第41話 ドクターの辞書に自重という文字はない 1

ドクター曰く、最終段階と言っても、残る仕事は大した内容ではないそうです。


①魔王に謝らせる

②魔王の解体

③獣人族領を制圧する

④いろいろとやる


これは、かなり大した内容だと思うのですが、その中で④が1番気になります。


ドクターの基準は、どうなっているのでしょう?

そして、とは、何を指しているのでしょう?


まぁ、そのへんは、今のところスルーしておきましょう。

知ってしまうと、精神的にダメージを喰らいそうなので…。


という事で、ラストミッションスタートです。


ドクターは、自ら魔王城に赴き、干からびた魔王を担いで、大樹のホールまで来ました。


ドサッ…。

「魔王だ!」


『『えぇーー!!』』

女王の従者は驚きを隠せません。


「ほれ、精霊王に謝れ!」

『………』

「死んだふりをしても無駄だぞ?」

『………』

うつ伏せに放り出された魔王は、無言のまま微動だにしません。


グシャ!


そんな魔王の頭を容赦なく踏み付けるドクター。

どちらが魔王か分かりません。


「精霊王に謝れ!」

『ずびばぜんでじだ…』

魔王さん?鼻水出てますよ?


「次は解呪だ!早くしろ!」

『………』

「解呪してから死ぬか、死んで禁呪の無効化をするか、どちらか選べ!」

『………』


いやいや、これ…生かす選択ありませんよね?


『あははは!!良い!久しぶりにスッキリしたわ!!』


あれ?精霊女王様?

解呪はしてもらわなくていいんですか?


サクサクサクサク…。

ズボッ…ズボッ…。


「ふむ…心臓は2つ…ノーマルだな」

「ちょ!!」

『『『何してんですかぁーーー!!』』』


「え?魔王の心臓取り出してんだけど?まだ死んでない!大丈夫大丈夫!ハッハッハ!」

『『『女王様の呪いは??』』』


『貴様!我の背中で何をしている?』

「あれ?聞こえなかったか?お前の心臓を取り出した」

『は?』


『『『『い、生きてるぅーーー!!』』』』

「そりゃあ、を抜いてないからな…で…これがこうなって…あ、これ、魔石でも魔鉱石でもないや…鑑定…ふむ…魔王核」


グチュグチュ…。


ドクターは、魔王の背中を切り裂き、内臓を引っ掻きまわしながら、ブツブツ呟いています。


しかし、出血はありません。

そう!チーコがすべて吸い取ったからです。


『やめろ!我の核は…』

「魔王核…お前は魔族の進化系ではない…強大な力を得て、魔王になったわけでもない」

「ドクター?どういう事ですか?」


これは、私だけの疑問ではないはず。

今、この場にいる全員が疑問に思っている内容なはずです。


ドクターの説明によると、


心臓は2つの魔王は、一般的な魔王。

しかし、心臓2つの魔王は、例外なく魔石が核となっている。


その上級石である魔鉱石が核となっている魔王は、心臓を4つまで保持できる。


では、『魔王核』とは何か…その能力は何か…。


魔王核とは、魔王となるべくして生まれ、生まれながらに強大な魔力を保有するため、魔族とは別次元の存在として君臨する『魔王族』の核。

心臓は、10個まで生成できる。


「いわば、こいつは魔王のサラブレッドだ…そして、禁呪も、この核を元にかけられている…並の魔法では解呪できない」

「つまり?」

「精霊王が言ったように、息の根を止めなければ助からない」

『フッフッフ…見事だ…しかし、我の核は易々と取り除けんぞ?時間を待たずして、心臓も再生する…血液も魔力も、すべては我の体に宿る核がもたらしたもの!じきに精霊族など滅ぼしてくれるわ!!』

『『『……………』』』

だから、必要以上に心臓を増やさなかったと?

だから、いまだに余裕な態度だと?


プチプチプチプチ…。


「心臓が再生してきてる…」

『こら!再生途中の心臓を潰すでない!!』

いやいや、潰すでしょ?


