第38話 ドクターのとんでも交渉術 1
さて、仲間となった妖怪…もとい、亜人種族(仮)の、現状把握はすみました。
次の段階は、精霊族領の復興、精霊族の救出がメインとなります。
まぁ、そのメインミッションを足止めしたのはわたしなのですが…。
まぁ、その分の穴埋めは、しっかりさせていただくつもりではありますが…。
「で?イノリは何をするんだ?」
「火炎ブレスを、霧にして散布します」
「へ?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?私のブレスは、口から発射するだけではないんですよ?身体中を使って、形状も自由自在です…えっへん!」
「って事は…」
①火炎を熱気にして、体外に放出
②手のひら、足、指、から、火炎魔法として使用可能。
「って事です」
「もしかして…」
「はい、冷凍ブレスも、石化ブレスも、毒ブレスも同じように扱えます…結構使い勝手はいいですよ?…ただ、邪龍が持っていた能力なので、種類は少ないですが…」
「いやいや、まて!それ、ブレスじゃなくね?」
まぁ、言わんとしている事はわかります。
しかし、体に取り込んだための副作用なものです。
文句があるなら、こういう身体に作った自分を見つめ直して下さい!
未だに、初期設定の能力、私が形成された経緯を知らされてないんですから!
まぁ、魔王の心臓2つを取り込んだ以外に、魔石の上位核、魔鉱石を取り込んだ事は内緒にしていますが、これは、すでにバレていると考えていいでしょう。
ドクターが指摘をしてくるまで、言うつもりはありませんが…。
あと、身体機能の向上、魔法の習得ができた事も、しばらくは黙っておきましょう。
つか、精霊族を助けるにあたり、私には一抹の不安があります。
それは、私は、魔王の心臓と核を取り込み、邪龍のブレス核まで取り込んでいます。
ドクターに至っては、『神の宝玉』の、『神格以外』の、いわば『神族の魔法』を取り込み、邪龍を食べ、『死神属性』とかを身につけています。
言うなれば、どちらかと言うと、ずいぶんと『魔族寄り』…いや、『魔王寄り』になっているのではないかと思うのです。
ドクター自身の無自覚なとんでも行動も、すでにそちら側寄りだと思います。
そんな2人が、いきなり氷漬けにされた森や住民を助けたとして、果たして、ドクターの計画通り、事は運ぶのでしょうか…。
不安でいっぱいです。
☆☆☆
龍族の情報によると、精霊族は自分達が最強種だと自負しており、人間に恩恵を与えるのは、下等生物に、施しをしている感覚なのだそうです。
最強種だと自負しているのは、精霊族に限らず、龍族も獣人族も同じだと言えるでしょう。
ただ、精霊族は、その役割も種類も能力も、多種多様にとんでおり、多種族を見下す傾向にあるのは間違いないようです。
人類に対して、高圧的なのが精霊族。
『この森から出ていけぇー』
とかやるのも、大抵は精霊や妖精です。
しかし、森の魔物を討伐するのは人類。
ウィンウィンのはずなんですが…。
「自意識過剰なんだよ、やつらは…魔法特化だしな…まぁ、人類に、植物や土、気候などの恩恵を与えているから、調子に乗ってるってのはあるな」
ドクター基準で話を聞くと、精霊のイメージがだだ下がりになるのですが、いつもの事なので、気にしないでおきましょう。
対して、獣人族は、肉体主義。
弱い人類は、森に足を踏み入れる事すらできません。
『森の恵みが欲しかったら、力を示せ!』
というのが、ミーコから聞いた趣旨です。
脳筋かよ!ってなりますよね?
一方、龍族は古代種であり、名実共に『最強種』である事は間違いないのですが、人類とは根本的な基準の尺度が違うため、普段は人類に対して不干渉。
『まぁ、ヤンチャをする人類に、天災をもたらす程度じゃよ…ホッホッホ』
とか、金龍が言ってました。
龍族は、怒らせたらダメな種族ってのが良くわかります。
「さて、始めるか…」
「じゃあ、さっき言った様に、森の氷を溶かしますか?」
「いや、俺の指定した奴らだけ、溶かしてくれ」
「………」
まさかとは思いますが…。
「わかりました…」
森を飛び回り、ドクターが指示をしていく精霊族を溶かして回る私。
心肺蘇生をするドクター。
生命維持装置の、コールドスリーブではないため、1人ひとりの心肺蘇生が必要になってきます。
そうして、蘇生させた精霊族、総勢20人。
「まぁ、族長らしい奴と、主要メンバーっぽい奴らだけでいいだろう」
『『『『………』』』』
そんな事を言うドクターを無言で見つめる精霊族達。
『お主らの目的は何じゃ!いきなり氷漬けにしおって!!』
族長、かなりお怒りです。
「まず、俺の仲間をバカにしたから、俺が指示を出して氷漬けにさせた、目的は、精霊族領の、この樹海をもらい受けたい、今後、精霊族は俺の従者となる…以上だ」
ドクター?
直球すぎやしません?
いや、レイコの責任にしなかった事は感心してますけども…。
『そんな言い分、聞けるわけなかろう!!』
「な?調子に乗ってるだろ?」
いや、ちょっと待って!
それ、ごく普通の反応だから!!
「では、選択肢をやる」
①氷は溶かすけど、こちらの要望が受け入れられない場合、この森を石化する。
②樹海ごと更地にする。
それ、私の能力ありきですよね?
「さぁ、これが最大限の譲歩だ!選べ!」
まさかとは思いますが、これがドクターの交渉??
地獄でも、同じようにしたとか??
『………』
「あぁ、俺の従者になったら、怪我、病気、進化、文化水準向上という特典がつく、俺は医者なんだ…助ける時は助ける」
『従わなかったら?』
「もちろん、見捨てる」
『………』
族長、しばしの脳内会議。
『どんな病気でも治せるのか?』
「もちろん!俺と、ここにいる優秀なナースが居ればな…ついでに、死者も蘇生させられる」
まぁ?確かに?
『なんと…ふむ。実証が欲しいのう…言葉だけでは信用ならん』
「何言ってんだよ!お前らが生き返っている事を忘れてやしないか?」
『氷漬け、石化解除魔法は、我らでもできる…術者は限られるが…』
「で?」
流石は精霊族…やはり魔法特化というのは嘘ではないようです。
『族長!まずは、この森をどうにかしてもらわないと…』
『いや、それはわしにもできる…』
あら?条件①は、元々交渉材料にならなかったみたいですね…。
『更地にされても、復元は可能じゃ…民は、森の活力で蘇生できる』
なんと!条件②も、まったく意味なし。
でも、病気に関して、食いついているのはわかります。
何か、大きな問題でも抱えているのでしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます