第48話 ドクター発案の浮島要塞は…フッフッフ!
私は全面的に、軍事国家の要請を受ける事にしました。
ある野望を胸に…。
その野望を果たすため、あえて地獄には行かず、ドクターとの接触も控えました。
まずは、地獄で作っているであろう、施設、開発拠点…浮島に、兵器開発以外の用意が揃うのを待ちます。
もちろん、兵器開発に必要な物資は、地獄から産地直送、地獄での作業と平行して、開発を進めてもらっています。
ドクター視点では、私が科学者達を説得して、開発に携わっているように感じるはずです。
実のところ、ある条件を出して、好き勝手に開発してもらっています。
イマイチ、ドクターより私の方が恐ろしいという、全体の空気を感じますが、そのへんは、今は我慢です。
浮島は5島…ドクターは、すべてを空中要塞にする気なのでしょう。
まぁ、その発案には、私は関与いたしません。
いくつでも作ったらよろしいです。
私の目的は、別にあるのですから!
コンセプトは『ドクターが私に土下座をして謝る』です。
地獄で開発を指揮しているであろうドクター。
軍事国家上げての兵器開発に《《一枚噛んでいるか》私。
断然、私の方が有利なのです。
何故なら、空中要塞の要は、当然、兵器そのものであり、それに私が関与しているという事実は変わらないのですから。
しかし、油断はできません。
ドクターはある意味、化け物じみたチート野郎であり、こういう面白おかしい企画には、ノリノリなるのが常だからです。
ヘタに勘ぐられるような仕草をしたら、地獄からでも飛んでくるでしょう。
それだけは回避せねばなりません。
私は最新の注意を払い、開発されていく兵器に、小細工を施します。
見学、監査、その他、開発工場に足を踏み入れる機会を作り、開発している科学者、技術者達にも気づかれないように、あらゆる兵器に触って歩きます。
科学者達に出した条件がこれ。
『開発、製造は任せます。しかし、どんな場所にも立ち入る事を許可しなさい』
ぶっちゃけ、設計したのがドクターなので、機密漏洩とかいう、物騒な話にはならないとは思いますがね。
むしろ、重要機密は私個人が勝手にやっている事であり、誰にも知られてはいけない内容ではあります。
そう!ドクターに土下座をさせるために!
☆☆☆
製造所にしばらく通い詰めて、最初に目をしたのは、搭乗型の飛行騎兵。
簡単に言えば、飛行能力のある搭乗型のロボット。
浮遊要塞から出撃できる、直に身につける甲冑ではない搭乗型。
脱出機能搭載…飛行型のモンスターに対して、有効な戦力です。
地上に配備されるであろう、戦車や戦闘機は、何故か片手間に製造されていました。
軍事国家と言うだけあって、作り慣れているのでしょうか?
元々あった兵器は、流石に見せてもらえませんでした。
まぁ、興味もないですが…。
そして、何より驚いたのは、数えるのも面倒くさくなる程の、大量の砲台、砲身、弾薬…もとい、ミサイル。
私がある細工をしたのは、飛行型騎兵と、戦車、戦闘機、ミサイルを発射する砲台…ではなく、司令室のスイッチ。
本来の地球文明からすれば、これは紛れもなく規格外であり、浮島に直接設置して建造すべき兵器であります。
ドクターが後で、能力を使って『ゴリ押し搭載』をするのでしょう。
それしか考えられません。
つか、それを見越して作らせているのでしょう…間違いなく。
科学者や技術者が、目を輝かせて製造しているのは、やはり飛行型の騎兵。
ある種の人達にとっては、『ロボットはロマン』らしいですからね…その筋の人々にとっては、時代を超えても、世界を超えても、求めるロマンは、いつも同じだと言う事です。
そちらには、搭乗部に細工を施しました。
これで、戦車、戦闘機、騎兵、すべての搭乗部に細工ができたと言えるでしょう。
そして、ミサイルを発射するための司令室。
完璧です!
と、ここまでは良いのですが、何故かミサイルに魅了される技術者達…はて?
「我々は、魔力のほとんどを身体強化に使っています」
「その体に耐えうる武器も開発しています」
「戦車は、下級モンスター討伐用」
「戦闘機は、下級飛行型モンスター討伐用」
「火器はなく、捕獲用と討伐用の砲弾があるぐらいです」
「後は、肉弾戦、体に魔法を付与して戦うスタイルです」
(で?)
すみませんが、熱く語られても困ります。
これだから、科学者や技術者は嫌なんです。
ドクターも同じカテゴリーに入りますが、語り出したら止まらない人種…苦手です。
ぶっちゃけ…。
興味のない事を、延々と語られても…ねぇ?
…って、論点はそこじゃありませんでした。
熱く語っていた部分は、既存の戦闘体制の話。
そして、そんな獣人族領の技術者が目を輝かせているのは、ドクターの設計したミサイルそのもの。
それは、あらゆる魔法属性を付与した、恐ろしく物騒なもの。
各種属性の魔鉱石を核とし、それぞれに、その属性の特性を最大限に兵器として運用しているところ。
火→放射能を伴わない、核爆弾。
普通の爆発。
水→花火のように打ち上げる事で、空から大量の雨、雪、氷を降らせる。
豪雨や吹雪の爆発。
風→着弾地点を起点に、台風並みの風を生み出す。
大気爆発。
雷→爆発と同時に、100万Vの電流がほど走る。
電撃爆発。
土→着弾地点を起点に、すべてを土に返す。
土砂の粉塵爆発。
「早く搭載したい!」
「早く実験したい!」
「その効果を見てみたい!」
あー!うるさい!
みんな、ドクターに感化されすぎ!!
☆☆☆
そして、すべての兵器が完成した頃、浮島5島は地獄へ搬送され、兵器も程なくして、地獄へ搬送されました。
(組み立ては地獄でやるんですね?)ニタリ
「しかし!…実験は、地獄では出来ないのですよ!ドクター!…オーッホッホ!!」
私は、ドクターの悔しがる顔を思い浮かべながら、高笑いをするのでありました。
私が、各兵器に施した細工とは…。
『アンチドクター•音声認証コード』
ドクターには、私ごときでは、体力にしろ魔力にしろ、何の対抗もできませんが、嫌がらせぐらいはできます。
その嫌がらせはこちら。
ドクターが、兵器を作動させようとしたら
『イノリさん、ごめんなさいと言いながら、土下座しないと作動しません』
という音声が流れるようにしています。
つまり、搭乗席で、いちいち私に対して土下座をしなければ、動かす事はできないのです。
オーッホッホ!!
それから、しばらくして、ドクターは地獄から飛んで帰ってきて、私に言いました。
「ちょっと調子に乗りました!あの機能を止めて下さい!お願いします!」
案の定、ドクターは、地獄で実験をしようとして、やっとそこにたどり着いたようです。
相当、ストレスだったのでしょう。
半べそをかきながら、私の前で土下座して懇願するドクターの姿。
やりました!
今回のミッション、大成功です!
あー!スッキリしました☆
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