「お前、もしかして、魔王核は抜き取れないから余裕…とか思ってる??」


ドクターが、物凄くわっるい顔で、魔王の顔を覗きこんでいます。


もう一度、言わせて下さい!


どっちが魔王か分かんない!!


☆☆☆


シャキン!


「さて、これ、なーんだ?」

ドクターが懐から取り出したのは、1本のメス。


禍々しいオーラを発しているのが分かります。


『………』

「これな、おそらく、世界で封印された最凶種の死神…のカマを加工したメスな…」

『それがどうした!』

「持ってるだけで、人の魂を、遠隔切断できるアーティファイトと思ってもらっていい」


あー!魔族領の惨劇は、それの効果だったんですね?

ヨーコとミーコが活躍する前にやったドクターの指動作…。


『だから何だ?』

「鈍いなぁ…これで直接切るものは、いかなる生命体でも、魂を刈り取れるんだよ…で、お前の魂は、その魔王核にある…だろ?じゃなきゃ、心臓を抉られた時点で死んでいる」

『………』


全員が、固唾を飲んでドクターの動向に目を向けています。

魔王は確かに、誰にも抜き取れないと言いました。


「みんなに分かるよう、今から面白い実験をしよう」


チョンチョン…。


『グワッ!』


チョンチョン…。


『グフッ…や、やめろ!』

「は?やめない」


ガリガリ…。


『グォー!!』

魔王は動けていませんが、その顔からは、悶絶するような悲壮感が漂ってきます。


『いったい、何をなさっているので?』

たまらず、精霊女王の従者が質問してきます。


「え?魔王をイジメてる」

『そ、そうですか…失礼しました』

まぁ、そういう反応になりますよね?


「名付けて『死神メス』これで魔王の魂たる魔王核を傷つけると、魔王は苦しむ…精霊王を苦しめたんだ…サクッと殺しても、お前らが味わった痛みは癒えないだろ?だから、実演を兼ねて見せてみたんだ…残念ながら、俺以外は触れないけどな…」


いつになく饒舌なドクター。

今、とても楽しいのだと思います。


サクッ…サクッ…。

ズルズル…。


『グォー!やめろぉーー!!』


「でだ!今、取り出した、が、魔王が精霊王にかけた禁呪魔法の元な…」

『『『『は??』』』』


ドクターが、魔王核から取り出したのは、1本の細い糸状の


「発生源って言った方が良かったか?」

『『『『『いやいやいやいや!』』』』』


プチン!

シュゥゥ…。


「はい、解呪完了っと…」

『『『『『…………』』』』』

「従者さん、精霊王を見てきて…」

『は、はい!ただ今!!』


『その必要はない!ドクター殿、見事じゃ!助かったのじゃ…感謝する』

どうやら、本当に解呪できたようです。


「死神メス…いいねぇ…」ニコニコ

『…………』

魔王は放心状態…いえ、私達もですが…。


「つまりだ…魔王の本体は魔王核であり、人体を形成しているのは、魔王核から生み出された肉体、魔力、魔法、呪法、力なんだよ…」

「なるほど…」

「だから、魔王は生きてるし、禁呪も有効だったし、傷をつけたら苦しむんだ…つまり?」

『『『『『魔王核を破壊したら、魔王は死ぬ??』』』』』

「大正解!!」


『バカめ!破壊したところで、一欠片でも残っていたら、我は再生できるんだ!殺す事は叶わぬ!!』

「だろうな…だから…閻魔!今から、そっちにを送るから、バァバに仕事をしてもらってくれ」


『へい!承知いたしました!』


ホールに響く、野太いダミ声、間違いなく、閻魔さんの声です。


「まずは…」


ベキッベキッ!

ツノを折りました。


(メス使わないんだ…)


「あとは、心臓だな…」


ポイポイポイポイ…。


次々と地面に飲み込まれていく


「最後に…」


サクサクサクサク…。


『ギャァァーーー!!』


ポイッ!


魔王核を投げ入れました。


魔王は、グッタリはしているものの、まだ生きています。


結構しぶとい…。

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