第50話 ドクターからの手紙と共用された情報。

そこで、獣王が一枚の紙を精霊女王に差し出しました。


差出人は、ドクター。


(まーた逃げたのでは?)

と、思わなくもなかったのですが、今回は、マジのマジで、忙しいから、獣王に伝言係をやってもらったようです。


•••••••••••••

前略

3種族の王達よ!


以下の取り決めについて、良く話し合ってくれ。

これは決定事項であり、反論は許されないと心して読め。


①6ヶ国の防衛、警護は浮遊要塞にて、獣人族が担う事。

②精霊族領の住民は作物と生活用品を、龍族領の住民は魔物の素材と動物と生活用品を、獣人族の住民は武器、兵器、日用品、魔物の素材を各々提供し合い、交易体制を確立する事。

③国境の縛りをなくし、各国間に差別や争いのない平等な国作りを目指す事。

④有事の際には、3種族間の枠を越え、互いに協力し合い、対応する事。

⑤上記に反論がある場合、もしくは守れなかった場合、俺が介入するので、覚悟するように。


以上!


署名

獣王  ライオネス

獅子王 ライオロス

龍王  ブラッキング

精霊王

•••••••••••••


『交易をせよとな?まぁ、山脈がなくなった事で、やり易くはなるじゃろうが…』


ドクター!

何て無茶な事を!


要するに、『みんなで力を合わせて仲良く暮らせ』って事ですよね?


『あぁ…互いのメリットは大きいが、あまりに急すぎる』

確かに!獅子王さん!


『今まで、何百年と続いた体制を…』

分かります!女王様!


『あの方を敵に回せるか?ワシには無理だ…山脈がなくなった事も、あの浮遊要塞にも、絶大なメリットがある』

私にも無理です!獣王さん!


『確かにな…山脈に住まう者、行き交う者にとっては、良くなった事も多いでの…一考の価値はあるやもしれぬ…』

いやいや…女王様?


最後に獣王さんが、女王様にトドメを刺しました。


『女王よ…これは提案ではないのだ…決定事項なのだよ…我々は、この内容を、いかに国民へ伝え、実行するか…というのが問題なのだ…諦めて署名をしてくれ』

『う、うむ…ちなみに、これに従わなかった場合…いや、やめておこう』


はい!女王様、賢明な判断です!


従わなかったら、ドクターは間違いなく、すべてを『蹂躙』するでしょう…って、こんな事は、口が裂けても言えませんが!


こうして、なし崩し的に、3種族領の協力体制運営が決定したのでした。


上から目線な手紙、容赦ない条件、山脈にあったであろう各種鉱脈やダンジョンの無断取得(正確には)。


ほんと、やりたい放題ですねっ!


『『『はぁぁぁぁぁぁぁ…』』』

3人は、私の顔を見た後、お互いの顔を見合わせて、深い深いため息をつくのでした。


私をドクターの代わりにするの、やめてもらっていいですかね?


☆☆☆


「っていうか、みなさんにもがあったのですね?」

『当たり前じゃ!我にも、フェアリーという立派な名がある!』

「あぁ…ですよね?」


だけどねっ!!


そう!

署名欄に、各自の名前が載っているのです。


「名前のニュアンスからして、獣王さんと獅子王さんは、兄弟なのでしょうか?」

『うむ、正解だ!』

獣王さん、そこでドヤ顔されても…。


とはいえ、確か、龍族も皆家族で、領の3ヶ国も、兄妹で構成されていたように思います。


『イノリ様、龍族は元々、長寿の上、最強種族の、いくら放任主義だとて、無駄な争いは好まぬのじゃよ…』


龍族を、最強種のとおっしゃいましたか?


そのへんは、譲る気ないんですね?


治安維持のために、家族統治を推奨してきた。

互いを高め合うために、山脈で分断していた。

獣人族は、高め合うために、両国をまとめて、2人で統治してきた。

龍族の中心に位置する『第二国』が内部から腐ってきていたのは知っていたが、干渉はしなかった。

ドクターが、大粛正を行なった為、第二国の憂いはなくなり、人類的には安定するようになった。

第二国の王妃は再婚せず、第一国の親、つまり、先代の王を第二国へ移動させた。

山脈を取っ払っても、支障がなくなった。


との事。


「ちょっとタンマ!!」

思わず、タンマとか言っちゃったよ!!


「第二国??先代王が移動??初耳なんですけど!!」

『あぁ、そもそも、先代国王が居た国が、龍族領の中心国家であったのよ…我々の国との連携も取りやすかったしな』

『あぁ、その通りだ…まぁ、今や第二国が中心みたいになっているがな…あの城は反則だぞ?』

獣人族領のお二人が、こう説明をしてくれました。


確かに、あのの象徴たる城に酷似した、建て直された城は反則だと思います!


