第37話 ドクターの行動理念を舐めていました。
ただ今、私達全員、ドクターの前で正座をさせられています。
「まぁ、この大樹海が、3種族によって分断されていたのを知らなかった俺も悪い…だが!!だからと言って、何の交渉も無しに、手の内を見せるのは、どうかと思うんだが?」
『だって…ご主人様を悪く言うから…』
『同じくです』
と、ヨーコとミーコが言い訳をします。
「イノリもだ!獣人族領すべてを石化してどうする!やるなら、その獣王と獅子王だけにしとけ!!」
「は、はい…」
(ん?手の内??)
「そして、レイコ!お前は、
『は、はい…私を精霊族の下っ端だと見下したので、つい…』
(ん?こおりめって何?)
つか、論点はそこ??
ドクターは、攻撃した事に対して、注意をしているわけではありません。
手の内を見せた事や、加減をしなかった事に対して怒って…はないね。
そう、私達に注意をしているのです。
「以上だ!後の事は俺がやる!お前らは、龍族領の魔物を狩りながら、力加減、この世界の常識を学べ!!血抜きはチーコに任せる!」
『はーい!』
チーコ、お小言無しで任務を与えられる。
中々、狡猾です。
「イノリは、俺と一緒に来てもらう!獣人族領と精霊族領についても知りたいしな…」
「はい!」
「龍族は、俺たちが帰ってくるまでに、全員、人間体になれるようにしておく事!人間体に慣れない種は、人間体になれるレベルまで進化しておく事!いいな!」
『えっと…リザードマンには少しハードルが高いのではないかと…』
黒龍が、代表でドクターに進言します。
「いいな?」
『は、はい!』
「ヨーコもミーコも手伝ってやれ」
『『はい!』』
進言却下…もしかして、ドクターも、この世界の常識を学んだ方がいいんじゃ?とおもいますよ?
ヒュン!
とりあえず、空中から、精霊族領を眺めます。
「さて、まずは精霊族領だ…あのままでは、樹海ごと使い物にならなくなる!それは困る!」
「精霊族の事を心配して…」
「あははは!んなわけあるかよ!俺の支配下に精霊族は必要だし、森が死んだら支配下もクソもねーからな」
「………」
あー!そうでした!
ドクターは、こういう人でした!
そもそも、異世界の常識なんて、ドクターには何の興味もない事なのです。
冒険者ギルドには力を見せつけて、いきなりS級ランクをもぎ取り、龍族の頂点に立つ黒龍を解体、蘇生して力を示し、龍族を従えてしまいました。
更に、中央の悪人を地獄送りにして王国を浄化させ、三国から、山脈の権利すらもぎ取っています。
ギルドの階級無視、最強種の尊厳無視、国土問題無視…。
これも、地獄基準なのでしょうか?
つか、選定神からは、内緒で『神の宝玉』すら、持ち出し…いや、奪っています。
こんなドクターが、精霊族領で何をするのか…ストッパーとしての役割は果たせるのでしょうか…。
「本当に、樹海が氷漬けにされてますね?」
「イノリ…お前も獣人族領を丸ごと石化したけどな…ハッハッハ!」
そ、そうでした!
私、レイコさんの事は言えなかったのですぅーー!!
☆☆☆
スタッ!
私とドクターは、真っ白な氷樹の森に降り立ち、周りを探索します。
本当に氷ついている…。
それに、先程のドクターの言葉。
レイコさんは、『雪女』だったのでは??
「雪女はレイコの妹だ…名をユキコと言う」
「………」
今、ひとつの疑問が解消されました。
異世界風に言うなら、ユキコは雪の精霊、レイコは氷の精霊。
本来は、うちに秘めた妖力によって、能力を解放しているのでしょうけど…。
「妖力は、この世界の魔力と融合し、『魔妖力』もしくは『妖魔力』とでも言うべき能力がついた…能力は本来の1.5倍増しだ」
いやいや、そこは問題じゃないです!
