや、改造。
獅子王は、獣王と同じく黒い翼が…ただし、ドラゴンの翼風、厨二マントが、翼に変化する仕様。
ご丁寧に翼には、後ろから見て左右に獅子王と書いてあります。
ドクターなりに、獅子王の厨二心を尊重したようです。
流石、日本人かぶれの獣人族。
笑いを堪えるのに必死でした。
更に、ツノが2本生えて、
状態異常無効化、身体強化能力の倍化。
獅子王は獣王と比べて、見た目は魔王と言われてもおかしくない風貌になっています。
しかし、何故だか、2人とも上機嫌。
「あのぉ…ドクターのこういった類の薬は、持続時間とか関係なく、細胞に定着するんで、死ぬまで、このままですよ?精霊女王さんなんか、不老不死になりましたし…」
『なんと!不老不死の薬があるのか?』
「いや、やめといた方がいいかと…お2人の場合、今のところ、副作用的なものはありませんから」
『副作用とな?』
「はい、精霊女王様の、羽根の色は、ドクターにも予想できなかった副作用です」
『『………』』
と、その事実を聞いた2人は、何とか思いとどまったようです。
『ところで、精霊女王が言っていたダンジョンとは?』
『ドクター殿も、ずっと気配がないし…』
「実は、かくかくしかじかで…」
『『なんと!!』』
私は、ドクターのダンジョン計画を話して聞かせました。
「ドクターが、今いないのは、おそらく、大規模なダンジョン制作に関する何か…内容までは知りませんが…」
ちょ!
2人とも、目が輝いてますけど?
(まぁいいか…一枚噛みたいんですね?2人とも…)
「ちょっと待ってて下さいね…情報を集めてみます。お二人は、その情報を元に、噛みたいなら、自己責任で噛んで下さい!」
『『おぉー!!感謝する!!』』
なんでそんなにウキウキしてんの?
ダンジョン制作の目的すらわからないのに…。
☆☆☆
という事で、集めた情報がこちら。
『精霊女王』
樹木の根をかき分けて進むダンジョン。
あちこちに点在する宝は『回復ポーション』『全耐性ポーション』。
精霊族なだけあって、やはり魔法薬が中心のようです。
モンスターは配置せず、迷路型にしてトラップを大量に投入するとの事。
樹木の根をかき分ける事で体力消費。
トラップで、各種状態異常。
ポーションをゲットできなければ、ゲームオーバー、死に至る。
感想
容赦ない。
『ヨーコ』
森型で、モンスターを倒しながら進むダンジョン。
各種モンスターは魔石を残して消えるタイプを、魔の森で大量にゲットしたものを投入。
オーガ並みの強さを持ったゴブリンがメイン。
でも、魔石は地獄へ転送、ドクターの資金源に。
迷路、トラップあり。
ラスボスは、考え中。
クリアさせる気はない。
感想
オーソドックスだけど、ちょっとありえない。
(魔の森のモンスターって…いったいどんな生態系になってんの?)
『ミーコ』
森型で、魔の森で捕獲した大量のネコ系モンスターが休みなく襲いかかるダンジョン。
主に、ライオン、トラ、パンサー、ジャッカル。
大量の子猫を配備。
子猫を殺したら、自分が死ぬ。
魔石はヨーコ同様、挑戦者に渡す気無し。
休憩ポイントなし。
ラスボスは考え中。
感想
過酷すぎワロタw
『レイコ』
鍾乳洞型で、氷エリア、マグマエリアが交互に点在するダンジョン。
宝は氷の中、ただし、手を出した瞬間に凍りついて死ぬ。
マグマエリアは、ひたすらマグマの海、足掛かりは、飛び石のみ。
落ちたら当然死ぬ。
ラスボスはいない。
最後の難関は、分厚い氷の扉に内包されたマグマ。
破壊すればマグマで死ぬ。
感想
入りたくない。
『チーコ』
洞窟型で、吸血コウモリエリア、吸血ヒル、吸血カラスエリア、吸血Gエリア。
ラスボスはいない。
出口の扉前に、盃があり、血液を100L入れると開く。
感想
カラスもGも吸血仕様とか怖すぎる。
「だそうです」
『ふむ、で?ドクター殿のダンジョンはどういった仕様なのだ?』
「さぁ?聞いてみましょうか?教えてくれるか、分かりませんが…」
『ふむ。頼みましたぞ!少し興味があるわい』
「あ、はい…」
流石は脳筋兄弟!恐れ知らず!
私は知りたくないですよっ!!
☆☆☆
要望通り、ドクターとは念話でコンタクトをとりました。
『お?久しぶりだな…獣王と獅子王は、アレ飲んだか?』
「はい、それはもう…躊躇なく」
『あははは!!』
「って、今回は、違う要件で…今いいですか?」
『あぁ…ちょっと休憩中だからな』
(え?ドクターが休憩??)
「つか、ドクター!今、どちらに?」
『要塞都市だが?』
「どこの?」
『A』
「実は…」
『あぁ、いいぞ?5人と一緒に作ってもいいし、新しく2ダンジョン用意してもいい』
「で、ですね…ドクターのダンジョンなんですが…」
『あぁ、今、クリアアイテムを制作中だ…俺のダンジョンは、簡単だぞ?至ってシンプル!アイテムを集めて、出口の扉に設置したら出られる…な?』
「まぁ、確かに…」
え?ドクターにしては、難易度が低いのでは?
『でな?あーだこーだ…褒美が、俺とのバトルって感じだ…今しばらく時間がかかる』
「あ、そーっすか…頑張って下さい」
やはり、ドクター!
やる事が半端ない!!
『どうだった?』
「え、えぇ…聞きはしましたが…聞きたいですか?」
『『もちろん!!』』
『ドクター』
洞窟迷路型の、探索系ダンジョン。
モンスターは配置しない。
トラップも配備しない。
ひたすらアイテムを集めて、出口に設置するだけ。
出口までたどり着いたら、褒美(?)として、ドクターとのバトルができる。
勝ったらクリア。
「ここからが本番です!」
『『ゴクリ…』』
クリアアイテムはジグソーパズルのピース。
圧縮金属によって、限りなく重く硬くした、厚み5m mの10000ピースパズル。
1ピースの大きさは1cm、1kg。
模様はなく、いわゆる『食パン』と呼ばれる類の、ピースの形を観察して組み立てていくタイプのパズル。
総重量10トン、しかも、散り散りに10000ピースをランダムにダンジョンに仕込んでいるから、そうそう組み立てながら進むことは叶わない。
迷路を探索し、ピースを見つけてルートを進んでいく。
ルートは、時間によって変化していく自立型。
仮に、途中で組み立てて、仮置きをしていても、自立型の迷路が自在に姿を変えるので、同じ場所にあるとは限らない、埋まる可能性もある。
感想
あまりに無理ゲーすぎる!
結論
誰も彼も、クリアさせる気がない。
『ち、ちょっと考えさせてくれ』
『そ、そうだな…』
あ、やる気なくした…プッ!
その、ピースの加工に手間取っているんですね?
どうせ、ピース自体も、既成の形ではないのでしょ?
私なら、ドクターのダンジョン以外はクリア出来ると思うのですが…流石にドクターのはね…。
はてさて、果たして、誰がこのダンジョン企画(?)に挑戦し、クリアできるのでしょうか?
私は嫌です!即、諦めます!
いや、マジで!!
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