ちょー目立つし…。


しかし、理由は『中央の国が中心となる』という、安直な理由ではない気がします。


もっと単純な…利己的な理由。


そう、たぶん…間違いなく、その理由は


『ドクターが訪れたのが、中心の国だったから』


これです!はい!


『にしても、あの気高い龍王が、この件に関しては、すべて意向に沿うという表明をしおった…イノリ様と言ったかな?何か知っておるまいか?ワシは其方にぶっ飛ばされた故、そのドクターとやらより、イノリ様の方に忠誠を誓いたいところなのだが…』

「………」ギロリ

まだ、根に持っていらっしゃる?


『いや、我々は力がすべての種族故!他意はないでござる!!』

獣王さん、焦って『ござる』とか言っちゃってるよ!

ウケる!!


「まぁ、いいです…実は…」


私は、

黒龍の悲惨な解体と蘇生

中心国の大粛正

邪龍討伐

帝国…もとい、魔族領の壊滅

魔王討伐

『魔の森モンスター』の移植

『死神属性』獲得…それで何をしたか

これから何をしようとしているのか


等、全容がわからないなりに説明をしました。


『『『………』』』

はい、全員、固まりました。


『な、なるほど…』

『そうじゃ!あやつは、そういう男なのじゃ!!』


邪龍討伐は龍族からの依頼、魔王討伐は、精霊女王を助けるため。


『命は助かったが、この羽根を見よ!美しかった七色が、黒一色じゃ!!』

「でも、引き換えに、とんでも能力は手にできたんですよね?」

『う、うむ…』


ちょっとはフォローしておかないとね…。


『『なんと!!』』

って、副作用に反応してんじゃねーよ!!


この!脳筋兄弟!!


☆☆☆


『あ、忘れるところであった』

と、獣王が女王様に差し出したのは、クリスマステイスト満載な、女王様の体型には少々デカい、プレゼントの箱。


嫌な予感しかしません。


『ほう…奴から我にとな?』ニコリ


いやいやいやいや…女王様!

これ、罠だから!!

少しは警戒して!!


ビリッ…パカッ。


箱を出して、出てきたのは…箱。


ビリッ…パカッ。

ビリッ…パカッ。

ビリッ…パカッ。

ビリッ…パカッ。


出てくるのは、少しづつ小さいサイズになっていく箱箱箱…。


(やっぱり!)


『なんじゃこれは!!いつまで経っても箱ばかりではないか!!』

「これ、地球で流行ってた時期があるんですよね…マトリョーシカ風のネタプレゼントです」

『『なんと!!ご先祖様の世界でとな?』』


え?反応するとこ、そこ??


あぁ…そうでした。

獣人族領は、地球の技術が代々、継承されて、今の軍事国家になったんでしたね…。


『えぇい!めんどくさいのじゃ!!箱はすべて消えよ!!』


ボシュン!


はい、一瞬でマトリョーシカ箱は消えて無くなりました。

魔法って便利ね…。


後に残ったのは、2本の怪しげな小瓶と、一枚のメモ。


••••••••••••

女王へ

ダンジョンの準備、はよやれ!

俺は、徐々に進めているぞ?

••••••••••••


『わぉ!そうであった!忘れておったわ!!…という事じゃ!獣王に獅子王よ!それではの!!』


シュン!!


『『女王様!お待ちを!!』』


シュン!!


『『………』』

「………」


黒羽根メイドの従者さんは、女王様に付いて行きました。


残された私達3人。

そして、メモと一緒に入っていた2本の小瓶。


小瓶のラベルには『おいしいジュース』と書かれています。


「………」

明らかに怪しい…。


『『ゴクッ…プハァー!』』

「え?」


まてまてまて!おっさんおっさん!


風呂上がりのドリンクみたいに、腰に手を当てて飲んでんじゃねーよ!!


「この…日本人かぶれのドアホ獣人族がぁー!!」

『『へ?』』

「へ?じゃなーい!!勝手に何してんのよ!!」


『何をそんなに怒っておる?ほれ…』

『勝手ではない!ほれ…』


『おいしいジュース 獣王のん』

『おいしいジュース 獅子王のん』


と、瓶には、ご丁寧に名前が書かれていました。


「マジで??」


つまり、獣王、獅子王、それぞれに合わせて、を投与したという事。


それとなく、ドクターもドクターですが、それを何の躊躇もなく飲む2人も大概です。


後でどうなっても、知ーらないっと!!






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