「これだけの力を出したレイコ的には、どれくらいの出力なんですか?」
「んー。まぁ、ロウソクを吹き消す程度の出力だろうな…ブレスみたいに、一気に放出したら、マグマでも凍てつく」
やっぱり…。
「で?それは、ドクターの改造した結果じゃないですよね?」
「ギクッ!な、何を言ってるのかな?君は…」
「レイコは、ユキコさんよりも、冷気が強力、それに魔力が加わり、威力がアップした…という事は、ドクターは、ソレ自体には干渉していない…ですよね?」
「い、イノリ?今は、その話、やめないか?」
ドクターが焦ってます。
これは、いい機会です!
この際、手の内と言っていた、改造内容を吐いてもらいましょうかね!
「私、火炎系のブレス吐けますし、白龍の加護で、ヒールブレスを出せるんですよ?それに、魔王の心臓やら、他にもいろいろ取り込んで、蘇生魔法も使えるはずです…言わないと、私が精霊族との交渉の場に立つ事も可能です…いかがですか?」ニヤリ
地獄にいる、妖怪、妖、九十九神に、どんな改造を施したのかは分かりません。
しかし、せめて一緒に来たメンバーの能力ぐらいは知っておきたいものです。
☆☆☆
という事で、以下の内容が、ドクターから聞き出した改造内容
ヨーコ(九尾の狐)
愛玩動物形態から人間体、獣人体、そして巨大化。
攻撃術は、狐火砲(ファイヤーブレス)に幻術(幻影魔法)。
鼻は良く効く。
これは、本来ヨーコが持っていた能力。
改造後
その2つの能力を、九尾に固定し
①ファイヤーブレス
②幻影砲
追加で
③『追尾型真空砲』
威力により、当たると、相手が内部爆発をおこす真空の球を発射。
④
尻尾に電気を集め、任意の場所に、ピンポイントから広範囲に至るまで電気攻撃ができる。
⑤妖魔力予備貯蔵庫
魔力、妖力枯渇の際に使用される、唯一、幻影で消せない尻尾。
⑥フェロモンシャワー
広範囲にフェロモンを放出し、周りにいる犬科の動物を使役できる。
⑦犬⑧狼に
これは、擬態とも言える能力。
⑨飛行魔法
本来の、空中歩行機能を飛行に改造。
ミーコ(猫娘)
愛玩動物形態から、人間体、獣人体に
耳は良く効く。
素早さ、索敵能力に特化し、口も上手いため、情報収集が得意。
改造後
ネコ科の動物に変身できる。
ライオン形態。
立て髪を炎に変えて、火炎ブレスが吐ける。
トラ形態。
白虎になり、空を自由に飛び回れる。
チーター形態。
速度重視の形態。
スピードはマッハを超える。
レイコ(
雪女の進化型。
吹雪は、雪ではなく、
手加減をしたら、雪も可能。
気温を絶対0度まで下げられる。
改造後
高熱無効化体質となる。
どんな火炎魔法も効かない。
チーコ(吸血鬼)
首から血液を摂取し、ヴァンパイア因子を注入する事で眷族を増やす。
コウモリに変身できる。
不老不死。
眼力で人間を操れる。
改造後
眼力で悪魔、魔物を使役できる。
任意の相手に対し、遠隔で吸血行為ができる。
日光、十字架、杭、銀の弾丸とか、ありふれた弱点は無し。
以上が、4人に施した改造。
理由
面白そうだったから、やってみたら成功した。
「弱点はないに越した事はないだろ?」
は?
いやいや…わかってはいましたが…。
ドクターって、だいたい常識とか無視しますよね?
だから、パワーバランスとか言われるんですよ!!
「で、これからどうするんですか?」
「精霊王を屈服させて精霊族領をもらう、獣王を屈服させて獣人族領をもらう、山脈の土壌を使って浮島を作る…とかかな?面白そうだろ?」
「………」
「日本みたいに、めんどくさい法律は無いんだし、既存のルールは力でねじ伏せればいい…ここなら、それができる!な?楽しそうだろ?」
な?じゃありません!!
確かに、こんな『面白そうだから』なんて理由だけで、想像を超える事をやらかす人が地球にいたら、法律も文明もあってないようなものです。
つか、それで地獄の住人すら屈服させるんですから、地球には居てはならない人なのかもしれません。
それもこれも、地獄で過ごした日々の長さ、常識外れの発想と、それを可能にする技術があればこそ…。
どうか、この世界が平和でありますように…と願わずにはいられません。
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